94 / 116
同行者が増える(なし崩し的に)
しおりを挟む
塔が崩壊すると同時に、周辺に作られていた貴族達の元保養地としての別荘もその姿を保てなくなったのか、あちらこちらでガラガラと崩壊する音が聞こえてくる。
そんな中もはやわずかに残る基礎部分以外が消し飛んだ塔からダンが歩いてくる。
「いやはや、かなり見通しが良くなりましたねぇ」
のほほんとした口調で感想を述べるダンだが、そんなダンとは対照的に迎え入れた仲間達は全員顔か口元が引きつっていた。
何せ単独で塔を粉砕したのだ。もはや人間業とは思えないダンの所業に、いっそ「実は僕ドラゴンなんです」と言われた方が信じられるくらいだ。
出会ってからそう時間が経っていないアレックスとエミリーも似たような表情をしている。 唯一ルフだけが『さすが剣の一族だ』と良く分からない信頼感を持ってダンを評価していたが。
入って来る時はあれほど多く居たアンデッドの存在も見当たらないので、とりあえず武器ポーチに手にしていた鞘をしまい込みながら仲間の元に到着したダン。
そして全員を見回して、その女性を目にする。
「……やっぱりサニーさん。なんですかね?」
「ぶるる」と人の口で鳴こうとした女性を見た。
元々サニーは色白の馬体だったからなのか、その女性は見事な白髪を肩から流し、すらりと長い手足に胴体は布を巻きつけている格好だった。
そのサニーはまだ人の姿に不慣れなのか、ポーラがその隣に突きっきりで支えている様子だった。
「とっさのこととはいえ、無事に塔を脱出することが出来ましたから、サニーの姿を元に戻してもらって構いませんよルフ王?」
元々はサニーのトイレ問題で姿を馬から人へと変えたのであって、その要件は済んだはずなのでダンはルフに元に戻す魔法の要請をした。
しかし――
「え? 無理なんですか?」
『正確に言えば無理ではない。だが変身魔法の魔法は、その生き物の存在自体をこね回して別の姿形に変えているのだ。この魔法は時間経過で解除されるたぐいであるが、その前に魔法で再度姿を変えようとすれば、それは再度魔法で変身させているだけで魔法の効果を消している訳ではないのだ』
ルフの説明好きを止められるわけではないが、さすがに言い回しが多いせいで理解出来なかったダンはルフに言う。
「――要約すると?」
『魔法を打ち消す魔法を使えばよい。だがそれをするには今の私の魔力では足らない』
だったら素直に無理と言え、とダンは思った。
「仕方ありませんね。今日はそのままの姿で居てもらうしかないのであれば、一先ずこの保養地から抜け出して少し離れた場所で野営をすることとしましょうか」
そう言って全員で元は道だった場所(それ以外は倒壊した建物で通れないので)を進み、保養地を抜けて西へと向かった。
元は保養地とこの先にある王都寄りの街とを結ぶ道があったのだが、保養地がアンデッドが多く居るダンジョンと化したため人も通ることが無くなり草が生え放題。しかし道の名残りとしてか、木々が生えていない草だけの地を進んで行くダン達。
『私達が生きている時にはしっかりと踏み固められた道があったんだがなぁ』
そんな様子になった元道を見てルフがそんな感想を言う。
「まあ仕方ありませんね。使わなくなった道なら草も生えてきますよ、っと」
バッサバッサと長く伸びた草を剣で払いながらダンが言う。
現在ダンとファーニ、それから長剣を装備したマロンとライの4人で並んで道を切り開いている。
多少は手間だが『大橋』から伸びる街道まで戻って進む。というルートもあったのに、ダン達が元道を切り開いて進むのには訳がある。
「明日以降、魔力が回復すればサニーを元に戻すだけじゃなく、王様達もその姿を誤魔化せるのは確かなんですか?」
塔が崩壊した成り行きで同行せざるを得なくなったルフ達3人。
別に同行するのにダンとして異論があるわけではなかったが、問題は街中に無事に入れるか? ということであった。
