実はお互いさまでした。

黒井かのえ

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周が決めたこと

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「良かった! ホントーっに良かった! 良かったよぉ」

 すりすりすりと隆志が背中に顔をすりつけていた。
 半月ぶりにある隆志の体温に胸がほっこりしている。
 納まるべきところに納まったという感じがした。
 窮屈なくらいのベッドが自分達にはちょうどいいのだ。

「ちっと体離せ」
「なんで? 寒いんだから、くっついてようよ」
「あのな、そっち向きたくて言ってんだから離せ」

 納得したのか隆志が体を離す。
 周は気恥ずかしさを押し隠して、隆志のほうへと寝返りを打った。

「なぁなぁ、がんちゃん……オレら、恋人同士になったんだよな?」
「だったら、なんだよ?」
「ぎゅーってしていい?」

 さわさわと隆志が周の腕を撫でてくる。
 抱きしめる以上のことがしたくなっているくせにと思った。

「お前、ナニ勃たせてんだ」
「だって……がんちゃんと恋人なんだって思ったら……勃った」

 ぷっと小さく笑う。
 隆志があまりにも素直なので、気恥ずかしさも薄らいでいた。
 電気を消していて、部屋が暗かったことも良かったのかもしれない。
 周は手を伸ばして隆志の頬にふれながら、そろりと言った。

「なぁ……エッチさせてやろうか?」
「えっ!? さ、さしてくれんのっ!?」
「まぁ、恋人だし」

 ばくばくばくと、心臓が大きく波打ってくる。
 隆志のものが太腿に当たっていて、非常に具合が悪い。
 隆志はいっこう気にしていないらしかったけれど、周は気になった。
 するとなれば、自分が受け身になるのだろうと思っているからだ。

「したい……がんちゃん……オレ、がんちゃんとエッチしたい」

 暗闇でも隆志が欲望で一杯の瞳に自分を映しているのがわかる。

「エッチありきでつきあう気ねぇとか言ってたくせに」
「そ、それは……相手ががんちゃんじゃない時の話だもん。がんちゃんとだったらエッチしたい。チューもしたい。いろいろ一杯エロいことしたい」

 隆志の熱い息が首筋にかかっていた。
 いつの間にかずいぶんと間合いを詰められている。

「チューの前にエッチが先かよ。お前、オレのことエロ目線で見過ぎじゃねぇの?」
「もお……がんちゃん……お願い……あんま……じ、焦らすのやめてくんない?」
「なら、こっち先な」

 指でふれつつ、自分の唇を隆志の唇に重ねた。
 すぐに隆志が強く押しつけてくる。
 自然とお互いに口を開いて、舌をからませた。
 しごき合っていた仲ではあるけれど、キスをするのは初めてだ。

 幼馴染みという関係だけではキスなんてしない。

 巻きついてくる隆志の舌に、恋人になった実感がわいてくる。
 隆志も同じだったのかもしれない。
 口の中をあちこち舐めてくる舌の動きには遠慮のエの字もなかった。
 歯の裏側から上顎まで舌でなぞられ、ぴくんと周のものが反応する。

「ん……がんちゃ……好き……大好き……」

 言葉に背筋がぞくりとしびれた。
 隆志を強く抱きしめると、そのまま体を下にされる。
 小さく、ははっと笑った。
 
 やはり受け身になるしかない。

 隆志は自分が受け身になることなんて考えてもいないはずだからだ。
 そして、隆志からお願いと言われると拒絶できないのもわかっている。
 大きな体で甘えてくる隆志がかわいい。
 ここまで甘やかしてきたのだから、これからも甘やかしていくしかないのだろう。

「がんちゃん……好き、好き、好き……大好き、一番好き……全部オレのもん……」

 顔と言わず首筋から耳の裏までキスされて、やはり隆志は犬のようだと周は思った。
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