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森での訓練継続中
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「さて、森に入ってから3日目ですが。いかがですか?」
ダンは簡易かまどで料理を作っていた。本日の朝食はレッドモウの肉を合わせた肉スープ。さすがに連日の毒草入りは作っていない。
若干霧が出たような朝露の多い森の中、ダンは鍋の中のスープの具合を見ながら周りを見た。
そこでは夜間に近づいてきていたトレント達と戦うメンバーが居た。
『オオオオオオオオオ!』
「くっそ! 歩く木と比べてカッタイ! 誰か手は空いてないか!?」
「こっちも枝を防ぐだけで手一杯です! キョーコさんの魔法でどうにかなりませんか?」
「森と一緒に火事に巻き込まれる覚悟があるなら、どうにか!」
「あ、そういった火魔法は禁止しますね~」
「「「鬼ぃ!」」」
ダンの無常なる禁止の言葉に全員が抗議の声を上げる。
「それよりも集中して早く倒さないと――朝食が無くなりますよ?」
ダンの言葉に奮起したのか、ちょっと過激な言葉も飛び出しながらトレントへ攻勢を強め始めたメンバーを見つつ、ダンは深呼吸して森の空気を吸い込みながら周りの雰囲気とは裏腹に、とてもリラックスした様子で鍋をかき混ぜていた。
「朝から遭遇戦、お疲れさまでした」
労いの言葉と共に一人一人にスープをよそった椀を渡していく。
全員ガックリと肩を落として疲れた様子であった。
「そう思うならダンさんも手伝ってくれたら良かったのに」
比較的疲労の少ないリルがそう言った。
「手伝い? 一応、こっち側に来た分は倒しておきましたよ?」
そう言うダンに促されてその指さす方を見ると、トレントの他に大型芋虫等の魔物がことごとく一撃で切り倒されて積んであった。
もはや笑うしかない。
「あ、はは。……ところで、いつからトレントが接近してたんでしょう?」
「ん~。いつからだと思います?」
リルが気になった点をダンに聞くと、逆に聞き返された。
自分の不寝番の時では感じなかったから――
「朝方ですか?」
そう言ったリルの言葉に何人かが体を緊張させた。全員リルとロウキの番よりも後の者達だった。
それを横目で見つつ、ダンが正解を言ってあげる。
「正解は――野営した直後からです。気づきましたか?」
「え? だって今回の一番最初はダンさん――もしかして?」
昨日の最初の番だったダンとその肩のタマモを見る他メンバー。
「一応、『警戒はしておいてね?』と言って引き継ぎましたよ? その時点ではトレントの攻撃範囲内では無かったんですけど……。こういった事も繰り返し経験しないと成長しませんからね~」
ダンがのほほんと言うが、他のメンバーはため息をついて諦めた表情でスープを啜った。ダンの『森での歩き方』訓練はまだまだ続くようだ。
さすがに連日毒入りスープは出さないと言ってもらっていたので、昨日よりもメンバーの足取りは軽かったが、それでも森の視界の悪さという点で街道を歩くよりも速度は出ていなかった。魔物を警戒しながら進むメンバーを見つつ、ダンはポーラとポーラに引かれるサニーと並んで歩いていた。
「しかしサニーは大人しいですね」
「うん、サニーは頭のいい子。最近は弱い魔物なら倒せるくらいに強くなってきた」
サニーの胴体を撫でながらダンが言うと、サニーの首筋に手を添わせてポーラが言った。
