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欲求発散する。被害?……まあ(遠い目)
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「はぁ、はぁ、はぁ」
喘ぐように空気を求めて口が開く。
身体全体が疲労のせいか、ドクンドクンと血液が勢いよく流れていっているように感じられる。痺れのような感覚が手足を襲っているが、まだ事は終わっていない!
チラリと横目で見れば全員自分と同じように疲労困憊だが、その目はその表情は逆に生気を帯びたギラつく獣のような様子だ。
自分は『ああ』ではないと思う。しかしその実口角が上がっている。ダメだ、実感できるがいちいちそんなことを気にかけている場合ではない。
視線を前に戻して獲物を見る。
全員に取り囲まれる様にして、そこに居る人物。
それは黒光りする引き締まった一本の棒だ。
例えや比喩ではない。
その男はしっかりとした一本の棒のように真っすぐに上体を起こしていた。うっすらと汗ばむその身体は、しかし自分とは違い落ち着いた呼吸をしている。そしてその一本の棒から突き出る様に、黒く光を反射する棒をもっている。
男が黒いのか、男のもっている棒が黒いのか。
そういえばもう、どのくらいの時間が経ったのだろうか?
頭に回る血が足りないのか、もはや明確な時間感覚すらない。
その時、こちら側の一人がやや前傾姿勢になったのが分かった。
同じことを既に幾度となく繰り返しているのだ。肌で感じるくらいには気付ける合図とも呼べない切っ掛け。
次の瞬間、全員で男に向かって飛びかかった。
半数が男のもつ棒に。残りの半数が男自身の身へと殺到する。
男の持つ棒を押さえて、男自身を打倒する――
「……やっぱ、どう考えてもムリゲーだよぉ!」
「はっはっは! じゃんじゃん掛かってきなさい!」
キョーコの悲鳴にも似た声がギルドの修練場に流れるが、それ以上に楽しそうなダンの声にかき消されてしまった。
無事にベタルの街に戻ってきたダンだったが、固有魔法『帰宅』を使った移動でタマモに引っ張られた時ほどではないものの闘気を消耗していた。その消費は体感で2割ほど。
ついでに魔力も使っているが、そちらは元々あまり気にしていないダンだった。
結局自身の闘気が半分以上、しかも僅かな時間で消費したことにより、ダンの中で激しく生存本能が荒れ狂ってしまったのであった。
実際、時間帯が夜であったならば、ちょっと人様に聞かせられない声が宿屋に響いてしまったかもしれない。
しかし時間はまだ朝。さすがのダンも今から宿へ戻りましょうとは言わなかった。
ちなみに余談ではあるが、固有魔法『帰宅』は服ごと移動が出来た。であるのでダンは素っ裸の状態で現れなかったのだ。
……素っ裸だったら、いきり立ったダンの分身を見て興奮していたメンバーが居たかもしれないが。
さて、とにかく気持ちの発散をしたい。というか体を動かして紛らわせたい! と考えたダンは(やはり最初の移動の際に脱げて落ちていた服と装備を回収してから)ギルドの門を叩き、こうして朝から修練場を使わせてもらっているという流れだった。
最後は薙刀のリーチを生かしつつ逃げに回ろうとしたキョーコを、闘気弾(デコピンバージョン)で仕留めたダンが鍛錬用として作った死の森の木刀を地面へと突き刺して浮き出た汗を拭った。
しかしダンの気持ち的にまだ発散したりないなぁと思っていた。
「あの、よろしいでしょうか?」
「ん? はい」
そんなダンに話しかけてくる人物。
年のころは自分よりも下かな? とダンが思うような顔つきの少年と、その後ろに同じパーティメンバーなのか同じく若い、とはいえこちらはダンと同じくらいの男性と、更に後ろに2人の女性。
ざっと見た武装からすると声を掛けてきた少年が剣士。後ろの男性は格闘家。女性の方は弓使いと魔法使いか?
ダンの周りで倒れていたメンバーはギギギと、ギクシャクとした動きで修練場の壁の方まで移動していく。どうも気をつかったみたいだ。
「横やりになってしまうのは分かっているんですが、是非とも俺達にも一手ご指南いただけないかと」
キラキラした目の少年に、ヤレヤレとした仕草をしていても鋭い目つきの青年。女性陣は2人とも本当に申し訳なさそうにしてるが。
とはいえダンも体を動かしたいのだ。少年に向かってコクリと頷く。
「やった! 訓練用の武器を借りて――」
「武装はそのままでいいですよ。慣れた武器の方がいいでしょ?」
嬉しそうにはしゃいで受付に向かおうとした少年にダンは声を掛ける。そもそもダンの持つ木刀は自前の物だし、ダンとしてもすぐさまやりたかったからだ。
だが少年は顔に怒気を浮かべてダンへと振り返った。
「本気ですか? そこらのナマクラな剣じゃないつもりなんですけど」
少年の剣は背中に背負うほどの大剣だった。胸の前に回しているベルトを外して背中の鞘を落とすと、残った手で剣を抜いて構えた。流れるような動作だ。かなり使い込んでいるのだろう。
見れば後ろの3人も顔が強張っているような気がする。
はて?
