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16章
冬の足音
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渡会が転校してきた日は、突き抜ける様な青い空で、春なのにとても寒い日だったのを覚えている。数日前から強く吹いていた風が、雲を蹴散らして太陽の光りを届けた。
砂埃の舞うグラウンドのフィールドで、体育祭の練習が始まると、サラサラと揺れるその茶色の髪を、ただぼんやり眺めた事を、今でも思い出していた。
引っ越しの前日。
大きな家具や電化製品は、白井がリサイクルショップへ持っていってくれた。
「白井さん、ちゃんとお礼をしたいんです。これで、焼肉でもしませんか?」
凪は白井に、リサイクルショップで換金したお金を渡した。
「結婚資金にでもすればいいじゃないか。」
白井はそう言ったが、
「食べてしまえば、何も残らなくなりますから。」
凪は白井にお金を委ねた。
白井と広川は平岡や羽田を呼んで、広川の家で焼肉をする事にした。
反抗期の高校生、広川の一人息子は、白井と平岡のペースに巻き込まれて、気をつかいながら広川の手伝いをしている。
「あんまり、母ちゃんを心配させんなよ。」
平岡が広川の息子に頻りにそう言っている。
「渡会さん、明日引っ越しなのにこんな事してて、本当にいいの?」
広川が凪に言った。
「私が白井さんに頼んだんです。」
凪は言った。
「じゃあ、今頃旦那は一人で荷造りか?」
平岡は広川の息子と肩を組んでいる。
「むこうを片付けているんだと思います。こっちの荷造りは終わりましたから。」
「ふ~ん。だいたいさ、順番が違うんじゃないの?先に籍入れて、あとからいろいろ準備をするって、なんかおかしな話しだよな。」
平岡は少し酔っていた。
「結婚なんて、何かのきっかけがないとできませんよ。昔みたいに、みんなするのが当たり前じゃないんだし、結婚したその先の事を考えると、不安で仕方なくなりますよ。どっかのタイミングで、その瞬間に何も考えずに籍を入れてしまうのが理想かも。」
羽田が言った。
「羽田さん、ずいぶん大人になったわね。」
広川は羽田を見て、肉を焼く手を少し止めた。
「朝、髪の毛振り乱して子供を預けにくるお母さんとか見てるとね、理想の人生を歩んでる人なんて、誰もいないんだなって、そう思います。」
「アハハ、本当にそうね。いろいろ計画を立ててもね、うまくいかない事だらけ。だけど人って計画を立てないと不安でたまらないのよね。」
広川は息子の皿に焼けたピーマンを入れた。
「いらないって。」
「いいから食べなさい。」
親子のやり取りを見ていた羽田は、周りがざわざわしたしたのを見計らって、凪の隣りに座った。
「渡会先輩、話したんですか?」
凪は羽田が言いたい事がわかる。
「まだ。」
「話せますか?」
「どうかな。」
「旦那さんはそういうの許せる人ですか?」
「それはわからない。でも、こういう事がなかったら、結婚なんて考えなかったかも。」
「思いつきの様で、けっこう策士ですね。先輩も旦那さんも。」
「むこうはね、そうかも。様子を伺っているようで、ちゃんと作戦を練ってるから。」
「バドミントンやってるんでしたっけ?」
「そう。」
「私もこの前平岡さんと一緒に練習に行ったんですけど、ああ見えてすぐに怒るから、帰りに喧嘩になりました。ラケットも靴も、お揃いで買ってくれたんですけどね。」
羽田の話しを聞いて、凪はプッと吹き出した。
「真姫ちゃんが平岡さんを動かせばいいじゃない。」
「やっぱり、そうですかね。けっこう腹立ちますよ、口ばっかりで、ぜんぜん動きませんから。ねぇ、いつか一緒にやりましょう。」
「そうね。」
朝早く、運送業者がやってきた。
