実はお互いさまでした。

黒井かのえ

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隆志は臨機応変

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 周のものを口にしながら、指をじわじわと奥まで挿れていく。
 内側の柔らかさを感じて、ひどく昂ぶっていた。
 いつものようにお互いのものをしごきあっているわけではない。
 それなのに、隆志のものからは、とろとろと滴が勝手に溢れている。

 唇を巻きこみつつ、口を上下に動かした。
 舌から周の熱が伝わってくる。
 つられるように、後ろが小さな収縮を繰り返していた。
 それにも、なにか興奮してしまう。

 くるんと指を回し、中を探る。
 ネットで調べたのは、男性の快感を呼び起こさせる手法。
 いろいろあったけれど、その中で印象に残ったのがこれだ。

 人によって、快楽の度合いに差があるらしかったけれど試してみようと思った。
 もしいいほうに転がれば、周に今までよりずっと大きな快楽を与えられる。
 そもそもは、そう考えてのことだった。
 とはいえ、今はそれだけではなくなっている。

 隆志自身も周の内側にふれていることで快楽を得ていた。
 ものすごく特別な行為を許されている気持ちになる。

「っく……ぁ……あぁ………ぅ……っん……」

 周のこんな声も初めて聞いた。
 泣きそうにしかめられた顔も、あえぎ声も隆志にとって初めてのことばかりだ。

 自分だけが周の乱れる姿を見ている。

 それが嬉しくてたまらない。
 指を押し込んでは浅い場所まで戻した。
 引き戻す時に内側が指にまとわりついてくるような感触を覚える。
 きゅっとそこが指を締めつけてくるのも、かわいいと思った。
 中をなぞりながら抜き差しを繰り返す。

「うう……っんぁ!」

 急に周が声をあげた。
 指も強く締めつけられている。
 口の中では周のものがびくびくとひきつり、硬さを増していた。
 にわかに落ち着かない気分になってくる。
 今の場所が「当たり」なのではないかと思ったからだ。

 男性特有の感じる場所。

 そこは前と直結していて、内側から刺激を与えられるのだという。
 隆志は、そうっと指を押し当ててみた。

「ひっ……あぁっ……ん……っぐ……っ!」

 他の場所より少し硬くて、こりこりとした感触がある。
 周を感じさせるための行為というだけではなく、夢中になった。

 注意深く、けれど、指で何度もその場所をこする。
 その度に周のものが口の中で反り返った。
 すべての反応にぞくぞくする。

 きつく閉じられた目。

 まつげは頼りなく揺れていて、うっすらと涙が浮かんでいるのさえ見えた。
 上気した頬と、薄く開いた唇が色っぽいと思う。
 はっはっという短い呼吸を繰り返す吐息も熱を帯びている気がした。

「ぁ、あ……も、もう……そこ……やめ……っ……た、隆志……っ」

 胸がどきどきする。
 周の切羽詰まったような声には、わずかに懇願の色が混じっていた。
 些細なこと以外で自分に頼みごとをする周なんて見たことがない。
 ましてや泣きそうな声ですがってくるとは想像すらしていなかった。

 今までカッコいいとかきれいだとかは思ってきた。
 けれど、目の前の周はかわいくてたまらない。
 自分の舌や指の動きに翻弄され、泣きそうになっている。

 内側をこりこりとこすりながら、周のものを強く吸った。
 舌を先端のくぼみにもぐらせる。
 瞬間、周の下腹が大きくひきつった。

 見上げた視界の中、周がぱたぱたっと涙をこぼす。
 初めて見た泣き顔は、ものすごくかわいらしくて隆志の胸を熱くした。
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