「ん~? コレで十分打ち合えると思いますけど?」
ダンは地面に突き刺した木刀を抜いて軽く振ってみた。芯がしっかりとした感触がある。特に内部にヒビが入った様子もない木刀を眺めた。
「……分かりました。それじゃあ僕達は、僕達の武器でヤラせていただきます」
怒り肩でダンから距離をとる少年。他の3人も少年と同じように距離を取った。
振り返ると仲間内でアイコンタクトを交わす。
「では行きま――」
「あ、ちょっとだけ待っててね」
そう言ってダンは先程の訓練で消えてしまったモノを足で書き始めた。
肩幅より少し広い幅のダンを中心とした円形を足元に。
「……それは、なんですか?」
少年はダンの行動に首を傾げる。
「さっきと同じ条件ですよ? 僕はこの円から外には出ません」
実際先程の訓練でダンは自身に枷を科していた。円形の中だけで足さばきを限定するという枷だ。別に円から出たら負けとはしていなかったが、それでもダンはごくわずかなスペースだけの足場で戦っていた。
「馬鹿にしているんですか?」
「いえ? 是非とも僕をこの円から追い出すくらいの勝負をしていただきたいくらいですね」
ニコリと笑うダンに、少年の顔が一気に赤くなる。
「行きます!!」
「あ~、本当に痛かったわ~」
最後に日和って逃げようとした瞬間、脇腹とつま先に闘気弾を食らったキョーコがすぐ脇に居たウェンディに声を掛けた。
「まあ仕方ないんじゃないですか? 距離を取ったら飛ぶアーツでしか攻撃できなかったダンさん相手に、それでも距離を取ろうとしたんですから」
「そうよね~、さすがに自業自得だわ。ところでダンさんナチュラルに相手挑発してたけど、あれワザとかな?」
目の前で猛攻に晒されながらも笑顔を絶やさないダンを見て言った。
ウェンディもわずかに考えて答える。
「たぶん、ワザとじゃない、はず。でも今のダンさんの心情的を鑑みると、微妙ですよね」
「ん~、タマモに聞いた話と併せて考えると……。疲れマラってヤツなのかな?」
サラッと酷い診断を下されたダンと、少年率いるパーティが激突をした。
喘ぐように空気を求めて口が開く。
身体全体が疲労のせいか、ドクンドクンと血液が勢いよく流れていっているように感じられる。痺れのような感覚が手足を襲っているが、まだ事は終わっていない!
チラリと横目で見れば全員自分と同じように疲労困憊だが、その目はその表情は逆に生気を帯びたギラつく獣のような様子だ。
自分は『ああ』ではないと思う。しかしその実口角が上がっている。ダメだ、実感できるがいちいちそんなことを気にかけている場合ではない。
視線を前に戻して獲物を見る。
全員に取り囲まれる様にして、そこに居る人物。
それは黒光りする引き締まった一本の棒だ。
例えや比喩ではない。
その男はしっかりとした一本の棒のように真っすぐに上体を起こしていた。うっすらと汗ばむその身体は、しかし自分とは違い落ち着いた呼吸をしている。そしてその一本の棒から突き出る様に、黒く光を反射する棒をもっている。
男が黒いのか、男のもっている棒が黒いのか。
そういえばもう、どのくらいの時間が経ったのだろうか?
