動機 ~私を殺人鬼にする10のこと~

木継 槐

文字の大きさ
7 / 11
畏怖と軽率の出会い

6.

しおりを挟む
華弥子のやっと出した声も聞き入れず、リーダーは大きな口で罵声を浴びせる。
季依よりも反応が良い華弥子が面白くてたまらないのだろう。

「離してあげたら?」
「はぁ?指図してくるとか何様なんだけど!」
「立場ってものわきまえなさいよね!!」
季依の一言の注意にも、金魚の糞がワーワー言い返す。
「やめてあげて。この子の言うとおり、ね~優等生ちゃん?」
華弥子は手を離されて瞬間にうずくまってすすり声をあげだした。
それに満足したのか、加害者たちはずらずらとクラスを出ていった。またいつものサボリだろう。
あたりを見渡すとすでに2人以外の人影はなくなっていた。

「もう行ったわ。」
「そう。」
顔を上げた華弥子は何の心の機微も感じないほど無表情になっていた。
「今日は一段とつまらなかったわ。」
「今夜に楽しみが残ってると思えばいいでしょ?」
「そうね!!」
そして、季依の一言に表情を変えてにっこり微笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その夜、2人の構想は現実のものとされることになった。
女子のリーダーのもとに一通のチャットが届く。
差出人の名は『明智季依』。
内容は『あなたの秘密を知っている。ばら撒かれたくなければ、ショッピングモールビルの屋上にきて。』といったものと、情報のURLだった。
リーダーはそのURLを開き、悲鳴前のように息を吸った。

そして、スマホ片手で家を飛び出し、指定場所の屋上に走った。
扉を開けると、すでに季依が一人で立っていた。
「明智、何のつもり?」
「へぇ、来てくれたんだ。」
「答えなさいよ!」
「チャットの通りだけど。」
「脅迫?無駄よ!!私のママはここのビルのオーナーなんだから!私の身に何かあればすぐにあんたたちを追い掛け回す。」
「それで?」
季依が飄々と受け答えると、リーダーは息を詰まらせてから一気に季依に向かってかけてきた。
その手には物騒なサバイバルナイフが握られていた。

しかし、季依はにぃっと口角を上げた。
そのとき、リーダーの体が季依のすぐそばでぴたりと止まった。
そして、勝手に手指が動きナイフがリーダーの足元にカランと音を立てた。
季依がナイフを蹴り飛ばしてポケットに入っていたスマホを抜き取る間もリーダーの体はびくともしなかった。

リーダーは声も出せない状態で辛うじて眼球だけ動かし、恐怖で目を見開いた。
視線の先にはにっこりとほほ笑む華弥子の姿があったからだ。
そして華弥子が腕を動かすとリーダの腕が動いたことで、リーダーは声にならない悲鳴を上げた。
華弥子はリーダーを動かすと、リーダーと背中合わせに立ち、季依に視線を送った。
季依は準備していたタンクを持ち、蓋を開けると一気に中の液体をぶちまけた。
リーダーと華弥子の体はびっしょりに濡れ、きついアルコールの匂いに季依は軽く鼻をつまんだ。
そして、華弥子が手を出すとリーダーも一緒に動き、季依はリーダーにジッポを手渡した。
そして足元にリーダー愛用のピンク色の箱のたばこを置いた。

その瞬間、リーダーは状況に気が付いたのか、目に涙をあふれさせて口を動かした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...