最後までつけていた石油ストーブをトラックに積むと、ガランとした部屋の中で、凪は書類にサインを書いた。
「白井さんの紹介だから、少し安くしておくよ。」
作業着の男性がそう言った。
「ありがとうございます。」
「ねぇ、渡会さん。良かったらうちで働かない?なんか急に忙しくなって事務のおばちゃんが人を増やせって文句を言ってるんだよ。白井さんから、けっこう働く子だって聞いてるし、事務所で経理をするだけでいいからさ。」
男性は凪に名刺を渡した。
「考えておきます。」
凪は話しをはぐらかすように笑った。
「そうだよね、新婚さんだっけ。こんな職場で働くなんて嫌か。」
「あの、もしそちらに勤めたら、私もその制服を着てもいいんですか?」
「もちろん。だけど、本音はもっとキラキラした所が憧れるんじゃないの?ピカピカの床でさ、おしゃれなオフィスで、コーヒーなんか飲んじゃって。うちはそういうの用意できないけど、もし良かったら、考えてみて。」
運転手は配達先の住所をもう一度確認すると、帽子を取って、凪に一礼してトラックに乗り込んだ。
凪は自分の車にもいくつかの荷物を積み込んで、渡会のもとへむかった。
渡会の待つ部屋に、荷物をひと通り部屋に入れ終えると、凪はストーブの前に座った。隣りに渡会がやってくる。
「けっこう切ったんだね。これから寒くなるっていうのに。」
渡会は凪の髪を触った。
「こんなに切ったのは初めてかも。」
「落ち着いたらさ、写真でもって思ってたのに。指輪も用意しなきゃって。」
「渡会くんって、そういうのこだわる人?」
「そうだね、やっぱり。凪が嫌なら、もう言わない。」
「ねぇ、今度の土曜日、一緒に診察についてきてほしいな。」
「いいけど、俺に聞かれてもいい事なの?」
「うん。一緒に話しを聞いてほしいから。」
土曜日。
診療所で順番を待っていると、何かをずっと喋っている大柄な男性が隣りに座った。手を擦り合わせたり、指でどこかを指していたり。そっか、ここは精神科なんだと改めて思うと、凪は渡会の腕をぎゅっと掴んだ。
男性の隣りに座っている母親らしき女性は、男性の話しに適当に返事をしている。突然、男性が凪の髪を触って口に入れようとした。
「あっ、ごめんなさい。」
男性の母親が男性の手を掴んで凪に謝った。男性は、母親の真似をして、ごめんなさいを繰り返している。
「もう謝らなくてもいいから。」
渡会が男性に言った。
診察室に入ると、女医はこの前の様に凪の方を見ていた。
「今日は彼氏と一緒に来たの?」
「はい、結婚しました。」
「そう、それはおめでとう。どう、体調は?」
女医は渡会の方を少し見た。
「先生、少し話してもいいですか?」
凪が言った。
「どうぞ。」
女医はペンを置いて凪を見た。
「この前、会社を辞めたんです。仕事はそんなに嫌じゃなかったんですけど、これ以上続けたくないって事があって。」
「もしかして、それがあなたを辛くさせてる原因なのかな?」
凪は渡会の顔を見た。
「旦那さんの前で話せる?」
「はい。もし、話しを聞いて渡会くんが私の事を嫌いになったら、先生、その時はもっと強い薬をください。」
「わかったよ。」
凪は話し始めた。
「上司に頼まれて、男性と会って食事をして、そのあとホテルに行きました。男性は奥さんがいる人だったけど、なんかちょっと変わってて、いろいろ要求してくるし、縛られた事も、首を絞められてもう死ぬかもって思った事もありました。そういう事をした後は、いつもお金をくれて、高価な洋服や宝石もくれました。」
「そう。それはあなたの意志ではなかったのよね。」
「そうですけど、男性を受け入れた事に変わりませんから。」
「内緒にしていれば良かったのに、なんで旦那さんに聞かせたの?」
「誰にも言えなくて、苦しくて死のうかなって思ってたけど、渡会くんがそこから逃がしてくれて。でも、渡会くんも男だから、きっとそういう事がしたいのかなって、」
