前世魔王だった僕は、前世勇者だった男に求婚されたので逃げ出しました

榎村まこと

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第五章

第60話 魔導師アシェラ③ ※

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 イルの唇は、僕の胸の先端に到達するとそこを甘噛みしはじめた。
 ビクッと僕の身体は震える。
 何でだ?
 そこを弄られるたびに、僕のアソコが堅くなる。
 ひとしきり、甘噛みをした後は、まるで赤ん坊のようにちゅっちゅっと音を立てて吸い始める。
 まるで甘えるみたいに胸を吸ってくるイルの頭を、僕は何度も撫でた。
 ずっと戦って来て、気が休まらない日々が続いていた筈だ。
 今は僕に甘えて欲しい。
 イルが望むこと、全部してあげたい。
 存分に僕の胸を味わった後、イルは目を潤ませて請う。

「アシェラの恥ずかしい所も見たい」
「あ………………」

 僕の唇から思わず吐息混じりの声が漏れる。
 イルが僕の足を開いて、一番恥ずかしい場所を見てきたからだ。

「アシェラ……こんな所まで綺麗だなんて反則だよ」

 僕はたまらなく恥ずかしくなって、思わず目を閉じる。
 誰にも見られたことがない秘所をイルに見られた……すごく恥ずかしいのに、僕の雄は興奮しているのか、天井に向かってそそり立ってしまっている。

「可愛い……可愛いよ……アシェラ」
「あ……イル……そこはっっ……」

 舌の愛撫は僕の一番恥ずかしい場所にまで及んだ。
 僕の雄茎を味わい、後孔にまで舌を這わせてきて。
 今まで体験したことがない快感に僕の身体は震える。

「イル……駄目だよ。そんな所まで舐めたら」
「どうして? こんなに美味しいのに」

 イルはむしゃぶりつくかのように、僕の雄茎や後孔に舌や唇を這わせてきた。
 触れられたことばない場所も、全部、全部、指や舌、唇でもって愛撫される。

   イルに沢山触れられるたびに、愛しい気持ちが大きくなる。
   僕をこんなにも求めてくれるのが嬉しくて、嬉しくてたまらなかった。

「ああ……アシェラ。そろそろアシェラの中に入るよ」
「イル……あっっ……」

 イルが僕の中に入ってくる。
 僕の中に熱杭がゆっくりと挿入される。熱さと同時に言いようのない快感の波も押し寄せてくる。
熱杭が最奥まで到達し、身体が反射的に弓反りになる。
 イルは嬉しそうな表情を浮かべる。

「全部入ったよ。アシェラ」
「あ……はっっ……イルッッ……」
「締まる……く……アシェラ……やばい……」
 
 イルの腰が独りでに動く。
 あ……動いたら……駄目……気が遠くなるっっ……。

 イルが動くたびに快感の荒波が僕を翻弄する。
 若い身体はこれでもかと言わんばかりに、僕の身体を突き上げ、揺さぶってきた。
 イルは頬を紅潮させ愉悦の笑みを浮かべている。
 僕の身体で、君が気持ち良くなってくれている。僕自身も気持ちが良くて、君と同じ気持ちなのかと思うと泣きたいほど嬉しくなる。

「アシェラ……いい……すごく気持ちがいい」
「イル……僕も……」
「アシェラ……嬉しすぎる……ようやくアシェラと一つになれて」
「イル……」
「ずっと、アシェラとこうなることを望んでいた。一緒に暮らしていく内に、あんたのことが欲しくて欲しくてたまらない気持ちになっていた」


 イル……君の言葉、一つ一つが僕を満たしてくれる。
 僕は一人の人間に対し、こんなに愛着を抱いたことはなかった。
 それがどんなに幸せなことか、今、知ることが出来た。
 僕の目から涙がこぼれ落ちた。

「……アシェラ……好きだ……」
「イルッッ……」
「俺だけのアシェラ……アシェラの中に一杯出したい」
「あ……あっ……イル……中に出したら……」

 駄目……という言葉が口から出る前に、僕の中にどくどくとたくさんの白濁が注がれた。
 イルの精が僕の中に広がって行く。
 罪深いことをした。
 僕は人を愛したらいけないのに。
 イルへの愛を否定するどころか、受け入れてしまった。

「アシェラ……まだ抱き足りない……」

 イルはまだ口づけていないお尻や背中にも口づけ、赤くて小さな花びらを散らした。
 僕も彼が歓ぶのであれば……と四つん這いになり恥ずかしいポーズをとり、後ろから彼を受け入れた。
 より深く結びついたのを感じた時、僕は気が遠くなった。

 何度求め合ったかわからない。
 今まで純潔を保っていた僕の身体は、英雄となったイルによって汚された。
 汚された……というのは正しくないな。
 合意の場合は汚されているとは言い難い。

「英雄なんかにならなくてもいい……アシェラ、結婚しよう」

 イルの言葉に僕は首を横に振る。
 いくら何でもそれは無理だ。

「父上が許してくれる筈が無い」
「国王は英雄である俺に、望むものは何でもくれると約束してくれた。英雄との約束を反故するのは国民からも不興を買うことになるから、そう簡単に断ることはできない筈だ」

 確かにイルは今、国民達から絶大な支持を得ている。
 いくら父上でも彼を無碍に扱うことはできないだろう。
 だからといって、僕との結婚をあの父上が許してくれるのだろうか?
 
 父親である国王陛下と会ったのは数える程しかない。
 僕という子供は、いなかったことになっているのだ。
 僕が一人の人間を愛したら、この国は滅びるという予言を信じている父上は、僕を亡き者にしようとしていたぐらいだ。
 そんな僕との結婚をそう簡単に許してくれるとは思えないのだけど。

「もし、結婚を許してくれないのなら、一緒にこの国を出よう。俺は冒険者として生活できる自信はあるし、アシェラだって何処の国に行っても魔法の先生としてやっていけるだろ」
「そんなことが出来るだろうか」
「出来るさ。そもそも俺は、そんな胡散臭い予言なんか信じていないから」
 
 僕はとても嫌な予感がしたのだけど、力強く訴えてくるイルの言葉を否定することができなかった。
 この時、君をきちんと諫めていたら運命は変わっていたのだろうか?  
 それとも、やっぱり滅びの道は決まっていたのか。
 今となっては分からない。

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