異世界チート?転生 〜性別も転生した〜

幻影の夜桜

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第2話 S級魔法

11「ボリューミーな食事」

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 ニーハイソックス+ミニスカート。
 かつて二次絵でオカズにしたことも少なくない絶妙のコンビネーション。
 吹けば見えてしまいそうな短さのスカートと、指先から膝すらも覆いつくすほどに伸びる黒色のニーハイソックス。その間から顔を覗かせる真っ白で程よく肉のついた太ももは、女の子の最大の魅力の一つだろう。
 脚が繰り出す絶好のエロと言っても過言ではない。


 そんな格好を、今の俺はしている。
 もう本当に心許こころもとない以外の何物でもない。

 それこそ風ひとつで冗談抜きに見えてしまうのではないかと心配になるし、そもそも股下の開放感がこの上なく不安な気持ちにさせてくる。
 爽やかな風が脚に当たれば、かつてオカズにしてきた画像に俺の男の時の顔を当てはめたキツい画像が頭の中に浮かぶし、もう嫌なことしかない。

 多分、男に戻れたとしても、金輪際このネタでは無理だろうと思う。


 さて、そんな俺は現在、ミストと二人並んでとある飲食店の四人テーブルに腰掛けている。
 店はさながらファミリーレストランといったところで、好奇心旺盛な子供のように店内を見渡していると、目の前にドカッと大柄の男が座った。
 ミストが動じていないところを見ると、どうやらこの男が話に聞いた魔法使いらしい。男から見ても惚れ惚れするようなその身体を持つその男は、一言で言えば“らしくない”感じだった。

「待たせた。そっちの子が噂のシルヴィアちゃんかな? 思ったより大人しいな」
「ああ、違うんだ。この子はミラちゃんって言ってね。僕の新しいパーティメンバーだよ」
「ミラです。よろしくお願いします」
「っとマジか。わりいわりい。知らなかったもんでな、許してくれ。俺はカイルだ、よろしく頼む」

 そういえばこの人は元々シルヴィアが魔法使いになった時に教えてくれと頼んでいたんだっけか。
 この世界を見たところ、電話みたいなものも無さそうだったし、ミストも玄関口で呼ぶ際に長々と話し込んだりはしないだろう。
 そう考えると、知らなくて当たり前か。

 しかし見た目の割に威圧感が無く、さっきも頭を掻いてすぐに謝ったこのカイルという男は、意外と気さくなタイプの人間かもしれない。
 だがやはり、どう見ても前衛職の方が向いてそうであるというイメージは拭い切れなかった。

「よし、じゃあまずは食うか。さっきシルヴィアちゃんと間違えたお詫びに、ここは俺が出させて貰おう! 好きなもん食ってくれ」
「そ、そんな気にしてないですよっ……!」

 突然のお詫び奢り宣言に驚いた俺は、反射的に遠慮の姿勢を取る。
 しかし本当に一切気にしていないので、奢られるのは悪いと思っているのも事実である。ただの形だけの遠慮ではない。
 お金自体も、「しばらくクエストには出ないだろうから」とミストにそこそこのお金をもらっていたので、払えないこともないのだが……。

「ミラちゃんと言ったな? こういう時は男を立たせとくもんだ。こんな場で女の子に払わせちゃあ切腹もんなんだよ。だから、ここは俺に払わせてくれ」

 どうしよう。俺切腹してこようかな。

 もしかしなくても善意からの言葉なのだろうが、俺としてはとても心に来ていた。
 しかしそれはそうと、どうやらこの世界には遠慮という概念があまりないようだ。
 それにこのカイルの口振りを見たところ、名前を間違えたからというのは偶然出来た口実でしかなく、元より払うつもりだったらしい。

 であれば、ここは遠慮を押し通すより乗っかる方が得策だろう。
 男に戻ったあかつきには、絶対に率先して出そうと心に誓いながら。

「じゃあ、お言葉に甘えて」
「よっしゃ決まりだな! もちろんミストの分も払わせてもらうからな!」
「あはは。僕が出すつもりだったのに、先を越されちゃったね」

 ミストの言葉を聞いた俺は、さっきの仮説が間違いでないとの確信を得た。
 そういえば昔、「日本人は遠慮しすぎだ」なんて記事を見たような気がする。
 日本人に囲まれて育った俺は特にそうだと思ったことは無かったが、今こうして異世界の異文化に包まれた身で考えてみると、確かに日本人は遠慮がちだったのかもしれない。

 あ、これ美味しそう。

「これにする」

 俺はメニューに載っている一つの写真を何気なく指さしてそう伝えた。
 ……のだが、どうにも妙な空気を感じ取って顔を上げてみると、少し驚いた表情を見せる二人の男が居た。

「……けっこう、食べるんだね」

 最大限に気をつかって言葉を選んだようなミストのセリフを聞いた俺は、言いたいことがよく分からないまま再びメニューに視線をやる。
 俺の指さしていたメニューは、大きめのハンバーグと少量のカットステーキがプレートに置かれたものだった。間違えたわけでもない。
 確かにちょっとボリュームはあるが、年頃の男ならこれくらい食べて当たり前だろう……?

『あの……女の子がそういうのは……』

 珍しくペンダントから聞こえてきた絶妙な一声のおかげで、俺は今の状況を客観的に見ることが出来た。
 俺が指していたのは、食べ盛りの男子が食べるようなボリューミーなもの。
 そう。16の女の子が、そんなものを指していたのである。
 ハッキリ言って俺もカイルやミストの立場なら少し引いてしまうかもしれない。シルヴィアみたいな元気の有り余る子ならまだ百歩譲って有りかもしれないが、大人しいとの印象がある女の子がコレはないだろう。
 慌てた俺は頬に尋常じゃないほどの熱を感じながらも必死に指先をズラして。

「こ、こっち! そう! 間違えちゃった! お……わ、私ちょっと興奮してるのかな! 魔法に! うん!」

 改めて指したのはただのハンバーグプレート。これはさすがにセーフだろうが、あくまでそれは最初から指していた場合である。
 正直臭いことこの上ない言動だったと思うが、混乱した俺が冷静な演技や対応をかませるはずもない。
 しかも何気に「俺」と言いかけていた。本当に危なかった。

「そ、そう。たまにあるよね。指し間違い」
「ま、魔法は楽しいからな! 無理もない」

 二人は優しく気遣ってくれるが、それでも隠しきれない動揺の心は手に取るように分かった。
 願わくば、一刻も早く忘れてほしい。

 しかしそれ以上触れようとせず、すぐに新しい話題で空気を作り替えようとする二人に感謝しながら落ち着こうとしたが、意外なところからの追い討ちがかけられた。

『こ、こっち! そう! 間違えちゃった! てへぺろ! 俺ちょっと……あああ! 俺じゃない! 私! 私ちょっと興奮してるのかな! 魔法に! うん! クク……!』

 そろそろ真剣にこのペンダントどこかに捨ててこようかな。
 俺はそんなことを頭に浮かべながら、怒りと羞恥で力強く、あることないこと口にして笑うペンダントを握りしめた。
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