凪がそこまで言うと、女医の渡会の顔を見た。
「旦那さんは、どう思う?」
女医は渡会の顔を見た。
少し考えていた渡会は、凪を見た後、女医に言った。
「どうしたらいいですか?」
渡会の言葉を聞いた女医は、ケタケタと笑った。
「まぁ、なかなかの答えね。奥さんは思い切って話してくれたのよ。それなのに、あなたはそれをそのまま返したのね。」
「俺にとって、渡会は渡会のままですから。」
渡会が言った。
「結婚したって、あなた達は同じ名前なのね。」
女医はまた笑ってカルテに書き込んだ。
「渡会さん、またいらっしゃい。今度はあなた一人で。手ごわい旦那さんに対抗する作戦を考えないとね。」
帰り道。
少し離れて歩いていた凪の前にきた渡会は、
「手、繋ぐか。」
そう言って凪の手を繋いだ。
「そんなに美味そうに見えたのかな、凪の髪の毛。」
「えっ?」
「あの人、ずっと団子の話しをしてだろう。」
「それって、私の髪の毛と関係ある?」
「団子の様に見えたんだろう。見え方なんて人それぞれだし。」
家に戻り、何時もの様にストーブの前に座っていると、渡会がペットボトルのお茶を持ってきて隣りに座った。
「あのソファは、いつになったら役割を果たすのかな。」
渡会が言った。
「そこは少し寒くて。」
「凪は寒がりだからな。」
渡会はペットボトルのふたを開けて、お茶を飲んだ。凪がふたを開けようとすると、渡会は貸してと凪のペットボトルを手に持った。
「その手には乗りません。」
凪は渡会が飲んでいたペットボトルを奪うと、口をつけてお茶を飲み始めた。
お茶を飲んで、ペットボトルのふたを閉めた凪は、
「大人になると、なんでも恥ずかしくなくなるね。」
そう言って下をむいた。
「凪。」
「ん?」
「まだ近くにいると緊張するのか?」
「そうだね、やっぱり好きな人だから。ちょっと触っただけで、苦しくなる。ごめんね、自分のしてきた事がすごく汚くて。」
「なぁ、次の休みに温泉でも行こうか。」
渡会はそう言って凪の髪の毛を触った。
砂埃の舞うグラウンドのフィールドで、体育祭の練習が始まると、サラサラと揺れるその茶色の髪を、ただぼんやり眺めた事を、今でも思い出していた。
引っ越しの前日。
大きな家具や電化製品は、白井がリサイクルショップへ持っていってくれた。
「白井さん、ちゃんとお礼をしたいんです。これで、焼肉でもしませんか?」
凪は白井に、リサイクルショップで換金したお金を渡した。
「結婚資金にでもすればいいじゃないか。」
白井はそう言ったが、
「食べてしまえば、何も残らなくなりますから。」
凪は白井にお金を委ねた。
白井と広川は平岡や羽田を呼んで、広川の家で焼肉をする事にした。
反抗期の高校生、広川の一人息子は、白井と平岡のペースに巻き込まれて、気をつかいながら広川の手伝いをしている。
「あんまり、母ちゃんを心配させんなよ。」
平岡が広川の息子に頻りにそう言っている。
「渡会さん、明日引っ越しなのにこんな事してて、本当にいいの?」
広川が凪に言った。
「私が白井さんに頼んだんです。」
凪は言った。
「じゃあ、今頃旦那は一人で荷造りか?」
平岡は広川の息子と肩を組んでいる。
「むこうを片付けているんだと思います。こっちの荷造りは終わりましたから。」
「ふ~ん。だいたいさ、順番が違うんじゃないの?先に籍入れて、あとからいろいろ準備をするって、なんかおかしな話しだよな。」
平岡は少し酔っていた。
「結婚なんて、何かのきっかけがないとできませんよ。昔みたいに、みんなするのが当たり前じゃないんだし、結婚したその先の事を考えると、不安で仕方なくなりますよ。どっかのタイミングで、その瞬間に何も考えずに籍を入れてしまうのが理想かも。」
羽田が言った。
「羽田さん、ずいぶん大人になったわね。」
広川は羽田を見て、肉を焼く手を少し止めた。
「朝、髪の毛振り乱して子供を預けにくるお母さんとか見てるとね、理想の人生を歩んでる人なんて、誰もいないんだなって、そう思います。」
「アハハ、本当にそうね。いろいろ計画を立ててもね、うまくいかない事だらけ。だけど人って計画を立てないと不安でたまらないのよね。」
広川は息子の皿に焼けたピーマンを入れた。
「いらないって。」
「いいから食べなさい。」
親子のやり取りを見ていた羽田は、周りがざわざわしたしたのを見計らって、凪の隣りに座った。
「渡会先輩、話したんですか?」
凪は羽田が言いたい事がわかる。
「まだ。」
「話せますか?」
「どうかな。」
「旦那さんはそういうの許せる人ですか?」
「それはわからない。でも、こういう事がなかったら、結婚なんて考えなかったかも。」
「思いつきの様で、けっこう策士ですね。先輩も旦那さんも。」
「むこうはね、そうかも。様子を伺っているようで、ちゃんと作戦を練ってるから。」
「バドミントンやってるんでしたっけ?」
「そう。」
「私もこの前平岡さんと一緒に練習に行ったんですけど、ああ見えてすぐに怒るから、帰りに喧嘩になりました。ラケットも靴も、お揃いで買ってくれたんですけどね。」
羽田の話しを聞いて、凪はプッと吹き出した。
「真姫ちゃんが平岡さんを動かせばいいじゃない。」
「やっぱり、そうですかね。けっこう腹立ちますよ、口ばっかりで、ぜんぜん動きませんから。ねぇ、いつか一緒にやりましょう。」
「そうね。」
朝早く、運送業者がやってきた。
最後までつけていた石油ストーブをトラックに積むと、ガランとした部屋の中で、凪は書類にサインを書いた。
「白井さんの紹介だから、少し安くしておくよ。」
作業着の男性がそう言った。
「ありがとうございます。」
「ねぇ、渡会さん。良かったらうちで働かない?なんか急に忙しくなって事務のおばちゃんが人を増やせって文句を言ってるんだよ。白井さんから、けっこう働く子だって聞いてるし、事務所で経理をするだけでいいからさ。」
男性は凪に名刺を渡した。
「考えておきます。」
凪は話しをはぐらかすように笑った。
「そうだよね、新婚さんだっけ。こんな職場で働くなんて嫌か。」
「あの、もしそちらに勤めたら、私もその制服を着てもいいんですか?」
「もちろん。だけど、本音はもっとキラキラした所が憧れるんじゃないの?ピカピカの床でさ、おしゃれなオフィスで、コーヒーなんか飲んじゃって。うちはそういうの用意できないけど、もし良かったら、考えてみて。」
運転手は配達先の住所をもう一度確認すると、帽子を取って、凪に一礼してトラックに乗り込んだ。
凪は自分の車にもいくつかの荷物を積み込んで、渡会のもとへむかった。
渡会の待つ部屋に、荷物をひと通り部屋に入れ終えると、凪はストーブの前に座った。隣りに渡会がやってくる。
「けっこう切ったんだね。これから寒くなるっていうのに。」
渡会は凪の髪を触った。
「こんなに切ったのは初めてかも。」
「落ち着いたらさ、写真でもって思ってたのに。指輪も用意しなきゃって。」
「渡会くんって、そういうのこだわる人?」
「そうだね、やっぱり。凪が嫌なら、もう言わない。」
「ねぇ、今度の土曜日、一緒に診察についてきてほしいな。」
「いいけど、俺に聞かれてもいい事なの?」
「うん。一緒に話しを聞いてほしいから。」
土曜日。
診療所で順番を待っていると、何かをずっと喋っている大柄な男性が隣りに座った。手を擦り合わせたり、指でどこかを指していたり。そっか、ここは精神科なんだと改めて思うと、凪は渡会の腕をぎゅっと掴んだ。
男性の隣りに座っている母親らしき女性は、男性の話しに適当に返事をしている。突然、男性が凪の髪を触って口に入れようとした。
「あっ、ごめんなさい。」
男性の母親が男性の手を掴んで凪に謝った。男性は、母親の真似をして、ごめんなさいを繰り返している。
「もう謝らなくてもいいから。」
渡会が男性に言った。
診察室に入ると、女医はこの前の様に凪の方を見ていた。
「今日は彼氏と一緒に来たの?」
「はい、結婚しました。」
「そう、それはおめでとう。どう、体調は?」
女医は渡会の方を少し見た。
「先生、少し話してもいいですか?」
凪が言った。
「どうぞ。」
女医はペンを置いて凪を見た。
「この前、会社を辞めたんです。仕事はそんなに嫌じゃなかったんですけど、これ以上続けたくないって事があって。」
「もしかして、それがあなたを辛くさせてる原因なのかな?」
凪は渡会の顔を見た。
「旦那さんの前で話せる?」
「はい。もし、話しを聞いて渡会くんが私の事を嫌いになったら、先生、その時はもっと強い薬をください。」
「わかったよ。」
凪は話し始めた。
「上司に頼まれて、男性と会って食事をして、そのあとホテルに行きました。男性は奥さんがいる人だったけど、なんかちょっと変わってて、いろいろ要求してくるし、縛られた事も、首を絞められてもう死ぬかもって思った事もありました。そういう事をした後は、いつもお金をくれて、高価な洋服や宝石もくれました。」
「そう。それはあなたの意志ではなかったのよね。」
「そうですけど、男性を受け入れた事に変わりませんから。」
「内緒にしていれば良かったのに、なんで旦那さんに聞かせたの?」
「誰にも言えなくて、苦しくて死のうかなって思ってたけど、渡会くんがそこから逃がしてくれて。でも、渡会くんも男だから、きっとそういう事がしたいのかなって、」
凪がそこまで言うと、女医の渡会の顔を見た。
「旦那さんは、どう思う?」
女医は渡会の顔を見た。
少し考えていた渡会は、凪を見た後、女医に言った。
「どうしたらいいですか?」
渡会の言葉を聞いた女医は、ケタケタと笑った。
「まぁ、なかなかの答えね。奥さんは思い切って話してくれたのよ。それなのに、あなたはそれをそのまま返したのね。」
「俺にとって、渡会は渡会のままですから。」
渡会が言った。
「結婚したって、あなた達は同じ名前なのね。」
女医はまた笑ってカルテに書き込んだ。
「渡会さん、またいらっしゃい。今度はあなた一人で。手ごわい旦那さんに対抗する作戦を考えないとね。」
帰り道。
少し離れて歩いていた凪の前にきた渡会は、
「手、繋ぐか。」
そう言って凪の手を繋いだ。
「そんなに美味そうに見えたのかな、凪の髪の毛。」
「えっ?」
「あの人、ずっと団子の話しをしてだろう。」
「それって、私の髪の毛と関係ある?」
「団子の様に見えたんだろう。見え方なんて人それぞれだし。」
家に戻り、何時もの様にストーブの前に座っていると、渡会がペットボトルのお茶を持ってきて隣りに座った。
「あのソファは、いつになったら役割を果たすのかな。」
渡会が言った。
「そこは少し寒くて。」
「凪は寒がりだからな。」
渡会はペットボトルのふたを開けて、お茶を飲んだ。凪がふたを開けようとすると、渡会は貸してと凪のペットボトルを手に持った。
「その手には乗りません。」
凪は渡会が飲んでいたペットボトルを奪うと、口をつけてお茶を飲み始めた。
お茶を飲んで、ペットボトルのふたを閉めた凪は、
「大人になると、なんでも恥ずかしくなくなるね。」
そう言って下をむいた。
「凪。」
「ん?」
「まだ近くにいると緊張するのか?」
「そうだね、やっぱり好きな人だから。ちょっと触っただけで、苦しくなる。ごめんね、自分のしてきた事がすごく汚くて。」
「なぁ、次の休みに温泉でも行こうか。」
渡会はそう言って凪の髪の毛を触った。
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