【完結】1日1回のキスをしよう 〜対価はチョコレートで 〜

田沢みん

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66、 コタロー告られる (1)

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虎太郎こたろうくん、 これからちょっといいかな」

 色葉先輩たち3年生の卒業式が終わった後、 剣道部員全員で集まって校庭で写真を撮っていたら、隣に並んでいた色葉先輩から急にそう声を掛けられた。

 こっそり耳打ちするならまだしも、 普通のボリュームで、 しかも俺の腕を両手で引っ張りながらだったものだから、 一緒にいた剣道部員だけでなく、 周囲の生徒たちの注目も思いっきり集めてしまっている。
 案の定、 あちこちからカシャカシャというシャッター音が聞こえてきた。


ーー これはやっぱり、アレだよな……。

 卒業式で、 色葉先輩で、 呼び出し。
 これは流れからすると、 やっぱりアレなんだろう。

 色葉先輩に腕を引かれながらふと振り返ったら、 京ちゃんと一緒にこちらを見ているハナと目が合った。
 そして当然のようにフイッと目をらされる。


ーー うわっ、 見られたか……。

 だけど、 今日の俺は不思議と心がいでいる。

 去年のクリスマス会の後でハナにちゃんと弁明べんめい出来ているというのもあるし、 何より、 先日のじいちゃんとの会話で俺のはらが決まったというのが大きいのだろう。


 色葉先輩は、 武道場の裏で立ち止まってクルリと振り返ると、 ニコッと微笑みながら俺を見上げた。

「虎太郎くん、 私がどうしてここに呼び出したのか、 もう分かってるよね」
「まあ…… 薄々うすうすは…… そうじゃないかと…… 」

「うん、 たぶん君の予想は当たってる。 だけどその前に、 私の決意表明を聞いて欲しいんだ」
「決意表明? 」

「うん、 そう。 ちょっと長くなっちゃうけど、 黙って聞いてね」
「………… はい」

 色葉先輩は少し睫毛まつげを伏せてから大きく深呼吸すると、 ゆっくり話し始めた。


「まずね…… 虎太郎くん、 私は2年前の中2の春、 君に一目惚れしました。 武道場の壁沿いにズラッと並んだ新入部員の中で、 最初から君だけが光って見えました。  新入部員が正座して見ている前で模範もはん稽古を披露することになった時、 私は君のことが気になって集中をいて、 打ち込んだ拍子ひょうしに足首をひねってしまいました。 その時に真っ先に駆けつけてくれたのが…… 虎太郎くん、 君でした。…… 覚えてる? 」

 俺はコクンとうなずいた。

「はい……。 俺が応急処置をしました」

 入部初日の出来事だったから、 よく覚えている。
 確か、 近くにあったパイプ椅子に座らせて、 俺の防具入れの中から出してきたテープでテーピングをしたんだった。


「お姫様抱っこをされたのなんて生まれて初めてで、 しかもそれが一目惚れした相手で…… そんなの夢中になっちゃうよね。 だから私は、 それまで剣道部に無かったマネージャーに立候補して、 少しでも接点を増やそうとしたの」

ーー 知らなかった…… マネージャーって色葉先輩が初だったのか。 しかも俺のためって……。


「それからは、 学校の校庭でも廊下でも、 自然に君の姿が目に飛び込んでくるようになりました。 そしてすぐに、 いつも君の隣にいる女の子の存在に気付きました。…… ちょっと誰かに聞いたらすぐに分かった。 幼馴染の桜井花名さくらいはなちゃん。 あなた達、 小学校の頃から有名だったのね。 2人で1セットのニコイチだって」


「それで…… すぐに気付いたの。 ああ、 虎太郎くんはハナちゃんのことが大好きなんだな…… って。 だって、 彼女を見てる時の君は、 とろけるような表情かおをしていて、 まるでお姫様に仕える騎士ナイトのように甲斐甲斐かいがいしく世話を焼いてるんだもの」

ーー そんな以前からずっと見てくれていたのか……。


「だから…… すぐに告白しても勝ち目がないって分かった私は、 普通の先輩として接しながら、 少しでも振り向いてもらえるように頑張ろうと決めました。 そのうちに、 ハナちゃんが彼女ではないって分かって、 その気持ちが余計に強くなって……。でも、 いくら必死になっても、 君はずっとあの子だけを見ていて、 結局これっぽっちも振り向いてはくれなかった。 あれだけあからさまにアピールしてたのにね。 虎太郎くんも気付いてたよね? 」

「…… はい」

「虎太郎くん、 冷たかったよね~、 女子が待ち伏せしてるのに、 自転車を止めもしないで挨拶だけして走ってっちゃうんだもの。 塩対応たいおうにも程がある! だよ」

「…… すいません」

 色葉先輩はふふっと含み笑いしてから、 一歩前に進み出て、 姿勢を正した。


「それでも私は、 諦める気はありません!…… 天野あまの虎太郎くん、 私は君のことが好きです。 私とお付き合いしてください」

 ペコリとお辞儀しながら右手を差し出した。
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