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01.絶対陽キャな実習生
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五月にしては太陽が熱く照りつける窓。光を集める黒色のスーツがじんわりと熱を帯び思わずため息がでる。実習生を迎える冷房くらい付けてくれてもいいのに、と失礼な言葉を飲み込む。
ふと隣に座る同級生の女性を一瞥すると、リュックサックを両手で抱き、今から処刑されるかのような顔で冷や汗をかいていた。彼女の心臓の音が静かな部屋に低く響く。
声をかけても余計に心労を増やしてしまうだけなので黙って見なかったふりをする。
対照的に俺は緊張は感じられなかった。心臓も正常だし体調も問題ない。
だが彼を目にした時、初めて鼓動を感じた。
【七楽 真飛斗】と印刷されたネームプレートを首から下げ、伸びをひとつする。職員室で印刷してきたプリントを教卓の端に置き、枚数を数えながら仕分ける。
紙のペラペラとした音に集中していると、微々たる振動とともに戸を叩く音が聞こえる。目を向けると学年主任の笹島先生が立っていた。
「七楽先生、少しいいですか」
「はい。どうされましたか」
プリントの束に挟んでいた指を外し、先生の正面に向き直る。
笹島先生は少し横にはけると、後ろに立っていた一人の青年に手を向けた。
「彼が今日から来てくれた教育実習生です」
明るい色の髪を丁寧に分けたセンター分けが親しみやすい印象をもたらす。キリッとしたつり目気味の目に緑色の瞳。背も高くて、第一印象は申し分ない青年だ。
「初めまして!二週間よろしくお願いいたします」
おまけに声もハキハキとしている。ぺこりと頭を下げる姿が新人らしくて少し微笑ましい。
「こちらこそよろしくお願いします。二組担任の七楽真飛斗です」
お互いに礼を交わした後、首から下げられているネームプレートを見るが、微妙に読めない組み合わせで会話に不自然な間ができてしまった。
「みや、らくがわ…?」
僕の戸惑う様子に気づいた先生がプレートを両手で持ってニコッと笑う。
「雅な楽しい川と書いて、雅楽川 交といいます!」
「うたがわですか…珍しいですね」
「よく言われます!」
笑い混じりに話す姿が、生徒から人気を得そうな先生だ。
「七楽先生、突然で申し訳ないんだけど、彼を二組に入れられないかな」
会話を静かに聞いていた笹島先生が僕に向き直り、そう言った。
「えっ一組と伺っておりますが」
教育実習生が配属されるのは一組なはずだったため困惑して返答をする。
「そうだったんだけど、一組の一橋先生、体育祭の担当でしょう?思ったより作業が増えてるみたいでさ…。急遽変わって貰えないかなって」
そんなハナからわかりきった理由に少し理不尽さを覚えたが、断る理由も特にないため受け入れることにした。
「わかりました。雅楽川先生は二組ということで」
「ありがとう助かるよ七楽先生~」
本当に思っているのか曖昧ではあるが、愛想笑いをして満足そうに帰る先生を見送る。
「改めて、よろしくお願いします。英語を担当しています。何かあったら遠慮なく言ってくださいね」
少し目線をあげて彼の顔を見ると、ずっと前から僕のことを見ていたように目が合った。
「…どうかしましたか?」
そう尋ねると彼は僕に一歩近づき、僕は反射的に後ろの教卓に手を着いた。
「雅楽川先生?」
壁ドンならぬ教卓ドンのような体制になってひとまず押し返そうとすると、口を開いた。
「好きです」
ふと隣に座る同級生の女性を一瞥すると、リュックサックを両手で抱き、今から処刑されるかのような顔で冷や汗をかいていた。彼女の心臓の音が静かな部屋に低く響く。
声をかけても余計に心労を増やしてしまうだけなので黙って見なかったふりをする。
対照的に俺は緊張は感じられなかった。心臓も正常だし体調も問題ない。
だが彼を目にした時、初めて鼓動を感じた。
【七楽 真飛斗】と印刷されたネームプレートを首から下げ、伸びをひとつする。職員室で印刷してきたプリントを教卓の端に置き、枚数を数えながら仕分ける。
紙のペラペラとした音に集中していると、微々たる振動とともに戸を叩く音が聞こえる。目を向けると学年主任の笹島先生が立っていた。
「七楽先生、少しいいですか」
「はい。どうされましたか」
プリントの束に挟んでいた指を外し、先生の正面に向き直る。
笹島先生は少し横にはけると、後ろに立っていた一人の青年に手を向けた。
「彼が今日から来てくれた教育実習生です」
明るい色の髪を丁寧に分けたセンター分けが親しみやすい印象をもたらす。キリッとしたつり目気味の目に緑色の瞳。背も高くて、第一印象は申し分ない青年だ。
「初めまして!二週間よろしくお願いいたします」
おまけに声もハキハキとしている。ぺこりと頭を下げる姿が新人らしくて少し微笑ましい。
「こちらこそよろしくお願いします。二組担任の七楽真飛斗です」
お互いに礼を交わした後、首から下げられているネームプレートを見るが、微妙に読めない組み合わせで会話に不自然な間ができてしまった。
「みや、らくがわ…?」
僕の戸惑う様子に気づいた先生がプレートを両手で持ってニコッと笑う。
「雅な楽しい川と書いて、雅楽川 交といいます!」
「うたがわですか…珍しいですね」
「よく言われます!」
笑い混じりに話す姿が、生徒から人気を得そうな先生だ。
「七楽先生、突然で申し訳ないんだけど、彼を二組に入れられないかな」
会話を静かに聞いていた笹島先生が僕に向き直り、そう言った。
「えっ一組と伺っておりますが」
教育実習生が配属されるのは一組なはずだったため困惑して返答をする。
「そうだったんだけど、一組の一橋先生、体育祭の担当でしょう?思ったより作業が増えてるみたいでさ…。急遽変わって貰えないかなって」
そんなハナからわかりきった理由に少し理不尽さを覚えたが、断る理由も特にないため受け入れることにした。
「わかりました。雅楽川先生は二組ということで」
「ありがとう助かるよ七楽先生~」
本当に思っているのか曖昧ではあるが、愛想笑いをして満足そうに帰る先生を見送る。
「改めて、よろしくお願いします。英語を担当しています。何かあったら遠慮なく言ってくださいね」
少し目線をあげて彼の顔を見ると、ずっと前から僕のことを見ていたように目が合った。
「…どうかしましたか?」
そう尋ねると彼は僕に一歩近づき、僕は反射的に後ろの教卓に手を着いた。
「雅楽川先生?」
壁ドンならぬ教卓ドンのような体制になってひとまず押し返そうとすると、口を開いた。
「好きです」
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