誘拐記念日

４、

自首④

～影子視点～
私は置き手紙を残し、市の警察署に足を運んでいた。
窓口では私の姿に気がついた女性警察官が立ち上がった。
「こんにちは、どうされましたか？」
「自首に来ました。」
その一言で、目の前の女性警察官だけでなく窓口内の全ての警察官がこちらに視線を向けた。
「……なんの自首ですか？」
「直近のもので言うと、誘拐です。他にも余罪ってものがありますので逮捕をお願いします。」
窓口から出てきた警察官は私一人に対して5人、私はなかなかの厳重警備で部屋に案内された。
しばらくすると、荒々しいノックが聞こえてすぐに男性と女性が入ってきた。
「こんにちは、捜査一課の村田と言います。」
「同じく中村です。」
「初めまして。橘です。」
私が丁寧に挨拶を返すと、女性警察官は記録の席に男性警察官は私の前に座った。
「それじゃ、話を聞こうか。生憎、君に対しての届けは出ていないみたいだったよ。」
「やっぱりそうですか……」
「やっぱり？」
「被害者は今自宅にいます。」
「……ん？」
警察官は眉間に皺を寄せた。
「解放したってことかな？」
「はい。」
「ほぉ……どうして？」
「必要が無くなったからです。」
「そうか……誘拐したのは誰だい？」
私は淡々と聞かれたことに答えて、男性警察官だけでなく女性警察官まで首を傾げていた。

「なるほど……誘拐の件はわかった。次は余罪になるかもしれないという件も聞こうか。」
「分かりました。8年ほど前、私は男性を殺しています。」
その一言は部屋の空気を一瞬で凍らせた。
「殺しか……なぜ？」
「性的暴行を与えられそうになって、身の危険を感じたので包丁で何度も刺しました。」
「ッ……ご遺体は？」
「山に運んで埋めまッ……いッ…！！」
その時、私は意識の中に引き込まれそうになった。
頭の中でリサが起きた声がする。リサは私が罪を請け負うことをどうしても認めないつもりだった。分かってはいてもここではあまりにタイミングが悪すぎる。
体の自由がなくなり机に突っ伏した。

～リサ視点～
「橘さん？！」
男性の声で目を覚ますと、私は身に覚えのない部屋に座っていた。当たりを見渡すと、白塗りの壁に扉の近くには机に向かう女性、そして目の前には向かい合って座る男性がいた。この光景は……まるでテレビで見た部屋だった。
「ッ……あ……何で……。」
「どうしました？」
「私……ッ、殺したのは私です！！影子さんじゃありません！！影子さんは私を庇ってるだけです！！」
「影子さんというのは？」
「私の……私の交代人格です……。」