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ぽっちゃり女子×犬系男子7
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「おはよう!あれ、花ちゃん早いね。」
あれから夜が明けて今日は土曜日。文化祭の1日目だ。
台所に立つ私に声をかけてくれたのは、この家の持ち主で大家さんの夏目謙三さんだ。
若い頃はさぞ素敵だったんだろうなと想像できるダンディなおじ様だ。
「はい。ちょっと早起きしちゃいました。」
あの後、チョコレートケーキをさぞかし気に入ってくれた嶺二くんが「俺もこれ作りたい」と言ったので、一緒に買い物に行き、一緒にケーキを作った。
そんな嶺二くんは意外にも不器用で。
すぐに手を滑らして包丁を落としたり、チョコレートを湯煎にかけている時に重みでお湯を中に入れてしまったり…
失敗の度に「花の教え方が悪い」と私のせいにされたけど、私はこんな長い間嶺二くんと一緒にいて罵られ続けたことがないので、なんだか慣れてしまった。
ただ素直な性格じゃないだけだと、少し嶺二くんのことを理解できた気がした。
そして陽介くんはというと、私と嶺二くんがケーキを作っている間、ずっと私のすぐ側でにこにことしていた。
何をするでもなく、ずっと。
すごく変だったし、落ち着かなかったけど、「陽介くん、リビングで座って休んだら?」と何回提案しても「ううん、ここにいたい。」と断られたので、落ち着かなかった。
そして2回目に作ったチョコレートケーキはほぼ全部嶺二くんが平らげていた。
そのあと3人はお酒を持って陽介くんの部屋に向かった。
私も部屋に戻ったのだけど、隣の部屋が元気だったのであまり寝付けなくて早起きすることにした。
まあ、元気なのはいいことだよね。
「あーん、花ちゃんおはよう!」
と、突然私の後ろからぎゅっと誰かが抱きしめてきた。
優しいお花の匂い。
「梨香さんおはようございます。」
それは住人の1人、相沢梨香さんだとすぐに分かった。
「あああ癒される~」
ぎゅうっとぬいぐるみを抱き潰すような力の強さに思わず「ぐえ」と可愛くない声がもれる。
梨香さんは長身でスタイルがよくて美人さんだ。
でもそれを鼻にかけた様子は一切なくて、親しみやすくサバサバとした素敵な女性だ。
普段は百貨店のハイブランドコスメストアで美容員として働いている。
「昨日陽介達うるさくなかった?私の部屋までちょっと声聞こえてたもん!花ちゃんの部屋だったら絶対うるさかったよね!」
きえーっと奇声を発して「もう、ガツンと言ってやりな!」と私の頭を撫でくり回す。
「あはは!私、どこでもすぐ寝れるので大丈夫でしたよー。」
とちょっとごまかす。
「梨香さん昨日は遅かったですよね。もうすぐ朝ごはんできるのでリビングで待っててくださいね!」
梨香さんの背中をぐいぐい押してリビングのソファーに案内する。
「あーん、花ちゃんは本当にいい子!」
大好きっ!とがばっと抱きしめられる。私も抱きしめ返して、そして、いつも梨香さんの細さにびっくりする。
再び台所に戻ると、そこには砂本さんがいた。
「わあ!砂本さんおはようございます!」
「おはよう花ちゃん。今日はいい天気だねー。」
のんびりとした声で砂本さんはそう言った。
砂本さんは絵本作家さんだ。
名前を探して読んでみたことがあるけど、温かみのある色合いでかかれた絵と、優しい文章が印象的なお話だった。まるで砂本さんが読み聞かせしてくれているような…
じんわりと幸せを感じられる素敵な作品で、私はこっそり砂本さんの絵本を全部集めている。
「これ、持って行っていいかな?」
小松菜のおひたしを指差す砂本さんに私は大きく頷く。
