前世が見えちゃうんですけど…だから、みんなを守ります(本編完結・番外編更新)

turarin

文字の大きさ
22 / 32

スタンピード2

しおりを挟む
 果てしなく思えた戦いも終わりが見えてきた。スーザンとクリスのピンポイント治癒魔法も上手く機能した。

 ほっと一息ついた頃、

「スーザン、反対側の方で、倒れてる弓兵がいるの。ちょっと来て!こっちよ。」

 とメイリン。

「わかった」

 城壁の反対側へとメイリンについていくスーザン。

「え?どこにいるの?」 

 どんっ!

 え?!なにこれ?押された?落ちてる!
 城壁の上からほくそ笑むメイリン。

「あんたのせいよ。あんたが悪いのよ」 

 自分で治癒魔法かけられるのかな?即死じゃなければいけるはず。瞬時に考えるスーザン。

 あれ?ふわっと身体が浮いてる?

「姉ちゃん!!もうやめてくれよ!!」

 大声で叫ぶクリス。

 これ、クリスの風魔法?。そして黒い影の腕が身体に巻きついて、さらに城壁にくっついている。チャーリーの闇魔法!

 助かった…城壁にぶら下がったまま果てしなく涙が流れる。

 どうやって来たのか、城壁の上にいるチャーリーに引き上げられ、抱きしめられた。体がぶるぶる震えて涙が止まらなかった。

 メイリンも立ち尽くしたまま、真っ青になって震えていた。その隣に立つクリス。
   
「姉ちゃんだろ。もうやめてくれよ、ほんとに。もうたくさんだよ。」

「龍二なの?」

「全部思い出したわ。殺すつもりなんて無かったのよ。ただ苦しくて苦しくて…もうどうしょうもなかったの。母さんみたいにならないように、幸せな結婚しなくちゃって。健太郎さんだって、姉ちゃんのこと、愛してるって言ってくれたのよ」

「健太郎さん?どういうこと?」
 スーザンはわけがわからない。

「言っていない。そんなこと一度も言ってない…」

 チャーリーが言う。え?あなた健太郎だったの?

「でも、あの夜、私のこと抱きしめてくれたじゃない。好きってことでしょ…私のこと。なのに、ずっと会ってくれなくて…電話もラインもつながらないし。私苦しくて、苦しくて…
 おうちにも行ったわ。そしたら居たのよ、あの智美って人が。おかしいわよね。私が健太郎さんと結婚しなくちゃいけないのに、何であの人が健太郎さんのおうちにいるわけ?」
  
「俺は智美しか愛していない。  
 お前が、俺の目の前で智美を殺した……落ちて行くのを見た…俺が、お前を抱いたから… 別に好きじゃなかった。ただ、なんとなく……お前が誘ってきたから。それだけだ。」


 もう聞きたくなかった。 ああ、気絶したい。
 健太郎、こういう人だった。知ってた。そっか、健太郎の浮気のせいで私、殺されちゃったんだね~。

 まさか龍二くんのお姉ちゃんだったとはね… 
 お姉ちゃん、殺人犯になったら、その後の人生大変だったろうなあ、龍二くん。 そんなことをぼんやり考えた。

 不毛な言い争いにうんざりして、スーザンは言った。
「もう、いいよ…
 だって、今のことじゃないでしょ……でも、また私を殺そうとしたことは許せない。罪を償ってもらいたいから…」

「スタンピード落ち着いたみたいだし、もう休ませてもらうね。クリス、チャーリー、助けてくれて、ありがとう。クタクタなの。さっき、もう少しで死ぬとこだったし…」

「待て、送ってくよ」

「ごめん、チャーリー、1人にしといて亅 

「俺、送ってくよ。俺ならいいでしょ?」

 と、クリス。クリスならいいかな。

「うん、お願い。」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

何か、勘違いしてません?

Ciel
恋愛
エバンス帝国には貴族子女が通う学園がある。 マルティネス伯爵家長女であるエレノアも16歳になったため通うことになった。 それはスミス侯爵家嫡男のジョンも同じだった。 しかし、ジョンは入学後に知り合ったディスト男爵家庶子であるリースと交友を深めていく… ※世界観は中世ヨーロッパですが架空の世界です。

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

元ヒロインの娘は隣国の叔母に助けを求める

mios
恋愛
両親のせいで、冷遇されて育った男爵令嬢モニカ。母の侍女から、「物語ではこういう時、隣国の叔母を頼ったりしますよ」と言われて、付き合いの全くない隣国の叔母に手紙を書いたのだが。 頼んだ方と頼まれた方の認識のズレが不幸な出来事を生み出して行く。

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

鈍感令嬢は分からない

yukiya
恋愛
 彼が好きな人と結婚したいようだから、私から別れを切り出したのに…どうしてこうなったんだっけ?

夢を現実にしないための正しいマニュアル

しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。 現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事? 処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。 婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。

処理中です...