【完結】1日1回のキスをしよう 〜対価はチョコレートで 〜

田沢みん

文字の大きさ
11 / 100

11、コタロー焦る

しおりを挟む

「なんか私ばっか食べてて悪いね」
「いいよ、 俺にはご褒美ほうびがあるから」

「へえ~っ、 なんかいいことでもあるの? 」
「うん、 ハナにキスしてもらうから」

 待望のチョコを口にして満足してるアイツに、 不意打ちのセリフ攻撃。
 案の定、 ハナは鼻からチョコレートを出しそうな勢いで目を見開いた。


 ーー こまれ、 困れ。 ちょっとは俺のことを意識してみろよ。


 チョコとキスの等価とうか交換を約束してからというもの、 時々ハナがドギマギしたり狼狽うろたえたりするようになった。
 ずっと自分ばかりが振り回されてきたから、 この状況が少し楽しいと思っている自分がいる。


 あれっ、 俺って忠犬ハチ公キャラだと思っていたけど、 まさかのSっ気もあったのか?!


 だけど、 そこは流石さすがハナ。

「よしっ! 約束は守るよ。 キスしよう! さあ来い! 」

 コイツ、 納得するの早過ぎね?
 言い出した俺が言うのもなんだけど、 なんでそんな前向きに受け入れてんだ?

 馬鹿者ばかものめ。
 どうせまたメンドくさくなって、 深く考えるのを投げ出したんだろう。


 だけど、 俺だってこのチャンスをのがす気はない。
 だって、 好きな子からのキスなんだぜ? そんなの欲しいに決まってるだろ?


「お前からしろよ、 ご褒美ほうびなんだから」


 早鐘はやがねのように鳴り響く心臓をなだめながら、 つとめて平静を装う。

 目の前で腰をかがめて顔を突き出したら、 次の瞬間、 唇の左端に柔らかいものが触れた。


「あっ、 ズレた! 」

 ああ、 ズレたのか、 別にそれくらいは…… って、

 いやいやいやいや!!!


 いま問題にするのはソコじゃないだろっ!
 真ん中に命中したかズレたかなんて、 どうでもいいんだよ。


 なんでコイツ、 ナチュラルに唇にキスしてんの?
キスっつったって、 そんなん普通はほっぺにチューくらいなもんだろう!

 お前はチョコ1個のために口にキスしちゃうわけ?
 対価交換って、 お前のキスはそんな安いのかよ!


 それに…… コレってファーストキスだったんじゃないの?

 俺はいいさ。  ハナが初めての相手で万々歳だ。

 だけどハナ、 お前はこれでいいのか?



「お前、 ムードが無いな」

 無理やり作り笑いをして言葉を絞り出したら、 ハナが「ムードが無くて悪かったね! 」と鼻にシワを寄せた。


 ああ、 俺、 アホだ。
 ムードが無いのは俺の方。

 ハナの大事なファーストキスを奪ったっていうのに、 もっと優しい言い方は出来ないのかよ、 俺!


 …… ん?  でもさ、 これって奪ったって言うのか?

 キスは対価交換なわけで、 俺は頬っぺただと思ってたのに、 アイツが勝手に勘違いして唇にしてきたわけで……。


 動揺している俺を尻目に、 ハナが扉の方に歩き出した。

「コタロー、 塾に行こう」
「へっ? 」

 へっ?  コイツ動揺してないのか?
 俺の方はめっちゃ動揺しまくりなんですけどっ!


「塾って…… 今日は俺たちの授業ないだろ」

 ハナと俺が塾でクラスを取ってるのは火曜日と木曜日だけ。
 今日は金曜日だから、 塾に行く必要はないはずだ。

 まあ、 今までコイツは塾がない日でも、 終わり頃に来てはちゃっかりチョコレートを貰ってたわけだが……。


「何言ってんの、 明日用のチョコを選びに行くんじゃん」
「えっ、 明日? 」

「だから、 明日もコタローがチョコを取ってきてくれるんでしょ?  どれにするか選ばないと」
「えっ? ああ…… うん」


 ーー コイツ、 マジで意味わかってんのか?


「あのさ、 ハナ、 明日もするの? その…… 対価交換」
「えっ、 だって、 コタローがそう言ったんじゃん。 毎日好きなのをくれるって」

「そりゃ、 言ったけど…… 」


 ーー 確かに言ったよ! 言ったけれども……。


「早く行こうよ。 風子先生が授業してる間に見ときたいからさ。 私さ、 やっぱり和風シリーズがいいかなって思うんだよね。 京ちゃんが、 きなこに黒蜜が入ってるバージョンもあるって言ってて…… 」

 俺の手を取ってグングン歩いて行くコイツの横顔を見ながら、 急速に不安とあせりが込み上げてきた。


 ダメだ、 こいつ…… 無防備過ぎるだろ。

 こんなん続けるつもりかよっ!
 なんで抵抗しねえの?

 お前さっき、 ファーストキスを失ったんだぞ!
 もうちょい動揺とかしろよっ!


 そんなにチョコが食いたいのかよっ!
 食い意地張りすぎだろう! 

 こんなんじゃ……  誰かにチョコレートケーキを1ホール丸ごと差し出されたら、 その先だって簡単に許しちゃうんじゃねえの?


 ダメだ、 そんなの。
 どうにかして阻止しないと……。


 ーー しっかりしろ、 考えろ…… 俺。


 俺がしっかりしなきゃダメなんだ。
 このフラフラしてるアホ女のそばには、 正常な判断ができるヤツがついてなきゃいけないだろ?

 要は、 俺がコイツに振り回されてちゃいけないんだよ……。


 小4の春、 チョコレートの対価たいかで好きな子のファーストキスをいただいた俺は、 たかがチョコレートのためにファーストキスをささげた幼馴染の間抜まぬけ顔を見ながら、 頭の中でグルグルと考え続けていた。
しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

友達婚~5年もあいつに片想い~

日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は 同僚の大樹に5年も片想いしている 5年前にした 「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」 梨衣は今30歳 その約束を大樹は覚えているのか

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~

美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。 貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。 そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。 紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。 そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!? 突然始まった秘密のルームシェア。 日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。 初回公開・完結*2017.12.21(他サイト) アルファポリスでの公開日*2020.02.16 *表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

モテ男とデキ女の奥手な恋

松丹子
恋愛
 来るもの拒まず去るもの追わずなモテ男、神崎政人。  学歴、仕事共に、エリート過ぎることに悩む同期、橘彩乃。  ただの同期として接していた二人は、ある日を境に接近していくが、互いに近づく勇気がないまま、関係をこじらせていく。  そんなじれじれな話です。 *学歴についての偏った見解が出てきますので、ご了承の上ご覧ください。(1/23追記) *エセ関西弁とエセ博多弁が出てきます。 *拙著『神崎くんは残念なイケメン』の登場人物が出てきますが、単体で読めます。  ただし、こちらの方が後の話になるため、前著のネタバレを含みます。 *作品に出てくる団体は実在の団体と関係ありません。 関連作品(どれも政人が出ます。時系列順。カッコ内主役) 『期待外れな吉田さん、自由人な前田くん』(隼人友人、サリー) 『初恋旅行に出かけます』(山口ヒカル) 『物狂ほしや色と情』(名取葉子) 『さくやこの』(江原あきら) 『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!』(阿久津)

処理中です...