「ありがとうございます。」
「はは、それはいつも僕が言いたいよ。いつも美味しいご飯をありがとう。」
優しく私の頭を撫でてくれる砂本にへへへと笑みを返す。
私はこの夏目荘が大好きだ。
優しくて素敵なみなさん。
陽介くんを含め、この5人の中で私が1番後に夏目荘に入った。
そんな私を温かく、家族のように迎えてくれた人たち。
そんなみなさんのために、私はできることはなんでもしたいのだ。
「ご飯できましたよー!」
そう声をかけると、それぞれリビングの好きな場所にいた梨奈さんと夏目さんが集まってくる。
「あー、今日だき巻き卵ある!」
わあっ!と歓声を上げた梨奈さんに嬉しくなる。
4人で席に着いたところで
「陽介達はまだ寝てるかな?」
夏目さんが既にお箸を持ちながらそう聞いてきた。
「はい、多分」
そう答えると、
「じゃあ先に食べてしまおう!」
その一言で私たちはご飯を食べ始めた。
「みなさん、今日はお休みですか?」
夏目さんは大学教授だから大体土日は休み。だけど、学会などでいない日が多い。
梨奈さんは百貨店勤務なのでいつも忙しそうだ。
砂本さんはもはや休みなどないだろう。
「私は休みだねえ。」
今日はゴルフにでも行こうかなあ。
のんびりとそう言う夏目さん。
「私もね!今日は休みなの!」
やっと!2週間ぶり!と本当に嬉しそうに言った梨奈さんにみんなが「おめでとうございます。」と口にした。
「僕も昨日締め切りだったから今日は何もしないんだー。」
ふふふと砂本さんも幸せそう。
「わー、じゃあ今日は素敵な1日になりそうですね!」
みんな幸せそうで、いい日だ!
「そうだねー。」
「花ちゃんは?」
「私は文化祭なので、たこ焼きを売ってきますね。」
大学の方を指差してそう言った。
「あ、今日からなの!」
うちの大学は来週だねえ。そう言った夏目さんに、梨奈さんが
「え!ちょっと!行きたいんですけど!若い子達の精気吸いたい!」
と恐ろしいことを言う。
「ねえ、夏目さん、砂本さんちょっとだけでいいから一緒に行かない?」
キラキラとした目をしながらそう言う梨奈さんに、他の2人は顔を見合わせて笑った。
「梨奈ちゃんには敵わないねえ。」
「本当ですよ。でも、楽しそうですね。」
大学なんて何年ぶりかな。
穏やかに笑う2人に私もほっこりとする。
「わー!いいですね!私たちの出店にもぜひ来てください!陽介くん達のお店も近いんです。」
そう言って思い出す。
「そういえば陽介くん達、店番いつからなんだろう…」
ただいま既に8時を回っている。
「ははは。じゃあちょっと私が覗きに行こうかな?」
笑みを深めてそう言った夏目さんに
「私行ってきますよ!ついでにご飯も持っていこうかな。」
私はそう言って、大きめのお盆にのせられるだけ料理を乗せて、陽介くんの部屋に向かう。
そしてドアをノックしたけれど、
…
返事がない。
もう一度ノックしてしばらく待つけど返事がない。
「…失礼しまーす。」
小声でそう言い、そっとドアを開ける。
「…っ」
最初に鼻につくのはお酒の匂い。
ちゃっかりベッドを取って寝ている嶺二くんに、机の周りで寝ている陽介くんと山岡くんが目に入る。
私は音を立てないようにそっと机の上にお盆を置く。
そして側で寝ている陽介くんをそっと盗み見する。
起きている時も童顔だけど、寝ている時は更に幼く見える。
まつ毛長いなあ…
カーテンの隙間から光が入って、彼の髪の毛をキラキラと照らした。
「…天使みたい。」
思わずそんな言葉が漏れた。
そしてもう一度、ふわふわの髪の毛に目を向ける。
…いつも触ってみたいと思っていた。
でも、私に触られたら陽介くんがかわいそうだから。
でも…今は寝てるから…
