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第一章
第2話 前世の記憶
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【お前はこれから魔族の王となれ】
「魔族の王……」
【女神にとって人間の信仰が力の源であるのに対し、邪神にとって人間の恐怖と絶望はたまらぬ馳走だ。魔族は人間に恐怖と絶望を与えるのに最適な種族だ】
「……」
【魔族には人族のような王がいない】
「だけど僕は人間だ。魔族の王になれるわけがない」
【我の力で魔族の身体に変えることが出来る。お前の並外れた魔力と、魔族の強固な身体があれば、お前は間違いなく王として魔族たちを統率することができるだろう】
「――」
僕は宮廷魔法士の卵たちに魔法を教える大魔導師だった。
どんな魔導師だったのか?
そもそもどんな人生を歩んでいたのかはよく覚えていない。
ある時、僕は邪神アレムから天啓を受け、魔族を率いる魔王として君臨するように言われたのだ。
僕が無条件で魔王になったとは思えない。
多分、大魔導師だった時は善良な人間だったんじゃないかと思う……全然覚えていないけど。でも徳が高くないと、大魔導師という地位には就けないはずだからね。
そんな徳が高い大魔導師だった筈の僕が、一体どんな経緯で、魔王をやる羽目になったのか?
これも全然覚えていない。
人間だった時の記憶がすっぽり抜けてしまっている。だって魔王になってから、二百年以上は生きてきたと思うよ。
ただでさえ二百年前の記憶なんか覚えているわけがないのに、今は別の人間として生まれ変わっているんだ。今世の記憶と前世の記憶が入り乱れて、訳が分からない状態なんだよ。
とにかく前世の記憶で思い出せる出来事を思い出してみようと思う。
魔王になった僕は、邪神から力を授かり、魔族の身体を得ることができた。身体も魔力も桁外れに強くなり、年を取らなくなった。
僕たちが住むユースフィル大陸は、鳥が翼を広げたような形をしている。
大陸の中心、最北から最南にかけて険しいクレスター山脈が続き、特に高い山は大陸のほぼ中央にあるデスフリード山が有名だ。
山脈から西側は人間達が住んでいるので人界と呼ばれるようになり、山脈から東側は魔族たちが住む為、魔界と呼ばれるようになった。
僕は山脈を越えられる飛空生物に騎乗できる騎士軍を結成した。
確か魔天騎士軍だったかな。
クレスター山脈を越え、人界へ攻め入る魔天騎士軍に対し、人族はドラゴンに騎乗する竜騎士軍で応戦。
戦いは勝ったり負けたり、はっきり勝負がつかないまま二百年が過ぎた。
勇者と呼ばれる人間が現れたのは、その二百年後。
光の女神ミレムの加護を受けてた勇者は、とても清廉潔白な人物だという。弱き者を助け、強き敵を恐れずに立ち向かう。
人間でありながら年をとらず、僕を倒す力を得る為にずっと冒険をしてきたらしい。同じく女神の加護を受けた仲間も同様に年を取ることがなく、勇者と共に強くなっていったようだ。
邪神アレムからその知らせを聞いた僕は、勇者の討伐を配下達に命令。
しかし勇者とその仲間は次々と、僕の配下を倒していった。
魔王軍は全部で十隊で編成されていたけれど、隊長の訃報がどんどん僕の耳にはいってきた。
だけど勇者側も冒険の最中に仲間を失っていた。
隊長の訃報と共に、魔法戦士や、拳闘士、治療師など、女神に選ばれた勇者の仲間の死も伝えられていた。
僕は忠実な配下たちを失ったけれど、勇者も仲間を失っていた。
最終的に僕の元に辿り着いたのは勇者一人だった。
魔王城の衛兵は勇者によって全て倒されたので、僕も一人だった。
勇者と魔王、一対一の戦い。剣を交え、ありったけの魔力を込めた攻撃魔法をぶつけ合った。
大きなエネルギーは城を吹き飛ばし、魔王城付近一帯を焼け野原に変えた。
僕が剣を振りあげた時、刃は勇者の冑にぶつかり弾け飛んだ。
顔全体を覆っていた冑が取れた時、初めて勇者の顔を見た。
黄金の髪の毛、綺麗なディープブルーの目が印象的で、生まれ変わった今でも勇者の顔は目に焼き付いている。
それからは……。
……。
……。
……何故か思い出せない。
……あの後、僕はどうなったのだろう?
