異世界チート?転生 〜性別も転生した〜

幻影の夜桜

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第4話 魔法使いとリッチー

25「リッチー」

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 魔法というものは本当にいいものだと思う。
 一見何もない空間から水や風を生み出し、それを操って色々なことができるのだが、何よりこのパワーを放出する瞬間がこの上なく快感だ。

「《ブリザード》──ッ!」

 左手で支える右手から、圧縮させたパワーを一気に解放させるイメージ。
 そこに渦巻いていた雪の嵐は、前方へ一気に放出され、そのまま暗闇の中に消えていく。
 魔法というのは本当にいいものだ。

「もうそんなにB級魔法が使えるのか」
「すごいでしょ! ほら! 褒めて!」
「すごいすごい」
「っ……。相変わらずどこか適当……」

 軽く手を叩きながら褒めてくるその姿は、なんというかどこか腹の立つ感じである。
 しかしそんな指摘をされた当の本人は、悪びれる様子もなくヘラッと笑って。

「なんだよ。ちゃんと褒めてるのに」
「あー分かった! もっとすごいのやればいいんでしょ!」

 俺の反応を楽しむかのように笑うその顔に背を向け、再び手の先に魔力を集める。
 そして今後はそこに、大きく、そして圧縮された水球を作り出して。

「≪ウォーターキャノン≫――ッ!」

 俺は水の砲撃を前方に打ち込む。それが闇に飲まれていく様子を見ながら。

「さっきの水球はすごいんだよ。すっごく圧縮してるから、何かにあたって爆発した時は相当の衝撃が行くようになってる」
「マジかよ。なるほど、キャノンか」

 魔法の説明を聞き、その名称に納得したはずのエルヴァが、何か違和感を感じたような表情になって空を見上げた。

「……雨か?」

 雨? 何を言ってるんだか。と思っていると、不意に頬に水が触れた感覚がする。
 まさかと思って空を見上げてみるが、雲こそあれど雨の降りそうなものではない。
 二人で顔を合わせて首をかしげていると、その答えは意外な形でもたらされた。

「さっき自分で言ってたじゃない? 破裂したら衝撃がすごいって。もちろんそうなれば水滴の一つや二つくらい行くでしょう?」

 突如声が聞こえたのは、さっきまでバカスカ魔法を放っていた方角だ。
 一気に緊張を高めて目をやってみると、月明かりのした、すでに肉眼で姿が確認できるほどに近づいている黒ローブの人がいた。
 フードまでかぶって顔はイマイチ見えないが、声と話し方からして女の人だろう。

 いや、今はそんなことはどうでもいい。
 この人は今二つの驚くべきことをやってのけている。
 一つは俺のあのウォーターキャノンを息を一切乱すことなく四散させたこと。
 もう一つは、俺の結界に侵入形跡を残さずに近付いていること。

「もう、そんな怖い顔しないでよぉ。お姉さんはアナタの魔法に感動して来ちゃっただけなのにぃ」

 自分をお姉さんと言ったその女は、まるで媚びるかのような物言いでゆっくりとこちらに近付いてくる。
 良い人なのか、悪い人なのか、それすらも分からない。とにかく話を……。

「外の結界、アレは原理が分かれば簡単よぉ。要するにぃ、振動させなければいい訳でしょぉ?」
「な、なんで私の疑問が……」
「わかるわよぉ。あと『貴女は何者?』と『何しに来た?』ってところかしらぁ?」

 まだ何も聞いてないのに俺の抱く三つの疑問のうちの一つに答え、さらに残りの二つも見事に言い当てて見せた女。
 それにあの結界だって、同業者なら原理こそ知っているだろうが、無色透明どころか実態すらない代物だ。簡単に存在が分かるものでもない。

「あ、安心して。別にアナタの心の中を見てる訳じゃないから」
「じゃ、じゃあどうやって……」
「状況判断よ? こんな場面、普通の人間なら感情の動きはこれしかないわぁ」

 た、たしかに。言われてみれば単調な疑問である。
 だが、別にその疑問が消えた訳じゃない。

「うふふ、早く答えてほしそうね」
「分かってるなら、早く……」
「そういう怖い顔しないでよお。ここに来た目的は、さっきも言ったけど、アナタの魔力に惹かれたからよぉ?」

 いや、意味がわからない。
 すでに俺はこの女に危険人物のレッテルを貼っている。だが、だとしてこの女の目的が見えない。それに今のところ殺気はまだ感じられない。
 俺のB級魔法を四散させたほどの実力者だ。逃げるにしても簡単な話じゃないだろう。

「じゃあ、貴女は……何者?」
「その前に、まずは舞台設定かしらぁ?」

 愉快そうにまた訳のわからない言葉が耳に届かせると、ゴゴゴゴと地鳴りがした。

「地震!?」
「魔法か!」
「そうだけどぉ。別にアナタたちに危害を与えようって話じゃないから落ち着きなさい?」

 いつまでも楽しそうな女がそう言うと、確かに何の危害もなく地鳴りはやんだ。

「あ、その明かりじゃお姉さんのことイマイチ見えないでしょぉ?」

 その声とともに、俺のランプだけでほのかに照らされていたはずの空間が一気に明るみを帯びる。
 するとそこにはいつの間に作られていたのか、高さの違う二重の壁に囲まれていた。内側の低い壁の上には等間隔に火が灯っており、それがこの明るさを作っているようだ。
 そしてようやく“舞台設定”とやらを終えたのか、女はフードをめくって顔を露わにした。
 不健康なほどに白く、肩ほどまでの髪は色素が抜け落ち、唇を青紫色に染めたその顔でにこりと笑って。

「フィオナ、と言えばわかるかしら?」
「フィ、フィオナだと!?」

 相手の名に、エルヴァがオーバーなほど大きな反応を示す。
 なんだ。そんなにヤバい奴なのか。

「後ろのお兄さんは知っててくれてたみたいね、光栄だわ。でも本命さんがピンと来てないみたいだから改めて自己紹介するわね」

 そう言った女は、一呼吸おいて。

「私はフィオナ、魔王軍幹部が一人、リッチーのフィオナよ」
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