少し魔が差したのかもしれない。
気づくと私は陽介くんの髪の毛にそっと触れていた。
「…わ。」
想像してたよりも少し硬くて弾力のある髪の毛が私の手に心地よくなじむ。
触ってもびくともしない陽介くんに、笑みがこぼれる。
どれくらいそうしてたか分からない。
でも、
「あれ、花ちゃん?」
後ろから聞こえてきた山岡くんの声で私は我に返った。
ばっと陽介くんから手を離し、急いで山岡くんの方へ向き直る。
「おおおおはよう山岡くん!3人とも何時までに出ないといけないか分からなかったから、朝ごはん持ってきたの!ごめんね、よかったら食べてね!」
お盆を指差して急いで立ち上がり、ドアへと向かう。
「花ちゃんありがとう!」
山岡くんの声を背中に受け、私はバタンとドアを閉めた。
「はあー」
ため息をつきながらリビングに戻ると、食事を終えた3人が和やかに話している姿を見てホッとする。
「おっ、みんなまだ寝てたかい?」
私に気づいた夏目さんがそう聞く。
「はい。」
「若いとよく寝れていいね。私は最近5時に目がさめるんだ。」
寂しそうにそう言う夏目さんに笑顔を返しながら自分のお皿を片して台所へ向かう。
「…あ。」
そして炊飯器の前に用意したままのお茶碗が目に入る。
…さっきご飯持っていくの忘れたんだ。
さっきの私の痴態を思い出して気持ちが沈むけど、そんなことは言ってられない。
急いでご飯をよそって再び陽介くんの部屋に向かう。
「ごめん花ちゃん、今からとりに行こうかと思ってたんだ。ありがとう。」
ドアを開けると、ちょうど目の前に山岡くんがいて、私とご飯を見て申し訳なさそうに眉を下げた。
お盆ごとご飯を受け取ってくれた山岡くんに笑顔を返して部屋を出ようとすると…
「花ちゃん。」
いつの間にかドアの側にいた陽介くんが私の手首をきゅっと掴んだ。
びっくりして思わず身体がびくりとしてしまう。
「陽介くん、どうしたの?」
動揺を隠して落ち着いた声でそう聞くと、
「へへへ。」
陽介くんはとろけるような笑みを見せた。
初めて見たそんな笑顔に急激に顔が熱くなる。
あああ一体どうしたの?
視線で?を訴え続けると、
陽介くんはもう一度私の手首をきゅっとすると、手を離した。
「花!この卵焼きおかわり!」
その瞬間耳に飛び込んできた声にはっとする。
急いで部屋を出て、台所に向かう。
でも、しばらくしても握られたところと顔の熱は冷めてくれそうになかった。
あれから夜が明けて今日は土曜日。文化祭の1日目だ。
台所に立つ私に声をかけてくれたのは、この家の持ち主で大家さんの夏目謙三さんだ。
若い頃はさぞ素敵だったんだろうなと想像できるダンディなおじ様だ。
「はい。ちょっと早起きしちゃいました。」
あの後、チョコレートケーキをさぞかし気に入ってくれた嶺二くんが「俺もこれ作りたい」と言ったので、一緒に買い物に行き、一緒にケーキを作った。
そんな嶺二くんは意外にも不器用で。
すぐに手を滑らして包丁を落としたり、チョコレートを湯煎にかけている時に重みでお湯を中に入れてしまったり…
失敗の度に「花の教え方が悪い」と私のせいにされたけど、私はこんな長い間嶺二くんと一緒にいて罵られ続けたことがないので、なんだか慣れてしまった。
ただ素直な性格じゃないだけだと、少し嶺二くんのことを理解できた気がした。
そして陽介くんはというと、私と嶺二くんがケーキを作っている間、ずっと私のすぐ側でにこにことしていた。
何をするでもなく、ずっと。
すごく変だったし、落ち着かなかったけど、「陽介くん、リビングで座って休んだら?」と何回提案しても「ううん、ここにいたい。」と断られたので、落ち着かなかった。
そして2回目に作ったチョコレートケーキはほぼ全部嶺二くんが平らげていた。
