JOKER~嘘を真に変える男~

木継 槐

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兄弟と双堕児

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時刻は25時を回った深夜。
俺と百目鬼は水際の家の前に来ていた。
「百目鬼、本当に忍び込むのか?」
百目鬼がこの時間までに冗談を挟みながらいいっていたことの確認だけ搔い摘むとこうだ。
《水際の部屋に忍び込み、俺が水際を見絶させた隙に百目鬼が欲の塊を喰らう。》
完全に不法侵入の空き巣のやり方だ。盗るものが欲か金品かの違いだ。

俺の心配を他所眼に、百目鬼は手のひらを水際の家に向けた。
「心配することはないさ。家にいるのは彼と……おや、兄がいるみたいだ。」
「駄目じゃねぇか。」
「あーでも大丈夫そうだ、兄は弟に興味を示していないみたいだよ。」
大丈夫なのかそれ。

不安が残ったまま、俺は百目鬼に引き上げられて2階の水際の部屋の窓から侵入した。
そこには目を覚ました水際の姿があった。
「起きてんのかよ。」
「え、え?え?兄さっ?!」

俺は咄嗟に水際の首にチョップをかました。
水際は力なくぱたんと後ろに倒れた。
「水際、わりぃ。」
すると、突如水際の体から黒煙が立ち込めて人の形になって空中にとどまった。
「いったぁ~い!!君たちだれぇ?」

黒煙は頭を抱えるそぶりをして俺たちを指さした。
「しゃべった。」
「そりゃ、子供だからね。3秒したらお兄さんも来るね。」
「は?」
百目鬼がぽそっと呟くと、廊下の方から荒々しい足音が聞こえてきた。
そして部屋が開けられて入ってきたのは長身の年上らしい青年だった。

って中継してる場合じゃない!
不法侵入バレてんじゃねぇか!!
青年は俺たちに顔を近づけた。
「あ、俺たちはその……。」
「何故、俺たちの家[縄張り]に他人[悪鬼]がいる?」
「え?」

青年の顔を見あげると、その目は右目は俺を見ているものの、左目は百目鬼の方を睨みつけていた。
それとこの声の違和感は……?
まるで二重に別の声が聞こえているような……。
「おや、もう脳まで侵食したのかい?若者の成長は著しいね。感心感心。」
「侵食?」

ピンポンパンポーン↑
「説明しよう!!」
「またかよ。」
「脳は欲が作り出される源だよ。知能と欲は比例するんだ。動物は欲が一辺倒で侵食しやすいけど対した悪鬼になれない。大概、悪鬼同士の戦いで負けて消滅してしまうよ。欲が多種多様できりがない人間を狙うことが多いのはそのためなんだ。」
ピンポンパンポーン↓

「終わったか?」
「問題ないよ!!」
「てめえらだけでなにをごちゃごちゃいってる!!」
「ッ?!」
兄の方が俺につかみかかる。
しかしその力はとても強いとは言えず、片手でたたき落とすことができた。
「は?雑魚っ。」

すると、兄の体はベッドの横に倒れ込み、これも黒煙が姿を現した。
「形が同じ?!」
「俺たちは“双堕児”だ。」
「そう?ん?」
「女腹から掻き出された、双子の未熟児だよ。せっかく馬鹿な家系を根絶やしにしてやろうと思っていたのに邪魔するな!」

そして次は弟の方が俺の首を掴もうとして手を止めた。
「やぁ、僕の契約者においたは頂けないよ?」
「なんでこいつがここに……?」
弟の口調を聞いて、兄もこちらを見て慌てて体に引っ込んだ。
それに合わせるように弟の方も水際の体に引っ込んでしまった。

「何だったんだ……今の。」
「ふ~ん、やっぱり彼らだったんだね。」
「あ?」
「双子を宿した家はいずれ衰退したり根絶やしになったりするって噂。」
「そんなの迷信だろ?」
「見えない人間からしたら、ただの運としか思わないだろうけど、彼らが関わっていたなら変わってくるよ。」

百目鬼は腕の目を動かした。
「そろそろ彼らの父親がお帰りのようだね。」
「帰ろう。」

家に戻ると、百目鬼はタブレットの電源をつけて掌をかざした。
「それどこにあったんだよ。」
「ちゃんと買ったんだよ。ほら、これが彼らの資料。」
百目鬼のタブレットには見たこともないサイトが開かれていて、画面から異様に黒煙が立っている。

「これ違法端末とかじゃねぇだろうな?」
「心配いらないよ。君名義だったものが解約されたの確認してから使っているから。」
「そう言うのを違法って言うんだよ。」
サイトを見ていくと、双堕児について細かく書き込まれていた。

「兄弟姉妹を争わせて遊ぶって……これじゃ人間がただの駒になるって事じゃねぇか。」

「人間の欲が集まるところに悪鬼あり。彼らは欲をため込む期間が長い悪鬼でね、胎児のときから人間に入って喰らうだけ喰らってガワでも遊んで、兄弟のどちらかが使い物にならなくなったら欲の塊になって、次の代の胎児の心の隙間に入り込む。その家系が滅亡するときにやっと悪鬼になるのさ。」

そんなに長い間家系事態に取り付いてるのか……ん?ってことは。
「ちょっと待てよ、それじゃ水際もその兄貴もどちらも死ぬって事かよ!」
「悪鬼になれば大概死ぬって事、話したじゃないか。」
「どうにか殺さない方法とかないのか?」
「おや、君のような人でなしが人助けかい?」
「見殺しは胸糞悪いだろ。」

百目鬼は考える素振りをするとうんとうなずいた。
「何かあるのか?」
「まさか!これらは死んでおしまいさ。」
「何の時間だったんだよ!」
「まぁ、彼の欲の正体は兄弟の確執なんだろうね。双堕児の影響だけでなく、兄弟というのはいつだって争いやすいからね。」

「確執……。」
俺は、次の一手をどう進めようかと思考を巡らせてあっという間に朝を迎えた。
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