宛兎磨学園の日常

onmayuko1119

文字の大きさ
2 / 6
第1章 宛兎磨学園の恐怖

第1話 大屋肇の苦労

しおりを挟む

「夜の学校もスリルがあっていいわね」
(…まるで少女漫画のヒミツのでえとみたい。)「……きゃっ❤️」

「ん?」

色々言いたいことがあるのに言えないもどかしさと戦っていた大屋は最後の悲鳴の部分しか聞き取れなかった。



(っそうだ、彼女は?さっきまで悲鳴をあげていたはずだが…。
まさか………?!)

なおもしゃべり続ける彩葉を尻目に大屋は辺りを見回した。すると、かすかに何者かの足音が聞こえてくる…。

「…チッ」 
(おいおい、マジかよ…。勘弁してくれ………。)

(最悪俺だけなら逃げ切れる。ただ、生徒の彩葉が見つかってしまうと……流石にヤバい。
常識的に考えて、どこだろうが夜の学校に忍び込んでる時点で建造物侵入罪だ。
それがバレたらコイツは……、最悪長期の停学処分になる。それだけは駄目だ。)

思わず舌打ちをして考え込む大屋を見て、彩葉は驚愕する。

(い、いつもは舌打ちなんてしないのに…、……それにしても似合うわね、惚れちゃう…。)

そう、彩葉の前での大屋は少し荒っぽいだけで、常に礼儀正しく、優しいジェントルマンなのだ。
因みに言うと彩葉も、大屋に関するときが異常なだけで、通常はお手本と褒め称えられるほど淑女らしい。大屋の前でだけ、恋する乙女になるのである。

しかし、どんなイチャラブをしても現実は覆らない。聞こえてくる足音は着実にこちらへと近づいてくる。

「……おい、学生証は持ってるな?」

「え?……え、えぇ。さっき入る時に使ったから持っているけど。
……何かあったのね?」      


「誰か来た。これは氷刃さんじゃねぇ。
いいな。合図をしたら扉にむかって走れ」

「で、でも、…そんなことしたら貴方がっ!」

「そんなのどうとでもなるさ、気にしなくていい。
……分かったな、俺が合図をしたら出口まで走るんだ。…悪ぃ、夜道に一人にして。」

「ふふ、大丈夫よ。私だって鍛えてるんだから!」

「…悪いな。無理だけはしないでくれよ。
……………よし。今だ、走れッ!」




…ッッなんだコイツは…!この現大屋組組長の俺に、気配を悟らせないとは…。何者だ??

「まあまあ、そう殺気立たないでくださいよ。あなたになにかしたいわけではありませんからね。俺…いえ、私はそこに倒れている女を回収しに来ただけのしがない執事ですから。」

本当になんなんだ?こいつ。
氷刃さんの執事だとか言っておきながら、主人であるはずの彼女を"女"と呼ぶなんて。

(ホラ吹いて誘拐でもするつもりか?)

見たこともない男の顔をじっくりと観察する。

しかし裏業界に住まう人間特有の血生臭さもなければ、服も上等で金に困っている様子もない。もしそうだったとしても、男に漂う色気や、嫉妬も通り越して見惚れるほどの目鼻立ちの整った顔つきを見て放っておくような令嬢は居ないだろう。

(ということは、なんらかの理由で無理やり雇われている…ってことか?
脅されている可能性も捨てきれねぇな。)

二人して腹の中を探り合うように見つめあっていると、さらに別の足音が聞こえてくる。

(しまった…、……音からして女性だな。)

双方睨み合いを中止する。そしてそれぞれ逃げようと一歩踏みだした瞬間。

大屋の顔を懐中電灯の明るい光が顔を照らした。自身の顔を、目を遠慮なく照らす光に思わず目を瞑る。

光が逸らされ、目が暗闇に慣れてきた頃。

濃い紫色のピンヒールを履いた美女が、男二人の逃げ道を塞ぐように仁王立ちしていた。

(うん、詰んだ。)

その美女から放たれるオーラに自身の死を悟る。逃げ出そうにも、その美女__おそらく教師だろう___に経路を塞がれているため、身動きが取れない。

美人教師がその艶やかな唇を開いた。

「すでに学校は閉まっているはずですが…。一体何のご用で?」

凄まじい、しかし神々しいとも言える笑顔で問いかけられる。

二人とも何も答えず押し黙っていると、笑顔が消え、呆れた表情になった美人教師に、

「はぁ…。とりあえず敵意はないのですよね?」

と問われた。それに、

「「もちろんだ(です)!」」
と、両手をあげて答える。大屋は命の危機を感じて必死だが、余裕があるのか手を上げた時に謎の執事が氷刃さんを吹っ飛ばしたように見えた。

(………気のせいか?流石に。)

そんなことを場の雰囲気に似合わないポヤポヤとした頭で考えていると、再び教師の視線が突き刺さる。

「ならば、即刻お帰り願います。ここへの用などもうないでしょう。」

それに「それでは失礼致します、レディ。」と答えると、氷刃さんの執事(?)は彼女を大切に抱えるでもなく、米俵のように抱え、闇に溶けていった。

何故かそれを苦しげな表情で見つめていた彼女だったが、流石と言うべきか、すぐに切り替えると、大家に向き合った。

「これからはこういったことは謹んだ方がよろしいのでは?現大屋組組長の大屋肇さん。」

(チッ、バレてやがる。)

「さもなくば、あなたの大切なものが傷つくことになりますよ。
例えば、……。御宮さん、とかね?」

「…あ“?」

「まぁ怖い。御宮さんの前とでは、随分と態度が違うんですね?」

「…何が言いてぇんだよ」

「ふふ、______でしたが…このまま見守るのも面白いかもしれませんね。」

「…?だから、どういう__」

「あら、もうこんな時間。それではお気をつけて。
彼女が貴方の帰りを心待ちにしていますよ。」


そう言い残し、彼女はピンヒールの軽やかな音を響かせ、いかにもご機嫌な様子で部屋を去っていった。それを呆然と見ていた大屋だったが、その意味にすぐに気がつくと、すぐに気がつくと、帰路を急いだ。




その数分後、玄関で右往左往としている彩葉を見た大屋が頬を緩ませていたのはまた別のお話。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

処理中です...