確かに最近のサニーは、ゴブリンはまだ無理だが兎型とか小さな虫型の魔物なら、その足で蹴散らせるほどに強くなってきていた。狼などはその身体の大きさを利用した威嚇で近寄らせないくらいはしている。
ふとサニーが何かに気づいたのかある一点を注視し始めた。
「何か居るのサニー?」
ポーラの問いかけに、ブルルと鳴いて頷くサニー。
「みんな、警戒!」
ポーラが隊列全員に注意を促す。すぐさま全員が周囲に気を配り始めた。
「――! 上から大蜘蛛だ!」
マロンの声に全員が視線を上へと向ける。
木々の枝から、大型の蜘蛛が飛び降りてくる。
『うんうん。程よい緊張感ですね~』
ちなみにダンはサニーが気づく前から気づいていたし、それが頭上に居ることも気づいていた。それでも最初から居ることを教えていては訓練にならないと黙っていたのである。
笑みを浮かべた口とわずかに頷いている頭の動きを見たイリアが気づいて、『趣味が悪っ!』と内心でダンに悪態をついていたが。
頭上から飛び降りてくる蜘蛛に対して、長物の武器を持っているものは空中に居る蜘蛛を突き、リーチの短い武器を持った者は蜘蛛を躱して素早く構えた。
ダンは剣を肩に担ぎながらその光景を観察する。ちなみに担いだ剣の剣先には大蜘蛛が胴体を貫かれて刺さっていた。
『わっぷ! ダン! 蜘蛛の体液が掛かったのだが!?』
「あ~、後で拭きますから今はご勘弁願います。ふむふむ、このくらいの蜘蛛なら対処は問題なさそうですね」
各々危なげなく対処していく。長物持ちは蜘蛛を地面に押さえつけて安全に倒していたし、近接武器持ちは蜘蛛の動きをしっかりと見ながら、それぞれ蜘蛛の頭を潰していた。
「うわわ!? 尻尾に糸がくっついたのだ! ぬうう、尻尾がベタベタするのだぁ」
若干涙目の狼が居たが、全員問題は無いようだ。
隣に居たポーラも槍から蜘蛛を引き抜くとサニーを撫で始めた。
「サニーえらい!」
撫でられたサニーも頭をポーラへと近づけて擦り付けた。なるほどサニーもポーラを褒めているようだ。
ダンは蜘蛛が付いたままの剣を近くの木に突き立てた。
『ギィアアアアアアアア!』
「やっぱりトレントでしたか」
ダンに剣で刺されたトレントが絶叫を上げると、蜘蛛を倒してホッとしていたメンバー数人の傍の木が擬態を止めて枝を伸ばし始めた。
「く、トレントか!」
「わわ、蜘蛛ばっかり気にしてた」
「リン! 一旦引くんだ」
とはいえ朝ほどの数が居ないようだから、そう苦労することもあるまい。
ダンはそう判断して、剣を使いトレントを縦に割りながらメンバーの戦いを見守った。
「うう、トレントにも気を配ってなきゃいけないし、かといって他の魔物を無視していい訳じゃないし……。あ~、気にすることが多すぎる~」
ファーニがそんなことを口にしている。とはいえ他のメンバーの顔も見れば、大なり小なり似たようなことを思っているようだ。
「ところで皆さん。闘気を使っての警戒はしないんですか?」
「ダンさんレベルの周辺警戒は出来ません!」
「まだ闘気が上手く広げられない」
「歩きながらは出来ません!」
『した方が楽なのに』とでも言いたいダンの言葉に各々が反論する。
ちなみに本来D級冒険者に望む技術ではないことに全員気づいていない。
「これも訓練だと思って、徐々に慣らしていきましょう!」
「「「は~い……」」」
不承不承といった様子でダンへと返事するメンバー。
繰り返すが中級下位の冒険者がする技術ではない。
本来索敵はスカウトなどのスタイルを主とする冒険者の領分であり、全員が索敵出来るところを目指すのは色々と間違えている。
しかしダンにそういった常識はない!
