【咎人】

杏忍AI

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咎人の始まり【5】

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佐々木は、若い男――神崎の言葉を信じ、翌日の記者会見に向けて、ホテルの簡素な一室に籠もった。何度も何度も、告白文を書き直した。過去の罪を洗いざらい告白し、社会への謝罪の言葉を綴りながら、何度も嘔吐した。彼の心は、罪悪感と恐怖でぐちゃぐちゃに掻き混ぜられていた。
 
一方、神崎は、黒崎と電話で連絡を取り、記者会見の準備を進めていた。
 
「佐々木は、本当に告白するだろうか?」
 
黒崎の声は、いつものように無機質だったが、僅かに疑念が滲んでいた。
 
「彼は、追い詰められれば何をするか分からない男だ。土壇場で、全てを覆す可能性も考慮しておくべきだ」
 
神崎は、新宿の夜景を見下ろしながら、冷静に答えた。
 
「もちろん、その可能性も想定済みだ。もし彼が裏切れば、その場で、彼の最後の希望を打ち砕く」
 
神崎の目は、冷たい光を帯びていた。
 
 
 
翌日、佐々木は憔悴しきった顔で、記者会見場に現れた。会場には、多くの報道陣が詰めかけ、異様な熱気に包まれていた。彼は、まるで処刑台に送られる罪人のように、重い足取りで壇上に上がった。
 
深呼吸を一つ。そして、震える声で、告白文を読み始めた。
 
「本日は、皆様にお集まりいただき、誠にありがとうございます。私、佐々木 勉は、これまで電伝ジャパン営業部長として、数々の不正行為を行ってきました……」
 
佐々木は、過去のパワハラ、横領、贈収賄……。自身の犯した罪を、一つ一つ、絞り出すように告白していった。会場は、静まり返り、報道陣は、一言一句聞き漏らすまいと、佐々木の言葉に耳を傾けた。
 
佐々木の告白は、予想以上に詳細で、具体的な証拠も提示された。会場には、驚きと衝撃が広がった。しかし、会見が進むにつれて、佐々木の表情が、徐々に歪んでいった。
 
そして、突然、彼は告白文を読むのをやめ、顔を上げた。その目は、狂気に染まっていた。
 
「……だが、私は騙されたんだ!」
 
佐々木は、突然、叫び始めた。その声は、まるで獣の咆哮のように、会場に響き渡った。
 
「全ては、あの男の罠だ! 私は、嵌められたんだ!」
 
会場は、騒然となった。報道陣は、何が起こったのか理解できず、戸惑っていた。
 
佐々木は、興奮した様子で、神崎のことを話し始めた。
 
「あの男は、私に近づき、過去の罪を告白するように脅迫した。私は、彼の言う通りにしただけだ! 私は、何も悪くない! 全て、あの男のせいだ!」
 
佐々木の言葉に、会場はさらに騒然となった。報道陣は、一斉に佐々木に質問を浴びせ始めた。
 
その時、会場の大型スクリーンに、一枚の写真が映し出された。それは、佐々木が過去に不正行為を行っている証拠写真だった。しかし、それは、ほんの始まりに過ぎなかった。
 
次々と、佐々木の不正行為に関する写真や動画が映し出され、彼の悪行が、白日の下に晒されていった。
 
佐々木は、絶望した表情で、スクリーンを見つめた。彼の顔から、全ての血の気が失せていた。
 
「……そんな、まさか……」
 
佐々木は、膝から崩れ落ち、泣き叫んだ。
 
会場は、騒然とした空気に包まれた。報道陣は、一斉に佐々木にカメラを向け、シャッター音があたりに響き渡った。佐々木は、まるで獣のように、カメラに向かって吠え続けた。
 
その様子を、会場の外で見ていた神崎は、静かに微笑んだ。その瞳には、一切の感情が宿っていなかった。
 
「計画通りだ」
 
神崎は、黒崎に電話をかけた。
 
「全て、終わった。次は、もっと面白いゲームを始めよう」
 
神崎は、夜の街に消えていった。正義の詐欺師「咎人」としての、彼の戦いは、まだ始まったばかりだった。彼の心には、新たな獲物を求める、冷たい炎が燃え盛っていた。
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