3人は種族が『不死人』となっており、外観は普通の人とそう変わらないが、その皮膚の色はまさに死人の肌といった感じで、日中に人に見られれば「色白なんで気にしないでください」という言い訳が通用するとは到底思えない状態なのだ。
『うむ。肌の色を誤魔化すだけであれば、それほど魔力を使わずに変装する魔法があるのだ。それならば日中維持し続けるのも問題にはならんよ』
それも今日は使えないということで、その状態で下手に街道を進んで、街道を利用する別のグループに妙な勘繰りをされるのもよろしくないと、こうして元道だった場所を進んでいるのである。
それならば一度夜営して、翌日以降魔法で変装してから街道を進めばいいのでは? と仲間の数人は思ったが、張り切って進むダンを止められず、結果こうして移動をしているという訳なのであった。
とはいえ塔の攻略で時間が掛かったこともあり、ほどなく夕方の時刻を迎えたダン達は泊まる場所を決めると、その周囲の草を円形に払い夜営の準備を始めた。
テキパキと簡易かまどや休憩場所を作っていくダン一行を眺めるルフ達。着の身着のままでついてきたので、現状次の街に到着して色々と揃えなければならないなと考えていた。
そして――
『――味が薄くないか?』
『そうですね。薄い気がします』
具材を適当に切って入れたスープを飲んでルフとアレックスが味の感想を言った。
「そうですか? 塩だけの味ですけど、僕は感じると思いますが?」
ダンがそう言って仲間を振り返る。仲間達も概ね首を縦に振っていた。
概ねなのは数人はスープを食べることに集中して話を聞いていないからである。
『……もしかすると、我々の種族が『不死人』というものに変わったから。かも知れませんね』
エミリーも味が薄いと感じていたがダン達が料理を作る様子を見ていたので、その味付けに何ら問題は無いことは確認済みだ。ならば原因は自分達にあると考える。
『ふむ……。ま、せっかく2度目の生を生きれるのだ。色々と思考錯誤してみるのもまた一興だな』
ルフがそう言ってスープを飲み干す。
「……不死人って『生きてる』って言えるのかな?」
ダンはそう思いながらもスープを啜った。
そんな中もはやわずかに残る基礎部分以外が消し飛んだ塔からダンが歩いてくる。
「いやはや、かなり見通しが良くなりましたねぇ」
のほほんとした口調で感想を述べるダンだが、そんなダンとは対照的に迎え入れた仲間達は全員顔か口元が引きつっていた。
何せ単独で塔を粉砕したのだ。もはや人間業とは思えないダンの所業に、いっそ「実は僕ドラゴンなんです」と言われた方が信じられるくらいだ。
出会ってからそう時間が経っていないアレックスとエミリーも似たような表情をしている。 唯一ルフだけが『さすが剣の一族だ』と良く分からない信頼感を持ってダンを評価していたが。
入って来る時はあれほど多く居たアンデッドの存在も見当たらないので、とりあえず武器ポーチに手にしていた鞘をしまい込みながら仲間の元に到着したダン。
そして全員を見回して、その女性を目にする。
「……やっぱりサニーさん。なんですかね?」
「ぶるる」と人の口で鳴こうとした女性を見た。
元々サニーは色白の馬体だったからなのか、その女性は見事な白髪を肩から流し、すらりと長い手足に胴体は布を巻きつけている格好だった。
そのサニーはまだ人の姿に不慣れなのか、ポーラがその隣に突きっきりで支えている様子だった。
「とっさのこととはいえ、無事に塔を脱出することが出来ましたから、サニーの姿を元に戻してもらって構いませんよルフ王?」
元々はサニーのトイレ問題で姿を馬から人へと変えたのであって、その要件は済んだはずなのでダンはルフに元に戻す魔法の要請をした。
しかし――
「え? 無理なんですか?」
『正確に言えば無理ではない。だが変身魔法の魔法は、その生き物の存在自体をこね回して別の姿形に変えているのだ。この魔法は時間経過で解除されるたぐいであるが、その前に魔法で再度姿を変えようとすれば、それは再度魔法で変身させているだけで魔法の効果を消している訳ではないのだ』