常にソロで色々と仕事をこなしていたダンの感覚では、大なり小なりではあるものの全員出来た方がよいと考えていた。
こうしてダンの訓練に、誰も異論を唱えずにいる状況が後にとんでもない冒険者を生み出すことになろうとは、この場に居る誰もが気づいていなかった。
「最終目標は全力疾走しながらでも出来るくらいですね」
「「「目標が遠すぎる!」」」
ダンは簡易かまどで料理を作っていた。本日の朝食はレッドモウの肉を合わせた肉スープ。さすがに連日の毒草入りは作っていない。
若干霧が出たような朝露の多い森の中、ダンは鍋の中のスープの具合を見ながら周りを見た。
そこでは夜間に近づいてきていたトレント達と戦うメンバーが居た。
『オオオオオオオオオ!』
「くっそ! 歩く木と比べてカッタイ! 誰か手は空いてないか!?」
「こっちも枝を防ぐだけで手一杯です! キョーコさんの魔法でどうにかなりませんか?」
「森と一緒に火事に巻き込まれる覚悟があるなら、どうにか!」
「あ、そういった火魔法は禁止しますね~」
「「「鬼ぃ!」」」
ダンの無常なる禁止の言葉に全員が抗議の声を上げる。
「それよりも集中して早く倒さないと――朝食が無くなりますよ?」
ダンの言葉に奮起したのか、ちょっと過激な言葉も飛び出しながらトレントへ攻勢を強め始めたメンバーを見つつ、ダンは深呼吸して森の空気を吸い込みながら周りの雰囲気とは裏腹に、とてもリラックスした様子で鍋をかき混ぜていた。
「朝から遭遇戦、お疲れさまでした」
労いの言葉と共に一人一人にスープをよそった椀を渡していく。
全員ガックリと肩を落として疲れた様子であった。
「そう思うならダンさんも手伝ってくれたら良かったのに」
比較的疲労の少ないリルがそう言った。
「手伝い? 一応、こっち側に来た分は倒しておきましたよ?」
そう言うダンに促されてその指さす方を見ると、トレントの他に大型芋虫等の魔物がことごとく一撃で切り倒されて積んであった。
もはや笑うしかない。
「あ、はは。……ところで、いつからトレントが接近してたんでしょう?」
「ん~。いつからだと思います?」
リルが気になった点をダンに聞くと、逆に聞き返された。
自分の不寝番の時では感じなかったから――
「朝方ですか?」
そう言ったリルの言葉に何人かが体を緊張させた。全員リルとロウキの番よりも後の者達だった。
それを横目で見つつ、ダンが正解を言ってあげる。
「正解は――野営した直後からです。気づきましたか?」
「え? だって今回の一番最初はダンさん――もしかして?」
昨日の最初の番だったダンとその肩のタマモを見る他メンバー。
「一応、『警戒はしておいてね?』と言って引き継ぎましたよ? その時点ではトレントの攻撃範囲内では無かったんですけど……。こういった事も繰り返し経験しないと成長しませんからね~」
ダンがのほほんと言うが、他のメンバーはため息をついて諦めた表情でスープを啜った。ダンの『森での歩き方』訓練はまだまだ続くようだ。
さすがに連日毒入りスープは出さないと言ってもらっていたので、昨日よりもメンバーの足取りは軽かったが、それでも森の視界の悪さという点で街道を歩くよりも速度は出ていなかった。魔物を警戒しながら進むメンバーを見つつ、ダンはポーラとポーラに引かれるサニーと並んで歩いていた。
「しかしサニーは大人しいですね」
「うん、サニーは頭のいい子。最近は弱い魔物なら倒せるくらいに強くなってきた」
サニーの胴体を撫でながらダンが言うと、サニーの首筋に手を添わせてポーラが言った。
確かに最近のサニーは、ゴブリンはまだ無理だが兎型とか小さな虫型の魔物なら、その足で蹴散らせるほどに強くなってきていた。狼などはその身体の大きさを利用した威嚇で近寄らせないくらいはしている。
