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忍び寄る絶望の足音
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「あの愚王めが……」
グロンブナー公爵家の執務室で、補佐官から報告された内容を見てディオンは呆れた様子で呟いた。
忠臣だったカレンデュラ国の初代王に国を統治させるようにしてから数百年。
王国内部は、以前の神殿同様に腐り切っていた。
享楽に溺れ、贅沢三昧の国王に至福を肥す事だけを考えている貴族達。
建国当初に起こった瘴気の魔獣により、国が滅んでしまいそうになった事を教訓にして歴代の国王達は国の守りを盤石にする為に心血を注いできた。
だが、平和な時代が続き瘴気の魔獣の事など次第に忘れ去られていった。
かつては平和で豊かな国として謳われたカレンデュラ。
今では国民は飢えて魔獣がいつ襲ってくるかわからない国となった。
「街の様子は?」
「酷い状況です……」
ディオンの右腕と言われる補佐官のカイル・ロックナーはカレンデュラ国に視察に行き、悲惨な状況を目の当たりにしてきた。
国中に瘴気が蔓延し、貧しい者の骸が街中に倒れ
街中にも魔獣が入り込んでいた。
国王は、先王が作った瘴気から身を守る為の地下室から出て来ず、貴族達は護衛に冒険者を雇い次々に国を脱出していた。
「神殿のアルミノク聖司教と幼い兄妹が魔獣を倒しながら、負傷者達を神殿で保護している様ですが
限界が近いでしょう……」
「……セリーナの弟妹だな」
マシューとアンナは白魔法を使い、必死で魔獣達の
数を減らしていた。だが、セリーナの様に瘴気に侵された人々を癒す術が無く犠牲者は増えていった。
「カレンデュラの王から救援要請は?」
「いいえ……もはや国として機能していない上に
あの盟約がありますからね」
グロンブナーの祖先はカレンデュラに国を任せる際にいくつかの盟約を結んでいた。
『カレンデュラ国王が使命を果たす事無く、国が傾いた時は全ての権限をグロンブナーへ返すものとする』
現、カレンデュラ国王は今の地位を剥奪されるのを恐れてグロンブナーへ救援要請をせず、隠れたままだった。
「潮時だな。
カイル、あの件を進めてくれ」
「かしこまりました。
ところで、セリーナ様はお目覚めになられましたか?」
「まだだ……」
力を使い果たしたセリーナが倒れて一週間が経つが死んだように眠っていて目覚めなかった。
最初は力を使いすぎたのかと思われたが、治癒術士が回復しても回復ポーションを飲ませても目覚める事は無かった。
ディオンはセリーナが眠っている部屋に向かった。
セリーナの為に作らせた、白で統一され匠の技で作られた調度品が並ぶ部屋は綺麗に整えられていた。
ベッドで眠るこの部屋の主は、まるで精巧に作られた人形の様に死んだように眠っていた。
微かに聞こえる心臓の音が生きている事を知らせてくれる。ディオンは祈るように手を握り声をかけた。
「……セリーナ、目覚めてくれ」
その頃、マシューとアンナは死闘を繰り広げていた。
なんとか外に居る魔獣達の数を減らせたのだが、街中に入り込んで隠れている魔獣達を倒すのに苦労していた。
「はぁ、はぁ、この辺のは殲滅できたかな?」
「大丈夫だと思う。アンナ、神殿に帰ろう」
成長期の2人は身長も伸びて、アルミノクの指導でメキメキと力をつけ、今ではアルミノクを凌ぐ程の
魔術の使い手となった。
「マシュー、アンナ!無事で何よりです」
アルミノクは優しく、そして時には厳しく接し、2人は父の様に慕っていた。
「状況はどうでしたか?」
「それが……」
マシューとアンナは表情を曇らせ顔を見合わせる。
王国の騎士団とは名ばかりの貴族のお坊ちゃんの集まりでまともに戦えず、殆どの者達が国を逃げ出していた。
冒険者達もその護衛でカレンデュラから出て行き、戦えるのは、騎士団でも一部の者達や、神殿の者と
元冒険者の平民だけで戦力が足りていなかった。
圧倒的な強さを誇るマシューとアンナだが、数で押されると限界があった。
「グロンブナー公爵家に救援要請は出せないんですか?」
「国王からでないと難しいでしょうね……」
「お姉ちゃんは大丈夫かな……アンナ、お姉ちゃんに
会いたい」
唯一、気を許しているアルミノクの前では子供らしい一面を2人は最近では見せるようになった。
どうしたものかと三人が途方に暮れていると、神官が慌てた様子で走って来た。
「アルミノク様!!た、大変です!」
