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復讐のハジマリ

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「貴様!!危ないだろ!」
「ッ!?」

上から雷のように落ちてきた声に思わず顔を上げるとさっきの暴れ馬から見下ろす、男性がいた。

「全く……。 俺の馬が穢れた。よく洗え。」
「はッ。」

……穢れた?

「俺の邪魔をしおって。」
「なッ……!!」

邪魔!?

俺が睨みをきかせた視線はその男には届かなかった。
その男は他の馬に乗り替わると飄々とした姿でその場から去ろうとしていた。

「……殺してやる……。」

「……そなた……何か言ったか?」
そういう言葉だけ聞こえる便利な耳の男は、馬に乗ったまま振り返った。

「てめぇ!!殺してやる!!よくもッ!!……よくも……!!」

クソ……なんで……。
まるで喉に何かの塊が詰まったかのように、声が出てこない。
「はっ、くずの分際でこの俺に盾突くとは。やれるものならやってみるといい。」

「ふざッ!?」
まだ言いたい言葉が残っていたのに、その有り余った口は誰かの手によってふさがれた。

「……このモノを屋敷に連れていけ。」
「ッ!?」

背後から聞こえた声でその手は俺の体を持ち上げてどこかに運び始めた。

それと同時に俺の中の恐怖の感情が湧き始めて、俺はなおさら声も出せずその手の赴くまま体を預けた。




いつの間にか俺の体は縄で縛られ、一番奥の部屋に通された。

そこには、高貴そうな男が座っていた。
「……あんた誰だ。」
「俺の名は劉 権ユ・ゴン。都の長だ。そなたの名は?」

「俺はサンです。」
「……あの亡くなったものは……「俺の妹です。」……そうであったか。」

そう言って、劉は俺の前に一つの櫛を見せた。

「……妹のの形見となるだろう。」
「ありがとうございます。」

劉は少し難しい顔をしてみせるとニヤリと口角を上げた。

「燦。お前はあの方を恨むか?」
「えぇ……当たり前です。」
俺は怒りで震える声を抑えて答えた。

「……ならば、そなたは世子妃となれ。」
「……はい?」

「そして、あの方……ファン世子せじゃを殺せ。」
劉の目は怪しく光って見えた。

「あなたの目的は何ですか?」
「目的か……そうだな……。この国の王にでもなろうか。」

しかしあの者の名を知った俺の目には一寸の迷いもなかった。

そしてこの時、俺と劉氏の契約は成立された。
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