「魔族の王……」
【女神にとって人間の信仰が力の源であるのに対し、邪神にとって人間の恐怖と絶望はたまらぬ馳走だ。魔族は人間に恐怖と絶望を与えるのに最適な種族だ】
「……」
【魔族には人族のような王がいない】
「だけど僕は人間だ。魔族の王になれるわけがない」
【我の力で魔族の身体に変えることが出来る。お前の並外れた魔力と、魔族の強固な身体があれば、お前は間違いなく王として魔族たちを統率することができるだろう】
「――」
僕は宮廷魔法士の卵たちに魔法を教える大魔導師だった。
どんな魔導師だったのか?
そもそもどんな人生を歩んでいたのかはよく覚えていない。
ある時、僕は邪神アレムから天啓を受け、魔族を率いる魔王として君臨するように言われたのだ。
僕が無条件で魔王になったとは思えない。
多分、大魔導師だった時は善良な人間だったんじゃないかと思う……全然覚えていないけど。でも徳が高くないと、大魔導師という地位には就けないはずだからね。
そんな徳が高い大魔導師だった筈の僕が、一体どんな経緯で、魔王をやる羽目になったのか?
これも全然覚えていない。
人間だった時の記憶がすっぽり抜けてしまっている。だって魔王になってから、二百年以上は生きてきたと思うよ。
ただでさえ二百年前の記憶なんか覚えているわけがないのに、今は別の人間として生まれ変わっているんだ。今世の記憶と前世の記憶が入り乱れて、訳が分からない状態なんだよ。
とにかく前世の記憶で思い出せる出来事を思い出してみようと思う。
魔王になった僕は、邪神から力を授かり、魔族の身体を得ることができた。身体も魔力も桁外れに強くなり、年を取らなくなった。
僕たちが住むユースフィル大陸は、鳥が翼を広げたような形をしている。
大陸の中心、最北から最南にかけて険しいクレスター山脈が続き、特に高い山は大陸のほぼ中央にあるデスフリード山が有名だ。
山脈から西側は人間達が住んでいるので人界と呼ばれるようになり、山脈から東側は魔族たちが住む為、魔界と呼ばれるようになった。
僕は山脈を越えられる飛空生物に騎乗できる騎士軍を結成した。
確か魔天騎士軍だったかな。
クレスター山脈を越え、人界へ攻め入る魔天騎士軍に対し、人族はドラゴンに騎乗する竜騎士軍で応戦。
戦いは勝ったり負けたり、はっきり勝負がつかないまま二百年が過ぎた。
勇者と呼ばれる人間が現れたのは、その二百年後。
光の女神ミレムの加護を受けてた勇者は、とても清廉潔白な人物だという。弱き者を助け、強き敵を恐れずに立ち向かう。
人間でありながら年をとらず、僕を倒す力を得る為にずっと冒険をしてきたらしい。同じく女神の加護を受けた仲間も同様に年を取ることがなく、勇者と共に強くなっていったようだ。
邪神アレムからその知らせを聞いた僕は、勇者の討伐を配下達に命令。
しかし勇者とその仲間は次々と、僕の配下を倒していった。
魔王軍は全部で十隊で編成されていたけれど、隊長の訃報がどんどん僕の耳にはいってきた。
だけど勇者側も冒険の最中に仲間を失っていた。
隊長の訃報と共に、魔法戦士や、拳闘士、治療師など、女神に選ばれた勇者の仲間の死も伝えられていた。
僕は忠実な配下たちを失ったけれど、勇者も仲間を失っていた。
最終的に僕の元に辿り着いたのは勇者一人だった。
魔王城の衛兵は勇者によって全て倒されたので、僕も一人だった。
勇者と魔王、一対一の戦い。剣を交え、ありったけの魔力を込めた攻撃魔法をぶつけ合った。
大きなエネルギーは城を吹き飛ばし、魔王城付近一帯を焼け野原に変えた。
僕が剣を振りあげた時、刃は勇者の冑にぶつかり弾け飛んだ。
顔全体を覆っていた冑が取れた時、初めて勇者の顔を見た。
黄金の髪の毛、綺麗なディープブルーの目が印象的で、生まれ変わった今でも勇者の顔は目に焼き付いている。
それからは……。
……。
……。
……何故か思い出せない。
……あの後、僕はどうなったのだろう?
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