元兵士その後

ラッキーヒル・オン・イノシシ

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同行者が増える(なし崩し的に)

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 塔が崩壊すると同時に、周辺に作られていた貴族達の元保養地としての別荘もその姿を保てなくなったのか、あちらこちらでガラガラと崩壊する音が聞こえてくる。
 そんな中もはやわずかに残る基礎部分以外が消し飛んだ塔からダンが歩いてくる。

「いやはや、かなり見通しが良くなりましたねぇ」
 のほほんとした口調で感想を述べるダンだが、そんなダンとは対照的に迎え入れた仲間達は全員顔か口元が引きつっていた。

 何せ単独で塔を粉砕したのだ。もはや人間業とは思えないダンの所業に、いっそ「実は僕ドラゴンなんです」と言われた方が信じられるくらいだ。
 出会ってからそう時間が経っていないアレックスとエミリーも似たような表情をしている。 唯一ルフだけが『さすが剣の一族だ』と良く分からない信頼感を持ってダンを評価していたが。

 入って来る時はあれほど多く居たアンデッドの存在も見当たらないので、とりあえず武器ポーチに手にしていた鞘をしまい込みながら仲間の元に到着したダン。
 そして全員を見回して、そのを目にする。
「……やっぱりサニーさん。なんですかね?」
「ぶるる」とで鳴こうとした女性を見た。

 元々サニーは色白の馬体だったからなのか、その女性は見事な白髪を肩から流し、すらりと長い手足に胴体は布を巻きつけている格好だった。
 そのサニーはまだ人の姿に不慣れなのか、ポーラがその隣に突きっきりで支えている様子だった。

「とっさのこととはいえ、無事に塔を脱出することが出来ましたから、サニーの姿を元に戻してもらって構いませんよルフ王?」
 元々はサニーのトイレ問題で姿を馬から人へと変えたのであって、その要件は済んだはずなのでダンはルフに元に戻す魔法の要請をした。
 しかし――

「え? 無理なんですか?」
『正確に言えば。だが変身魔法シェイプチェンジの魔法は、その生き物の存在自体をこね回して別の姿形に変えているのだ。この魔法は時間経過で解除されるたぐいであるが、その前に魔法で再度姿を変えようとすれば、それは再度魔法で変身させているだけで魔法の効果を消している訳ではないのだ』

 ルフの説明好きを止められるわけではないが、さすがに言い回しが多いせいで理解出来なかったダンはルフに言う。
「――要約すると?」
『魔法を魔法を使えばよい。だがそれをするには今の私の魔力では足らない』
 だったら素直に無理と言え、とダンは思った。

「仕方ありませんね。今日はそのままの姿で居てもらうしかないのであれば、一先ずこの保養地から抜け出して少し離れた場所で野営をすることとしましょうか」
 そう言って全員で元は道だった場所(それ以外は倒壊した建物で通れないので)を進み、保養地を抜けて西へと向かった。


 元は保養地とこの先にある王都寄りの街とを結ぶ道があったのだが、保養地がアンデッドが多く居るダンジョンと化したため人も通ることが無くなり草が生え放題。しかし道の名残りとしてか、木々が生えていない草だけの地を進んで行くダン達。

『私達が生きている時にはしっかりと踏み固められた道があったんだがなぁ』
 そんな様子になった元道を見てルフがそんな感想を言う。
「まあ仕方ありませんね。使わなくなった道なら草も生えてきますよ、っと」
 バッサバッサと長く伸びた草を剣で払いながらダンが言う。

 現在ダンとファーニ、それから長剣を装備したマロンとライの4人で並んで道を切り開いている。
 多少は手間だが『大橋』から伸びる街道まで戻って進む。というルートもあったのに、ダン達が元道を切り開いて進むのには訳がある。

「明日以降、魔力が回復すればサニーを元に戻す、王様達もその姿を誤魔化せるのは確かなんですか?」

 塔が崩壊した成り行きで同行せざるを得なくなったルフ達3人。
 別に同行するのにダンとして異論があるわけではなかったが、問題は? ということであった。
 3人は種族が『不死人』となっており、外観は普通の人とそう変わらないが、その皮膚の色はまさに死人の肌といった感じで、日中に人に見られれば「色白なんで気にしないでください」という言い訳が通用するとは到底思えない状態なのだ。

『うむ。肌の色を誤魔化すだけであれば、それほど魔力を使わずにする魔法があるのだ。それならば日中維持し続けるのも問題にはならんよ』
 それも今日は使えないということで、その状態で下手に街道を進んで、街道を利用する別のグループに妙な勘繰りをされるのもよろしくないと、こうして元道だった場所を進んでいるのである。

 それならば一度夜営して、翌日以降魔法で変装してから街道を進めばいいのでは? と仲間の数人は思ったが、張り切って進むダンを止められず、結果こうして移動をしているという訳なのであった。

 とはいえ塔の攻略で時間が掛かったこともあり、ほどなく夕方の時刻を迎えたダン達は泊まる場所を決めると、その周囲の草を円形に払い夜営の準備を始めた。
 テキパキと簡易かまどや休憩場所を作っていくダン一行を眺めるルフ達。着の身着のままでついてきたので、現状次の街に到着して色々と揃えなければならないなと考えていた。
 そして――
『――味が薄くないか?』
『そうですね。薄い気がします』
 具材を適当に切って入れたスープを飲んでルフとアレックスが味の感想を言った。

「そうですか? 塩だけの味ですけど、僕は感じると思いますが?」
 ダンがそう言って仲間を振り返る。仲間達も概ね首を縦に振っていた。
 なのは数人はスープを食べることに集中して話を聞いていないからである。

『……もしかすると、我々のが『不死人』というものに変わったから。かも知れませんね』
 エミリーも味が薄いと感じていたがダン達が料理を作る様子を見ていたので、その味付けに何ら問題は無いことは確認済みだ。ならば原因は自分達にあると考える。

『ふむ……。ま、せっかくを生きれるのだ。色々と思考錯誤してみるのもまた一興だな』
 ルフがそう言ってスープを飲み干す。

「……不死人って『生きてる』って言えるのかな?」
 ダンはそう思いながらもスープを啜った。
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