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その頃エドは2
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エドは確かに丈夫だった。アオの見立てどおりである。
騎士として瘴気の多い現場に行くことが多い上に、後ろでじっと待っているタイプではない。自ずと一番瘴気が強い所に突撃することになる。何度か命に関わるほどの炭化症を患いながら、不屈の精神と体力で乗り越えてきた男である。待っているカリンの存在も大きかった。彼女を一生守り抜くと誓ったのだから、志半ばで死ぬわけにはいかない。
そうやって、無自覚に、人間離れした瘴気耐性を身につけてきた。
ミミは炭化しかかった身体が、ものすごい勢いで回復していくのを日々感嘆しながら見ていた。数日経っても意識は戻らないが、呼吸も楽そうになり、手足も色を取り戻し始めた。
身体の傷のほうは、出血は止まったものの予断を許さない状況である。付け焼き刃の知識であるが、薬草を探し、その辺の服やら敷物やらを破って包帯にした。神殿で少し習っただけの普通のOLにできることは少ない。元々治癒の力があるはずだったから。
不思議とエドが回復する事には不安はない。確信めいたものがある。ただ、エドの黒ずんだ皮膚や、赤黒く痛々しい傷は彼女を打ちのめす。心の中には後悔しかない。毎日毎日、自分の罪の大きさに押しつぶされる。
何のためにこの世界に来たのかなぁ…私がやったことって…………
もし、元の世界に戻れるなら、田舎に帰ってお母さんと暮らそう。真面目にコツコツ働いて、もう恋愛とかしないで、穏やかにのんびり生きるんだ。
そんな時、漸くエドが意識を取り戻した。
「ここはどこだ?」
「エド!エド!気がついたの?テントよ。野営してた所。」
「俺は?」
「アオよ。アオがあなたをくわえて来たのよ。」
「は?!………アオが俺を……くわえて?」
「信じられないけど、アオが、白くておっきいきらきらしたオオカミみたいになって、背中にアキラを乗せて、あなたをくわえて運んで来たのよ。」
「………………………ミミ、おまえ、どっか悪いんじゃないか?」
「本当なのよ!いつか、本当ってわかるわよ!だいたい、あちこち悪いのはあなたでしょ!」
ついつい重病人に怒ってしまうミミである。
「…………まあ、よく分からないが、アキラはアオが連れて行ったんだな。アオなら何とかするだろう。」
触らぬ神に祟りなし。納得はいかないが、流そう。
「何があったの?」
「ああ、惨敗だ。」
ミミに、瘴気のせいで、とは言えなかった。
「ウィルは?!ウィルはどうしたの!?」
「ぼんやり覚えてるんだが、紫頭で角がある、ものすごい圧のやつが突然出て来て、ウィルを抱き抱えているところを見た…気がする。」
「捕虜になったのかしら………」
「わからん………もし、生きているなら、放ってはおけないな…」
エドは顔を歪めて悔しげに言う。
エドは平民からのたたき上げである。今でこそ実力で皆を黙らせているが、最初の頃は相当に苦労した。黙ってやられっぱなしのエドでは無いが、階級社会の仕組みが立ちはだかった。
その時、ずっと支えてくれたのが筆頭魔法使いのウィルだった。後で知ったが、彼は王の庶子だった。度重なる暗殺未遂や、謂れのない噂や差別に晒されていた。それを魔法を極めることではねのけた。自分より年下なのに…。その姿が自分と重なり、ウィルのようになろうと思った。ウィルはエドにとってかけがえのない友であった。
騎士として瘴気の多い現場に行くことが多い上に、後ろでじっと待っているタイプではない。自ずと一番瘴気が強い所に突撃することになる。何度か命に関わるほどの炭化症を患いながら、不屈の精神と体力で乗り越えてきた男である。待っているカリンの存在も大きかった。彼女を一生守り抜くと誓ったのだから、志半ばで死ぬわけにはいかない。
そうやって、無自覚に、人間離れした瘴気耐性を身につけてきた。
ミミは炭化しかかった身体が、ものすごい勢いで回復していくのを日々感嘆しながら見ていた。数日経っても意識は戻らないが、呼吸も楽そうになり、手足も色を取り戻し始めた。
身体の傷のほうは、出血は止まったものの予断を許さない状況である。付け焼き刃の知識であるが、薬草を探し、その辺の服やら敷物やらを破って包帯にした。神殿で少し習っただけの普通のOLにできることは少ない。元々治癒の力があるはずだったから。
不思議とエドが回復する事には不安はない。確信めいたものがある。ただ、エドの黒ずんだ皮膚や、赤黒く痛々しい傷は彼女を打ちのめす。心の中には後悔しかない。毎日毎日、自分の罪の大きさに押しつぶされる。
何のためにこの世界に来たのかなぁ…私がやったことって…………
もし、元の世界に戻れるなら、田舎に帰ってお母さんと暮らそう。真面目にコツコツ働いて、もう恋愛とかしないで、穏やかにのんびり生きるんだ。
そんな時、漸くエドが意識を取り戻した。
「ここはどこだ?」
「エド!エド!気がついたの?テントよ。野営してた所。」
「俺は?」
「アオよ。アオがあなたをくわえて来たのよ。」
「は?!………アオが俺を……くわえて?」
「信じられないけど、アオが、白くておっきいきらきらしたオオカミみたいになって、背中にアキラを乗せて、あなたをくわえて運んで来たのよ。」
「………………………ミミ、おまえ、どっか悪いんじゃないか?」
「本当なのよ!いつか、本当ってわかるわよ!だいたい、あちこち悪いのはあなたでしょ!」
ついつい重病人に怒ってしまうミミである。
「…………まあ、よく分からないが、アキラはアオが連れて行ったんだな。アオなら何とかするだろう。」
触らぬ神に祟りなし。納得はいかないが、流そう。
「何があったの?」
「ああ、惨敗だ。」
ミミに、瘴気のせいで、とは言えなかった。
「ウィルは?!ウィルはどうしたの!?」
「ぼんやり覚えてるんだが、紫頭で角がある、ものすごい圧のやつが突然出て来て、ウィルを抱き抱えているところを見た…気がする。」
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