ルフの説明好きを止められるわけではないが、さすがに言い回しが多いせいで理解出来なかったダンはルフに言う。
「――要約すると?」
『魔法を打ち消す魔法を使えばよい。だがそれをするには今の私の魔力では足らない』
だったら素直に無理と言え、とダンは思った。
「仕方ありませんね。今日はそのままの姿で居てもらうしかないのであれば、一先ずこの保養地から抜け出して少し離れた場所で野営をすることとしましょうか」
そう言って全員で元は道だった場所(それ以外は倒壊した建物で通れないので)を進み、保養地を抜けて西へと向かった。
元は保養地とこの先にある王都寄りの街とを結ぶ道があったのだが、保養地がアンデッドが多く居るダンジョンと化したため人も通ることが無くなり草が生え放題。しかし道の名残りとしてか、木々が生えていない草だけの地を進んで行くダン達。
『私達が生きている時にはしっかりと踏み固められた道があったんだがなぁ』
そんな様子になった元道を見てルフがそんな感想を言う。
「まあ仕方ありませんね。使わなくなった道なら草も生えてきますよ、っと」
バッサバッサと長く伸びた草を剣で払いながらダンが言う。
現在ダンとファーニ、それから長剣を装備したマロンとライの4人で並んで道を切り開いている。
多少は手間だが『大橋』から伸びる街道まで戻って進む。というルートもあったのに、ダン達が元道を切り開いて進むのには訳がある。
「明日以降、魔力が回復すればサニーを元に戻すだけじゃなく、王様達もその姿を誤魔化せるのは確かなんですか?」
塔が崩壊した成り行きで同行せざるを得なくなったルフ達3人。
別に同行するのにダンとして異論があるわけではなかったが、問題は街中に無事に入れるか? ということであった。
3人は種族が『不死人』となっており、外観は普通の人とそう変わらないが、その皮膚の色はまさに死人の肌といった感じで、日中に人に見られれば「色白なんで気にしないでください」という言い訳が通用するとは到底思えない状態なのだ。
『うむ。肌の色を誤魔化すだけであれば、それほど魔力を使わずに変装する魔法があるのだ。それならば日中維持し続けるのも問題にはならんよ』
それも今日は使えないということで、その状態で下手に街道を進んで、街道を利用する別のグループに妙な勘繰りをされるのもよろしくないと、こうして元道だった場所を進んでいるのである。
それならば一度夜営して、翌日以降魔法で変装してから街道を進めばいいのでは? と仲間の数人は思ったが、張り切って進むダンを止められず、結果こうして移動をしているという訳なのであった。
とはいえ塔の攻略で時間が掛かったこともあり、ほどなく夕方の時刻を迎えたダン達は泊まる場所を決めると、その周囲の草を円形に払い夜営の準備を始めた。
テキパキと簡易かまどや休憩場所を作っていくダン一行を眺めるルフ達。着の身着のままでついてきたので、現状次の街に到着して色々と揃えなければならないなと考えていた。
そして――
『――味が薄くないか?』
『そうですね。薄い気がします』
具材を適当に切って入れたスープを飲んでルフとアレックスが味の感想を言った。
「そうですか? 塩だけの味ですけど、僕は感じると思いますが?」
ダンがそう言って仲間を振り返る。仲間達も概ね首を縦に振っていた。
概ねなのは数人はスープを食べることに集中して話を聞いていないからである。
『……もしかすると、我々の種族が『不死人』というものに変わったから。かも知れませんね』
エミリーも味が薄いと感じていたがダン達が料理を作る様子を見ていたので、その味付けに何ら問題は無いことは確認済みだ。ならば原因は自分達にあると考える。
『ふむ……。ま、せっかく2度目の生を生きれるのだ。色々と思考錯誤してみるのもまた一興だな』
ルフがそう言ってスープを飲み干す。
「……不死人って『生きてる』って言えるのかな?」
ダンはそう思いながらもスープを啜った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる