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10章
影踏み
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大きな月は長い影を作る。夜なのにやけに明るい。
繁華街のネオンライトは、小さな星の光りを、何もなかった様に隠してしまった。
紗織の歓迎会の日。
キレイで独身の紗織の周りには、若い教師達が囲んでいた。相変わらず溢れるようなその笑顔には、誰もが惹きつけられている。
優里が欠けていく月だとすれば、紗織はいつも輝いている太陽なのかもしれない。昼間に出ている間抜けな月と、雲さえも邪魔に感じさせる太陽は、同じ空に浮かんでいるのに、ぜんぜん違う光りを放つ。
離婚しているなら、もっと早くに会いたかった。優里といる事が当たり前になってきて、好きだという言葉も言えないまま、これからも一緒にいるのかと思っていたけれど、紗織と再会して、あの頃に感じた青い気持ちを、少しずつ思い出していた。
「中嶋くん、送ってよ。」
紗織は自分と同じタクシーに乗ってきた。
「行かなくてもいいのか?」
中嶋は3次会に行こうとする集団の方を見た。
「少し疲れたの。」
紗織はそう言って、中嶋との距離を縮めた。
「がっかりしたでしょう。盛大に結婚式をやってバツイチになったから。」
紗織は中嶋の顔を見た。
「いろいろあったんだろう。他人が口を出す事じゃないよ。」
「高校の頃は良かったなぁ。なんのしがらみもなかったし。中嶋くん、結婚なんてするもんじゃないね。」
「俺はした事がないから、よくわかんないけど。」
「そうだね、これから結婚しようとする人に、そんな事言ったらダメだったね。」
紗織はそう言って少し笑った。
「学校、慣れたか?」
「うん。保健室って、けっこう独特。」
「お父さんは喜んだだろう?松井が自分と同じ先生になってくれて。」
「そうだね。母も先生だったし、兄もそうだし、普通の会社員になった時は、すごくがっかりしてた。」
「教師は松井の天性なんじゃないか。」
「それはどうかな。会社員の時もすごく楽しかった。」
紗織の実家に着くと、
「少し寄って行かない?今日は誰もいないの。」
紗織はそう言ってタクシーを帰した。
「コーヒーでも入れるね。」
紗織は中嶋を居間へ案内した。
「松井、俺さ、」
中嶋は優里の事を言い掛けたが、紗織はお湯が湧く音で、何も聞こえなかったと言った。
「どうぞ。」
紗織はコーヒーを置くと、中嶋の隣りに座った。
「和哉、会社の子と浮気しててね。」
紗織が言った。
「そうだったのか。」
紗織の手の甲にポトリと落ちた涙の雫を見て、中嶋は紗織の肩に手を置いた。
「いろいろあったんだな。」
そう言うと、紗織は中島の胸に飛び込んだ。
「中嶋くんにすれば良かったな。」
背中に回した紗織の手は、とてもか弱かった。
「松井、俺、ずっと好きだったんだ。」
中嶋はそう言って紗織を見つめると、
「私も、好きだった。」
紗織がそういった。
心のどこかで、優里の悲しい目が自分を見つめている気がしたけれど、ただ素直に感情を伝える紗織といる方が、居心地が良かった。
紗織が自分の家に泊まる様になると、優里とは全く連絡を取らなくなった。優里からの連絡もなくなった。
月が欠けていっている事には気づいていたが、自分の気持ちが満たされていると、優里と会う理由がなくなった。
優里はバイトを辞め、1日中何もしないで過ごしている日が続くと、今日が何曜日だったのかも忘れた。
中嶋からは連絡が来なくなった。
新月になっても、会いに来てもくれない。
中嶋に他に好きな人ができたのか、それとも自分の事を嫌いになったのか、そんな事を考えては、辛くなって、別の事を考えた。答えが出なければ、そのまま流せばいい事なんだし。
いつの間にか、鼻血も出なくなっていた。もう、中島に会う理由なんてないんだ。
玄関のチャイムがなった。
優里は恐る恐る覗き窓を見ると、ドアの向こうにバイト先の店長が立っていた。
「ごめん、自宅まで押しかけて。」
「どうしたんですか?」
優里は店長を部屋に入れた。
「コーヒーでも入れてくれるかい?」
「いいですよ。」
「バイトやめて、毎日、何してるの?」
「何もしてません。ゴロゴロしてます。」
優里はコーヒーを店長の前に出した。
「インスタントですけど。」
「いや、ありがとう。いただくよ。」
「今日は休みですか?」
優里はカレンダーを見た。
「店は休んだんだ。」
「店長?」
「涼真と妻が浮気をしててね。自分の子だと思っていた次女は、実は涼真の子だった。」
肩を落とした店長に、優里は何も言えなかった。
「先週、下の子を連れて2人は出ていったよ。俺は実家に長女を預けて、店を続けたんだけど、どうにもこうにも、うまく回らなくってね。佐伯ちゃん、新しい人が見つかるまで、店に戻ってきてくれないか。」
「もちろんですよ。店長さんにはたくさんお世話になったから。」
泣き崩れる店長の背中は、広いはずなのに、とても小さく見える。小刻みに震えるその背中にそっと手を置いて、
「明日から、行きますね。」
優里はそう言った。
店長が帰った後、コップを洗いながら優里は思っていた。何か心を奪われる薬を口にすると、何見えなくなるんだね。
中嶋が自分にくれた薬は、いい加減効果がなくなってもいいのに。
優里はカーテンを開けると、丸になりきれない不格好な月を見上げた。
月が欠けていくのは、地球の影になっているから、仕方ないんだよ。見えないと思っているの部分だって、本当は形がしっかりあるはずなのに、見ている人は、欠けているものだと、勝手に思い込んでいるだけ。
3月。
優里は大学を卒業した。
何度も断ったのに、母は記念だからと言って、卒業式に袴を用意した。
「ほら、やっぱりみんな袴を着てたでしょう。」
優里は両親の大きな声が恥ずかしかった。
「雪が降るから、早く帰った方がいいよ。」
卒業式が終わった後、優里は両親を見送った。
部屋に戻って髪を解き、軽くなった頭にガリガリと櫛を入れた。
来週このアパートを出て、隣り町へ引っ越す。
中嶋との思い出が溢れるものは、みんな捨ててしまおうと思うと、部屋はいつの間にかゴミ袋の山になった。思い出に浸ろうとする情けない感情も、みんなゴミに出してやる。
中嶋は引っ越しの準備をしていた。
2月に隣り町の中学校への転勤を言われてから、毎日が慌ただしかった。
代用教員の延長が決まった紗織は、実家を出て、学校の近くにアパートを借りた。お互いのアパートを行き来するようになっていたが、中嶋の転勤が決まってからは、紗織と会う回数が減っていった。
誰もいないのを見計らって、中嶋は保健室のドアを開けた。
「今日は会えない?」
中嶋は紗織に言った。
「ごめん、友達が来るから。」
素っ気ない紗織の態度で、中嶋は紗織の気持ちが、自分から離れているのがわかった。
「そっか。」
「中嶋くん、転勤するんでしょう?」
「そうだけど。」
「私ね、離れて暮らすのって、すごく不安なの。自信がない。」
優里はそう言うと、プリントを持って保健室を出ていった。
浮かれていた自分が情けなかった。
転勤なんか、別れる理由にならないじゃないか。
紗織は自分を認めてくれる人が、いつも近くにいないと、苦しくなる女なんだ。少しずつ枯渇していった好き言う言葉は、本当の自分を映す川底で、嘘となってユラユラと揺れている。
今更、優里と会うつもりもない。裏切ったのは、俺の方だ。
恋愛なんか、俺には初めから、無理だったんだよな。
繁華街のネオンライトは、小さな星の光りを、何もなかった様に隠してしまった。
紗織の歓迎会の日。
キレイで独身の紗織の周りには、若い教師達が囲んでいた。相変わらず溢れるようなその笑顔には、誰もが惹きつけられている。
優里が欠けていく月だとすれば、紗織はいつも輝いている太陽なのかもしれない。昼間に出ている間抜けな月と、雲さえも邪魔に感じさせる太陽は、同じ空に浮かんでいるのに、ぜんぜん違う光りを放つ。
離婚しているなら、もっと早くに会いたかった。優里といる事が当たり前になってきて、好きだという言葉も言えないまま、これからも一緒にいるのかと思っていたけれど、紗織と再会して、あの頃に感じた青い気持ちを、少しずつ思い出していた。
「中嶋くん、送ってよ。」
紗織は自分と同じタクシーに乗ってきた。
「行かなくてもいいのか?」
中嶋は3次会に行こうとする集団の方を見た。
「少し疲れたの。」
紗織はそう言って、中嶋との距離を縮めた。
「がっかりしたでしょう。盛大に結婚式をやってバツイチになったから。」
紗織は中嶋の顔を見た。
「いろいろあったんだろう。他人が口を出す事じゃないよ。」
「高校の頃は良かったなぁ。なんのしがらみもなかったし。中嶋くん、結婚なんてするもんじゃないね。」
「俺はした事がないから、よくわかんないけど。」
「そうだね、これから結婚しようとする人に、そんな事言ったらダメだったね。」
紗織はそう言って少し笑った。
「学校、慣れたか?」
「うん。保健室って、けっこう独特。」
「お父さんは喜んだだろう?松井が自分と同じ先生になってくれて。」
「そうだね。母も先生だったし、兄もそうだし、普通の会社員になった時は、すごくがっかりしてた。」
「教師は松井の天性なんじゃないか。」
「それはどうかな。会社員の時もすごく楽しかった。」
紗織の実家に着くと、
「少し寄って行かない?今日は誰もいないの。」
紗織はそう言ってタクシーを帰した。
「コーヒーでも入れるね。」
紗織は中嶋を居間へ案内した。
「松井、俺さ、」
中嶋は優里の事を言い掛けたが、紗織はお湯が湧く音で、何も聞こえなかったと言った。
「どうぞ。」
紗織はコーヒーを置くと、中嶋の隣りに座った。
「和哉、会社の子と浮気しててね。」
紗織が言った。
「そうだったのか。」
紗織の手の甲にポトリと落ちた涙の雫を見て、中嶋は紗織の肩に手を置いた。
「いろいろあったんだな。」
そう言うと、紗織は中島の胸に飛び込んだ。
「中嶋くんにすれば良かったな。」
背中に回した紗織の手は、とてもか弱かった。
「松井、俺、ずっと好きだったんだ。」
中嶋はそう言って紗織を見つめると、
「私も、好きだった。」
紗織がそういった。
心のどこかで、優里の悲しい目が自分を見つめている気がしたけれど、ただ素直に感情を伝える紗織といる方が、居心地が良かった。
紗織が自分の家に泊まる様になると、優里とは全く連絡を取らなくなった。優里からの連絡もなくなった。
月が欠けていっている事には気づいていたが、自分の気持ちが満たされていると、優里と会う理由がなくなった。
優里はバイトを辞め、1日中何もしないで過ごしている日が続くと、今日が何曜日だったのかも忘れた。
中嶋からは連絡が来なくなった。
新月になっても、会いに来てもくれない。
中嶋に他に好きな人ができたのか、それとも自分の事を嫌いになったのか、そんな事を考えては、辛くなって、別の事を考えた。答えが出なければ、そのまま流せばいい事なんだし。
いつの間にか、鼻血も出なくなっていた。もう、中島に会う理由なんてないんだ。
玄関のチャイムがなった。
優里は恐る恐る覗き窓を見ると、ドアの向こうにバイト先の店長が立っていた。
「ごめん、自宅まで押しかけて。」
「どうしたんですか?」
優里は店長を部屋に入れた。
「コーヒーでも入れてくれるかい?」
「いいですよ。」
「バイトやめて、毎日、何してるの?」
「何もしてません。ゴロゴロしてます。」
優里はコーヒーを店長の前に出した。
「インスタントですけど。」
「いや、ありがとう。いただくよ。」
「今日は休みですか?」
優里はカレンダーを見た。
「店は休んだんだ。」
「店長?」
「涼真と妻が浮気をしててね。自分の子だと思っていた次女は、実は涼真の子だった。」
肩を落とした店長に、優里は何も言えなかった。
「先週、下の子を連れて2人は出ていったよ。俺は実家に長女を預けて、店を続けたんだけど、どうにもこうにも、うまく回らなくってね。佐伯ちゃん、新しい人が見つかるまで、店に戻ってきてくれないか。」
「もちろんですよ。店長さんにはたくさんお世話になったから。」
泣き崩れる店長の背中は、広いはずなのに、とても小さく見える。小刻みに震えるその背中にそっと手を置いて、
「明日から、行きますね。」
優里はそう言った。
店長が帰った後、コップを洗いながら優里は思っていた。何か心を奪われる薬を口にすると、何見えなくなるんだね。
中嶋が自分にくれた薬は、いい加減効果がなくなってもいいのに。
優里はカーテンを開けると、丸になりきれない不格好な月を見上げた。
月が欠けていくのは、地球の影になっているから、仕方ないんだよ。見えないと思っているの部分だって、本当は形がしっかりあるはずなのに、見ている人は、欠けているものだと、勝手に思い込んでいるだけ。
3月。
優里は大学を卒業した。
何度も断ったのに、母は記念だからと言って、卒業式に袴を用意した。
「ほら、やっぱりみんな袴を着てたでしょう。」
優里は両親の大きな声が恥ずかしかった。
「雪が降るから、早く帰った方がいいよ。」
卒業式が終わった後、優里は両親を見送った。
部屋に戻って髪を解き、軽くなった頭にガリガリと櫛を入れた。
来週このアパートを出て、隣り町へ引っ越す。
中嶋との思い出が溢れるものは、みんな捨ててしまおうと思うと、部屋はいつの間にかゴミ袋の山になった。思い出に浸ろうとする情けない感情も、みんなゴミに出してやる。
中嶋は引っ越しの準備をしていた。
2月に隣り町の中学校への転勤を言われてから、毎日が慌ただしかった。
代用教員の延長が決まった紗織は、実家を出て、学校の近くにアパートを借りた。お互いのアパートを行き来するようになっていたが、中嶋の転勤が決まってからは、紗織と会う回数が減っていった。
誰もいないのを見計らって、中嶋は保健室のドアを開けた。
「今日は会えない?」
中嶋は紗織に言った。
「ごめん、友達が来るから。」
素っ気ない紗織の態度で、中嶋は紗織の気持ちが、自分から離れているのがわかった。
「そっか。」
「中嶋くん、転勤するんでしょう?」
「そうだけど。」
「私ね、離れて暮らすのって、すごく不安なの。自信がない。」
優里はそう言うと、プリントを持って保健室を出ていった。
浮かれていた自分が情けなかった。
転勤なんか、別れる理由にならないじゃないか。
紗織は自分を認めてくれる人が、いつも近くにいないと、苦しくなる女なんだ。少しずつ枯渇していった好き言う言葉は、本当の自分を映す川底で、嘘となってユラユラと揺れている。
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