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17、 ピリ辛い1日 (3)
しおりを挟む「コタロー、 キスしよう」
「へっ?! 」
コタローが慌てて周囲をキョロキョロ見回す。
「今日のぶん…… チョコの対価を支払ってない。 だから今から…… 」
「バカっ! こっち来い! 」
コタローは私が言い終わらないうちに手首を掴んでヒョコヒョコ歩き出す。
そのまま武道場の裏に回って、 裏口のドアの前で立ち止まった。
「アホかお前は! あんな所で不用心なことを言うなよ! 」
「ごめん…… でも私、 チョコをもらったのに対価を払ってないし、 おまけに迷惑かけたし…… 」
「だから、 足は俺の不注意だからお前が気にすることないし、 こんなのは湿布を貼っとけば明日には治るし」
「でも…… 」
「お前も今日は喉がピリピリして大変だったろ。 もういいよ。 気にすんな」
「だけど…… 」
「『でも』とか『だけど』とか、 うるさいよ、 お前。 まあ、 お前がキスしたいっつーのなら拒みはしないけどな」
ハハッと笑った顔を私がジッと見つめていたら、 コタローが笑顔を引っ込めて黙り込む。
「お前は…… したいのかよ」
私がコクリと頷くと、 コタローは一瞬目を見開いて、 唾をゴクリと飲み込んだ。
「…… するよ、 キス」
「おっ…… おう」
「…… 屈んでよ」
「…………おう」
そっか、 いつもは言わなくてもコタローが勝手に屈んでくれてたから気にしてなかったけど……。
コタローがこんなに屈んでくれないと届かないほど、 私とコイツとの身長差はついちゃってるんだ……。
今更ながらそんなことに気付いて、 何故かちょっと取り残されたような、 切ないような気持ちになった。
いつもと同じようにそっと唇に当てるだけのキス。
だけどそこには、 いつもの対価とは別の、 違う感情があるような気がした。
これは感謝? 感動? 謝罪の気持ち? …… 自分でもよく分からない。
だけどこれは、 小4の時からずっとしてきたのとは違う、 初めて自分から自分の意思でした口づけだ。
コタローが裏口の前のコンクリートの階段に座ったから、 私も隣に並んで座った。
「…… ハナも、一緒に車に乗ってけよ。 明日の朝も車で送ってくし」
「うん…… そうする」
「風子さん、 遅いね」
「あっ、 部活が終わる時間で頼んであったから、 来るのまだだわ」
「…… そうなんだ」
「うん…… 」
「電話してみたら? 」
「うん…… まあ、 いいじゃん」
「うん…… まあ、 いいか」
「うん、 まだいいよ」
もう喉のピリピリはとっくにおさまったはずなのに、 何故か唇だけがピリピリしている気がした。
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