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誘拐計画(仮)
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…麻実視点…
入院生活1か月が過ぎたある日、昼食を済ませて間もなく病室にノック音が響いた。
「どうぞ。」
静かに開けられた引き戸の奥には、黒髪をポニーテールに縛り上げた若い女性が立っていた。
「失礼します。」
軽く頭を下げた女性に座るように手で促すと、女性は病室の扉を閉めて丸椅子の側にまで来た。そしていきなり床に膝をついた。
「……?」
思いがけない動きに、女性の肩が椅子にぶつかりそうで、私は思わず椅子を手前に引き寄せた。
「いきなり訪ねてしまってすみません。」
「……いえ、あなたは?」
「私は……橘リサ。ずっと援助頂いていたとお伺いしています。」
「……リサちゃん……?」
私はリサちゃんとの再会に、もう一度椅子に促した。
すると今度は立ち上がって、従うように丸椅子に腰かけた。
「……改めて、リサの交代人格、名を影子と言います。」
「……はい?」
聞き馴れない言葉に顔を引きつらせると、影子と名乗ったリサちゃんは淡々と話し始めた。
「この体は、解離性同一性障害という症状と共存して生活しています。この症状はひとつの体に複数の人格が形成されてしまうことで生活に弊害が生じるといわれています。一つの体で人格が交代し、全く別の性格の人間が活動するからでしょう。」
複数の人格……?そんなオカルトな話に私は怪訝な顔をしてしまったのか、彼女はクスッと笑った。そして、一枚の診断書を私に手渡した。
そこには、多くの精神病の診断の中に先ほど彼女が言った解離性同一性障害の字が並んでいた。
「失礼な反応をしてしまったのは謝るわ。」
「いいえ、平均的な反応ですよ。私も本来リサの一部だったはずですから、おかしいと思うのは当たり前です。」
その話し方は赤裸々なのに全く悲しさが沸き出ていない、まるでリサちゃんの悲しみに全く関りがなかったかのように見えた。
本当にリサちゃんが消えてなくなってしまったかのようにすら思える。
「じゃ、仮にリサちゃんは一体どこにいるの?」
「ここで眠っています。」
影子ちゃんは自分の胸を掌で2回優しく叩いた。
それは小さな子供をあやすような手ぶりで、私は複雑ながらも影子ちゃんの話の続きを聞くことにした。
「リサは今、ほとんど夜にしか活動ができないほど精神的に疲弊しています。」
「リサちゃんが……?」
「リサは……あの施設で性被害にあって、正当防衛で男の脇腹に包丁を刺してしまったんです。」
「ッ?」
あまりの話に息を詰まらせると、影子ちゃんは深い息を吐き出した。
影子ちゃんの表情はみるみる険しくなり、両こぶしを握り締めた。
「私が初めてリサと交代できたのはまさにその瞬間でした。私は目の前に横たわる男と握った包丁を見て状況を把握して、まだ息のある男を目が合って……あとは必死に包丁を振り下ろしたんです。」
吐き出す息とともに話す姿は、黒い感情を必死に体から押し出そうとしているようで、私は思わず、その拳に手を置いた。
「私は人殺しです。だから……あの子はッ、リサは何もやってないんです、やったのはすべて私だから。」
「落ち着いて、影子ちゃん!」
「ッ?!」
入院生活1か月が過ぎたある日、昼食を済ませて間もなく病室にノック音が響いた。
「どうぞ。」
静かに開けられた引き戸の奥には、黒髪をポニーテールに縛り上げた若い女性が立っていた。
「失礼します。」
軽く頭を下げた女性に座るように手で促すと、女性は病室の扉を閉めて丸椅子の側にまで来た。そしていきなり床に膝をついた。
「……?」
思いがけない動きに、女性の肩が椅子にぶつかりそうで、私は思わず椅子を手前に引き寄せた。
「いきなり訪ねてしまってすみません。」
「……いえ、あなたは?」
「私は……橘リサ。ずっと援助頂いていたとお伺いしています。」
「……リサちゃん……?」
私はリサちゃんとの再会に、もう一度椅子に促した。
すると今度は立ち上がって、従うように丸椅子に腰かけた。
「……改めて、リサの交代人格、名を影子と言います。」
「……はい?」
聞き馴れない言葉に顔を引きつらせると、影子と名乗ったリサちゃんは淡々と話し始めた。
「この体は、解離性同一性障害という症状と共存して生活しています。この症状はひとつの体に複数の人格が形成されてしまうことで生活に弊害が生じるといわれています。一つの体で人格が交代し、全く別の性格の人間が活動するからでしょう。」
複数の人格……?そんなオカルトな話に私は怪訝な顔をしてしまったのか、彼女はクスッと笑った。そして、一枚の診断書を私に手渡した。
そこには、多くの精神病の診断の中に先ほど彼女が言った解離性同一性障害の字が並んでいた。
「失礼な反応をしてしまったのは謝るわ。」
「いいえ、平均的な反応ですよ。私も本来リサの一部だったはずですから、おかしいと思うのは当たり前です。」
その話し方は赤裸々なのに全く悲しさが沸き出ていない、まるでリサちゃんの悲しみに全く関りがなかったかのように見えた。
本当にリサちゃんが消えてなくなってしまったかのようにすら思える。
「じゃ、仮にリサちゃんは一体どこにいるの?」
「ここで眠っています。」
影子ちゃんは自分の胸を掌で2回優しく叩いた。
それは小さな子供をあやすような手ぶりで、私は複雑ながらも影子ちゃんの話の続きを聞くことにした。
「リサは今、ほとんど夜にしか活動ができないほど精神的に疲弊しています。」
「リサちゃんが……?」
「リサは……あの施設で性被害にあって、正当防衛で男の脇腹に包丁を刺してしまったんです。」
「ッ?」
あまりの話に息を詰まらせると、影子ちゃんは深い息を吐き出した。
影子ちゃんの表情はみるみる険しくなり、両こぶしを握り締めた。
「私が初めてリサと交代できたのはまさにその瞬間でした。私は目の前に横たわる男と握った包丁を見て状況を把握して、まだ息のある男を目が合って……あとは必死に包丁を振り下ろしたんです。」
吐き出す息とともに話す姿は、黒い感情を必死に体から押し出そうとしているようで、私は思わず、その拳に手を置いた。
「私は人殺しです。だから……あの子はッ、リサは何もやってないんです、やったのはすべて私だから。」
「落ち着いて、影子ちゃん!」
「ッ?!」
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