「どうしました?」
「神殿の周りに大量の魔獣が現れました!」
グロンブナー公爵家の執務室で、補佐官から報告された内容を見てディオンは呆れた様子で呟いた。
忠臣だったカレンデュラ国の初代王に国を統治させるようにしてから数百年。
王国内部は、以前の神殿同様に腐り切っていた。
享楽に溺れ、贅沢三昧の国王に至福を肥す事だけを考えている貴族達。
建国当初に起こった瘴気の魔獣により、国が滅んでしまいそうになった事を教訓にして歴代の国王達は国の守りを盤石にする為に心血を注いできた。
だが、平和な時代が続き瘴気の魔獣の事など次第に忘れ去られていった。
かつては平和で豊かな国として謳われたカレンデュラ。
今では国民は飢えて魔獣がいつ襲ってくるかわからない国となった。
「街の様子は?」
「酷い状況です……」
ディオンの右腕と言われる補佐官のカイル・ロックナーはカレンデュラ国に視察に行き、悲惨な状況を目の当たりにしてきた。
国中に瘴気が蔓延し、貧しい者の骸が街中に倒れ
街中にも魔獣が入り込んでいた。
国王は、先王が作った瘴気から身を守る為の地下室から出て来ず、貴族達は護衛に冒険者を雇い次々に国を脱出していた。
「神殿のアルミノク聖司教と幼い兄妹が魔獣を倒しながら、負傷者達を神殿で保護している様ですが
限界が近いでしょう……」
「……セリーナの弟妹だな」
マシューとアンナは白魔法を使い、必死で魔獣達の
数を減らしていた。だが、セリーナの様に瘴気に侵された人々を癒す術が無く犠牲者は増えていった。
「カレンデュラの王から救援要請は?」
「いいえ……もはや国として機能していない上に
あの盟約がありますからね」
グロンブナーの祖先はカレンデュラに国を任せる際にいくつかの盟約を結んでいた。
『カレンデュラ国王が使命を果たす事無く、国が傾いた時は全ての権限をグロンブナーへ返すものとする』
現、カレンデュラ国王は今の地位を剥奪されるのを恐れてグロンブナーへ救援要請をせず、隠れたままだった。
「潮時だな。
カイル、あの件を進めてくれ」
「かしこまりました。
ところで、セリーナ様はお目覚めになられましたか?」
「まだだ……」
力を使い果たしたセリーナが倒れて一週間が経つが死んだように眠っていて目覚めなかった。
最初は力を使いすぎたのかと思われたが、治癒術士が回復しても回復ポーションを飲ませても目覚める事は無かった。
ディオンはセリーナが眠っている部屋に向かった。
セリーナの為に作らせた、白で統一され匠の技で作られた調度品が並ぶ部屋は綺麗に整えられていた。
ベッドで眠るこの部屋の主は、まるで精巧に作られた人形の様に死んだように眠っていた。
微かに聞こえる心臓の音が生きている事を知らせてくれる。ディオンは祈るように手を握り声をかけた。
「……セリーナ、目覚めてくれ」
その頃、マシューとアンナは死闘を繰り広げていた。
なんとか外に居る魔獣達の数を減らせたのだが、街中に入り込んで隠れている魔獣達を倒すのに苦労していた。
「はぁ、はぁ、この辺のは殲滅できたかな?」
「大丈夫だと思う。アンナ、神殿に帰ろう」
成長期の2人は身長も伸びて、アルミノクの指導でメキメキと力をつけ、今ではアルミノクを凌ぐ程の
魔術の使い手となった。
「マシュー、アンナ!無事で何よりです」
アルミノクは優しく、そして時には厳しく接し、2人は父の様に慕っていた。
「状況はどうでしたか?」
「それが……」
マシューとアンナは表情を曇らせ顔を見合わせる。
王国の騎士団とは名ばかりの貴族のお坊ちゃんの集まりでまともに戦えず、殆どの者達が国を逃げ出していた。
冒険者達もその護衛でカレンデュラから出て行き、戦えるのは、騎士団でも一部の者達や、神殿の者と
元冒険者の平民だけで戦力が足りていなかった。
圧倒的な強さを誇るマシューとアンナだが、数で押されると限界があった。
「グロンブナー公爵家に救援要請は出せないんですか?」
「国王からでないと難しいでしょうね……」
「お姉ちゃんは大丈夫かな……アンナ、お姉ちゃんに
会いたい」
唯一、気を許しているアルミノクの前では子供らしい一面を2人は最近では見せるようになった。
どうしたものかと三人が途方に暮れていると、神官が慌てた様子で走って来た。
「アルミノク様!!た、大変です!」
「どうしました?」
「神殿の周りに大量の魔獣が現れました!」
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