元兵士その後

ラッキーヒル・オン・イノシシ

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逃走を試みた……

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 ダンが覗き見た光景。

 自分と同じ顔を持つ男が椅子に縛り付けられて、その男を囲むように女性3人が責め立てている光景。
 しかも女性達の顔はどこか上気しているように頬を赤らめ、その瞳は正気を失ったかのように爛々と輝いている。
 そんな3人に責め立てられて、「ぎゃああああああ」と絶叫を上げている男に、しかし逃げる術はない。

「……うん。見なかったことにしよう」
 ダンは目の前の光景を一人胸の内に仕舞い、その場を後にしようと窓枠から下りようとした。

「――何者だッ!」
 そう、声を掛けられなければ。

 部屋の中に居た女性達がこちらを振り向こうとする気配を感じたダンは、パッと窓枠から手を放すと細心の注意を払い音もなく地面に飛び降り、誰何の声を上げたの口封じを考えてその人物の方向へ顔を向ける。
 そこには簡易な胸当てと剣と盾を装備したダンと同じくらいの年齢の男が立っており――

「――シン、なのか?」
「? たい、ちょう? 隊長なので――!!」

 急に大声を上げようとした顔見知りの男――シンの口を瞬間移動したかと思えるほどの速度で塞ぐダン。

「んんん~!?(隊長~!?)」
「大声を出すなシン。……この建物内に、危険な精神異常を引き起こすが仕掛けられている可能性が非常に高い。既に中に居る人物たちはもう……」

 ダンの言葉に暴れていたシンの動きが弱まる。
 ダンに「落ち着いたか?」と聞かれて頷くシンを信用し、ダンはその口元にやった手を下ろしてシンを解放する。

「見て……、しまったんですね。隊長?」
「ああ。皆、常軌を逸しているようだった……」
「それはよく分かります」

 シンが食い気味にダンの言葉に反応する。おそらくシンもどう対処していいのか判断がつかないのだろう。ダンですら見なかった事スルーすることに先程判断を決めたところだった。
 だがその判断を下したタイミングでは、ダンが発見もしくは目撃者が居たと、中の人物たちに判断されていてもおかしくない状況であった。

「ひとまずこの場を離れよ――」

 バガンッ! とダンから見てシンが先程までいた辺りの扉が蹴り破られると、中から出てきたのは先程まで部屋の中に居た女性の1人であった。それは――

「あ、アリア、か?」

 ダンも良く知る女剣士。普段は肩口辺りまで伸ばした髪を頭の後ろで括り、手甲や脚甲、部分鎧を身に着けた必要最低限の防具で出来得る限りの軽装をしたその姿は、間違いなくダンの良く知る相手である。
 主武装であるいつも腰に下げていた2本の剣は身に付けてはいないようだが、ダンが教えた格闘術を忘れていなければ街中の戦いで後れを取ることはまず無いだろう。

 その目が宿

 ダンの声掛けにグリン! とダンの方へ顔を向けたその顔を紐でが半分覆う。
「――タイチョウダァ!?」
「――!」

 思わず喉の奥から声が出そうになったダンは口の中の唾と一緒に言葉を飲み込むと、「走れシン!」と踵を返そうとする。
 だがチラリと見たシンの顔は驚愕に染まり、そのの視線が動くことはなかった。

 慌てて顔を上げたダンが見たものは、先程室内を覗くためにダンが掴まっていた窓からの姿だ。
 その両足は器用に窓の隙間から出てくると、ズルリと地面に向かって落ちてくる。上半身を伴って。

「さ、サーシャ」

 猫獣人を思わせるような身軽さと柔軟性を見せて地面に降り立ったその人物の耳は人種と同じように横に付いている。差異があるとすれば、その耳はことが挙げられるだろう。

「ね、

 シンが漏らした言葉通り、その人物はシンの
 女弓兵であるサーシャは、父親であるが色濃く出たエルフ寄りのハーフである。逆にシンは母親の人種の血が濃く出た姉弟だ。

「――タイ、チョウ?」

 ダンの記憶にある限りでは普段から無口ではあったが、こんな宿をしている人物ではなかったはずなのだが……。

 ともかく前方――逃げる方向を塞がれて、後方も抑えられてしまった。

「~~仕方ない! 無力化するぞシン!」

 身内である相手に全力を出す訳にはいかず、尚且つ今は変装した(風呂に入りに来ただけ)恰好だ。
 徒手空拳で相手を制圧する構えを見せるダン。

 その背中を守るようにシンも背中合わせに――!?
「すみません隊長!」
 脇の下から腕を回されて両腕を封じられるダン。

「まさかシンも精神異常攻撃に晒されて――?!」
「俺は――、姉ちゃんをっす!」

「――なんて?」

「――よくやったシン! 今のタイミングで隊長を逃したら、後でだったぞ?」
「おい、シン?」
 ダンの声に回している腕がビクリと震える。が、解けることはない。

 ダンが全力を出せばシンの腕を事も可能ではあったが、どうにも状況が分からずに困惑していた。
 だが、何となく分かったこともある。

「もしかして――、アレってなのか?」
 ダンの問いかけに返答は無いが、背後でシンが小さく首を縦に振るのが感じられる。

 そうこうしているうちに、ダンの両腕をアリアとサーシャがギュッとしがみ付く様に抑え込む。
 それもダンが全力を出せば――以下同文。

 下手に抵抗して怪我をさせたくはないダンがズルズルと開け放たれた扉の方向へと引きずられる。

「――隊長の尊い犠牲に敬礼!」
「シィィィィィィン!?」
 扉の中には入らないシンがダンを見送る。



「――――アトデ、オボエテオケヨ?」
 シンの背筋を冷やす言葉を投げて、ダンと2人の女性が建物へと姿を消していった。



――――――――――

 ……しかし、回り込まれてしまったw
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感想 10

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みんなの感想(10件)

闇夜篠笛
2020.10.22 闇夜篠笛

実質殺されかけたのを油風呂で許すなんて心広いですね
…狐の油揚げ?

2020.11.05 ラッキーヒル・オン・イノシシ

正解。
ちなみに実際に自分がやられたらと考えたら……、

怒髪天を衝く。

な状態になると思いますね。

解除
闇夜篠笛
2019.08.02 闇夜篠笛

(当人達が覚えているかも若干あやしいですが)
嫁達のほとんどは妊娠してるのに
訓練のために毒を盛るって。
愛し子の守りの称号効果なら
このぐらいものともしない、ということなんでしょうか?
まあ、厳しい訓練の日々を思えば今さらですかね。

2019.08.04 ラッキーヒル・オン・イノシシ

当人達は当然覚えている。とは言い難いのがダンです。
たま~にナチュラルにど忘れしていたりするので。
ちなみに微毒→弱毒→普通毒くらいまでの対毒訓練を計画しているダンは、赤子への影響ということへの考慮をど忘れしています。
称号効果がなかったらアカン事例となっていたりしますね。

解除
アスカルコン

チンピラに金出させないんだ・・・

2019.08.04 ラッキーヒル・オン・イノシシ

チンピラ撃退→街の警邏をしていた衛兵に捕まる。といった流れるようなムーブで、ダン自身がチンピラにアレコレしている時間がなかったことが要因でした。
もちろんチンピラ達は窃盗未遂の罪を償い、世の中ヤベー奴が居ると教訓を得て、今後は更生した生き方をするようです。(後に出てくる予定はないですが)

解除

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