ふとサニーが何かに気づいたのかある一点を注視し始めた。
「何か居るのサニー?」
ポーラの問いかけに、ブルルと鳴いて頷くサニー。
「みんな、警戒!」
ポーラが隊列全員に注意を促す。すぐさま全員が周囲に気を配り始めた。
「――! 上から大蜘蛛だ!」
マロンの声に全員が視線を上へと向ける。
木々の枝から、大型の蜘蛛が飛び降りてくる。
『うんうん。程よい緊張感ですね~』
ちなみにダンはサニーが気づく前から気づいていたし、それが頭上に居ることも気づいていた。それでも最初から居ることを教えていては訓練にならないと黙っていたのである。
笑みを浮かべた口とわずかに頷いている頭の動きを見たイリアが気づいて、『趣味が悪っ!』と内心でダンに悪態をついていたが。
頭上から飛び降りてくる蜘蛛に対して、長物の武器を持っているものは空中に居る蜘蛛を突き、リーチの短い武器を持った者は蜘蛛を躱して素早く構えた。
ダンは剣を肩に担ぎながらその光景を観察する。ちなみに担いだ剣の剣先には大蜘蛛が胴体を貫かれて刺さっていた。
『わっぷ! ダン! 蜘蛛の体液が掛かったのだが!?』
「あ~、後で拭きますから今はご勘弁願います。ふむふむ、このくらいの蜘蛛なら対処は問題なさそうですね」
各々危なげなく対処していく。長物持ちは蜘蛛を地面に押さえつけて安全に倒していたし、近接武器持ちは蜘蛛の動きをしっかりと見ながら、それぞれ蜘蛛の頭を潰していた。
「うわわ!? 尻尾に糸がくっついたのだ! ぬうう、尻尾がベタベタするのだぁ」
若干涙目の狼が居たが、全員問題は無いようだ。
隣に居たポーラも槍から蜘蛛を引き抜くとサニーを撫で始めた。
「サニーえらい!」
撫でられたサニーも頭をポーラへと近づけて擦り付けた。なるほどサニーもポーラを褒めているようだ。
ダンは蜘蛛が付いたままの剣を近くの木に突き立てた。
『ギィアアアアアアアア!』
「やっぱりトレントでしたか」
ダンに剣で刺されたトレントが絶叫を上げると、蜘蛛を倒してホッとしていたメンバー数人の傍の木が擬態を止めて枝を伸ばし始めた。
「く、トレントか!」
「わわ、蜘蛛ばっかり気にしてた」
「リン! 一旦引くんだ」
とはいえ朝ほどの数が居ないようだから、そう苦労することもあるまい。
ダンはそう判断して、剣を使いトレントを縦に割りながらメンバーの戦いを見守った。
「うう、トレントにも気を配ってなきゃいけないし、かといって他の魔物を無視していい訳じゃないし……。あ~、気にすることが多すぎる~」
ファーニがそんなことを口にしている。とはいえ他のメンバーの顔も見れば、大なり小なり似たようなことを思っているようだ。
「ところで皆さん。闘気を使っての警戒はしないんですか?」
「ダンさんレベルの周辺警戒は出来ません!」
「まだ闘気が上手く広げられない」
「歩きながらは出来ません!」
『した方が楽なのに』とでも言いたいダンの言葉に各々が反論する。
ちなみに本来D級冒険者に望む技術ではないことに全員気づいていない。
「これも訓練だと思って、徐々に慣らしていきましょう!」
「「「は~い……」」」
不承不承といった様子でダンへと返事するメンバー。
繰り返すが中級下位の冒険者がする技術ではない。
本来索敵はスカウトなどのスタイルを主とする冒険者の領分であり、全員が索敵出来るところを目指すのは色々と間違えている。
しかしダンにそういった常識はない!
常にソロで色々と仕事をこなしていたダンの感覚では、大なり小なりではあるものの全員出来た方がよいと考えていた。
こうしてダンの訓練に、誰も異論を唱えずにいる状況が後にとんでもない冒険者を生み出すことになろうとは、この場に居る誰もが気づいていなかった。
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