頭に回る血が足りないのか、もはや明確な時間感覚すらない。
その時、こちら側の一人がやや前傾姿勢になったのが分かった。
同じことを既に幾度となく繰り返しているのだ。肌で感じるくらいには気付ける合図とも呼べない切っ掛け。
次の瞬間、全員で男に向かって飛びかかった。
半数が男のもつ棒に。残りの半数が男自身の身へと殺到する。
男の持つ棒を押さえて、男自身を打倒する――
「……やっぱ、どう考えてもムリゲーだよぉ!」
「はっはっは! じゃんじゃん掛かってきなさい!」
キョーコの悲鳴にも似た声がギルドの修練場に流れるが、それ以上に楽しそうなダンの声にかき消されてしまった。
無事にベタルの街に戻ってきたダンだったが、固有魔法『帰宅』を使った移動でタマモに引っ張られた時ほどではないものの闘気を消耗していた。その消費は体感で2割ほど。
ついでに魔力も使っているが、そちらは元々あまり気にしていないダンだった。
結局自身の闘気が半分以上、しかも僅かな時間で消費したことにより、ダンの中で激しく生存本能が荒れ狂ってしまったのであった。
実際、時間帯が夜であったならば、ちょっと人様に聞かせられない声が宿屋に響いてしまったかもしれない。
しかし時間はまだ朝。さすがのダンも今から宿へ戻りましょうとは言わなかった。
ちなみに余談ではあるが、固有魔法『帰宅』は服ごと移動が出来た。であるのでダンは素っ裸の状態で現れなかったのだ。
……素っ裸だったら、いきり立ったダンの分身を見て興奮していたメンバーが居たかもしれないが。
さて、とにかく気持ちの発散をしたい。というか体を動かして紛らわせたい! と考えたダンは(やはり最初の移動の際に脱げて落ちていた服と装備を回収してから)ギルドの門を叩き、こうして朝から修練場を使わせてもらっているという流れだった。
最後は薙刀のリーチを生かしつつ逃げに回ろうとしたキョーコを、闘気弾(デコピンバージョン)で仕留めたダンが鍛錬用として作った死の森の木刀を地面へと突き刺して浮き出た汗を拭った。
しかしダンの気持ち的にまだ発散したりないなぁと思っていた。
「あの、よろしいでしょうか?」
「ん? はい」
そんなダンに話しかけてくる人物。
年のころは自分よりも下かな? とダンが思うような顔つきの少年と、その後ろに同じパーティメンバーなのか同じく若い、とはいえこちらはダンと同じくらいの男性と、更に後ろに2人の女性。
ざっと見た武装からすると声を掛けてきた少年が剣士。後ろの男性は格闘家。女性の方は弓使いと魔法使いか?
ダンの周りで倒れていたメンバーはギギギと、ギクシャクとした動きで修練場の壁の方まで移動していく。どうも気をつかったみたいだ。
「横やりになってしまうのは分かっているんですが、是非とも俺達にも一手ご指南いただけないかと」
キラキラした目の少年に、ヤレヤレとした仕草をしていても鋭い目つきの青年。女性陣は2人とも本当に申し訳なさそうにしてるが。
とはいえダンも体を動かしたいのだ。少年に向かってコクリと頷く。
「やった! 訓練用の武器を借りて――」
「武装はそのままでいいですよ。慣れた武器の方がいいでしょ?」
嬉しそうにはしゃいで受付に向かおうとした少年にダンは声を掛ける。そもそもダンの持つ木刀は自前の物だし、ダンとしてもすぐさまやりたかったからだ。
だが少年は顔に怒気を浮かべてダンへと振り返った。
「本気ですか? そこらのナマクラな剣じゃないつもりなんですけど」
少年の剣は背中に背負うほどの大剣だった。胸の前に回しているベルトを外して背中の鞘を落とすと、残った手で剣を抜いて構えた。流れるような動作だ。かなり使い込んでいるのだろう。
見れば後ろの3人も顔が強張っているような気がする。
はて?
「ん~? コレで十分打ち合えると思いますけど?」
ダンは地面に突き刺した木刀を抜いて軽く振ってみた。芯がしっかりとした感触がある。特に内部にヒビが入った様子もない木刀を眺めた。
「……分かりました。それじゃあ僕達は、僕達の武器でヤラせていただきます」
怒り肩でダンから距離をとる少年。他の3人も少年と同じように距離を取った。
振り返ると仲間内でアイコンタクトを交わす。
「では行きま――」
「あ、ちょっとだけ待っててね」
そう言ってダンは先程の訓練で消えてしまったモノを足で書き始めた。
肩幅より少し広い幅のダンを中心とした円形を足元に。
「……それは、なんですか?」
少年はダンの行動に首を傾げる。
「さっきと同じ条件ですよ? 僕はこの円から外には出ません」
実際先程の訓練でダンは自身に枷を科していた。円形の中だけで足さばきを限定するという枷だ。別に円から出たら負けとはしていなかったが、それでもダンはごくわずかなスペースだけの足場で戦っていた。
「馬鹿にしているんですか?」
「いえ? 是非とも僕をこの円から追い出すくらいの勝負をしていただきたいくらいですね」
ニコリと笑うダンに、少年の顔が一気に赤くなる。
「行きます!!」
「あ~、本当に痛かったわ~」
最後に日和って逃げようとした瞬間、脇腹とつま先に闘気弾を食らったキョーコがすぐ脇に居たウェンディに声を掛けた。
「まあ仕方ないんじゃないですか? 距離を取ったら飛ぶアーツでしか攻撃できなかったダンさん相手に、それでも距離を取ろうとしたんですから」
「そうよね~、さすがに自業自得だわ。ところでダンさんナチュラルに相手挑発してたけど、あれワザとかな?」
目の前で猛攻に晒されながらも笑顔を絶やさないダンを見て言った。
ウェンディもわずかに考えて答える。
「たぶん、ワザとじゃない、はず。でも今のダンさんの心情的を鑑みると、微妙ですよね」
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