そのあと3人はお酒を持って陽介くんの部屋に向かった。
私も部屋に戻ったのだけど、隣の部屋が元気だったのであまり寝付けなくて早起きすることにした。
まあ、元気なのはいいことだよね。
「あーん、花ちゃんおはよう!」
と、突然私の後ろからぎゅっと誰かが抱きしめてきた。
優しいお花の匂い。
「梨香さんおはようございます。」
それは住人の1人、相沢梨香さんだとすぐに分かった。
「あああ癒される~」
ぎゅうっとぬいぐるみを抱き潰すような力の強さに思わず「ぐえ」と可愛くない声がもれる。
梨香さんは長身でスタイルがよくて美人さんだ。
でもそれを鼻にかけた様子は一切なくて、親しみやすくサバサバとした素敵な女性だ。
普段は百貨店のハイブランドコスメストアで美容員として働いている。
「昨日陽介達うるさくなかった?私の部屋までちょっと声聞こえてたもん!花ちゃんの部屋だったら絶対うるさかったよね!」
きえーっと奇声を発して「もう、ガツンと言ってやりな!」と私の頭を撫でくり回す。
「あはは!私、どこでもすぐ寝れるので大丈夫でしたよー。」
とちょっとごまかす。
「梨香さん昨日は遅かったですよね。もうすぐ朝ごはんできるのでリビングで待っててくださいね!」
梨香さんの背中をぐいぐい押してリビングのソファーに案内する。
「あーん、花ちゃんは本当にいい子!」
大好きっ!とがばっと抱きしめられる。私も抱きしめ返して、そして、いつも梨香さんの細さにびっくりする。
再び台所に戻ると、そこには砂本さんがいた。
「わあ!砂本さんおはようございます!」
「おはよう花ちゃん。今日はいい天気だねー。」
のんびりとした声で砂本さんはそう言った。
砂本さんは絵本作家さんだ。
名前を探して読んでみたことがあるけど、温かみのある色合いでかかれた絵と、優しい文章が印象的なお話だった。まるで砂本さんが読み聞かせしてくれているような…
じんわりと幸せを感じられる素敵な作品で、私はこっそり砂本さんの絵本を全部集めている。
「これ、持って行っていいかな?」
小松菜のおひたしを指差す砂本さんに私は大きく頷く。
「ありがとうございます。」
「はは、それはいつも僕が言いたいよ。いつも美味しいご飯をありがとう。」
優しく私の頭を撫でてくれる砂本にへへへと笑みを返す。
私はこの夏目荘が大好きだ。
優しくて素敵なみなさん。
陽介くんを含め、この5人の中で私が1番後に夏目荘に入った。
そんな私を温かく、家族のように迎えてくれた人たち。
そんなみなさんのために、私はできることはなんでもしたいのだ。
「ご飯できましたよー!」
そう声をかけると、それぞれリビングの好きな場所にいた梨奈さんと夏目さんが集まってくる。
「あー、今日だき巻き卵ある!」
わあっ!と歓声を上げた梨奈さんに嬉しくなる。
4人で席に着いたところで
「陽介達はまだ寝てるかな?」
夏目さんが既にお箸を持ちながらそう聞いてきた。
「はい、多分」
そう答えると、
「じゃあ先に食べてしまおう!」
その一言で私たちはご飯を食べ始めた。
「みなさん、今日はお休みですか?」
夏目さんは大学教授だから大体土日は休み。だけど、学会などでいない日が多い。
梨奈さんは百貨店勤務なのでいつも忙しそうだ。
砂本さんはもはや休みなどないだろう。
「私は休みだねえ。」
今日はゴルフにでも行こうかなあ。
のんびりとそう言う夏目さん。
「私もね!今日は休みなの!」
やっと!2週間ぶり!と本当に嬉しそうに言った梨奈さんにみんなが「おめでとうございます。」と口にした。
「僕も昨日締め切りだったから今日は何もしないんだー。」
ふふふと砂本さんも幸せそう。
「わー、じゃあ今日は素敵な1日になりそうですね!」
みんな幸せそうで、いい日だ!
「そうだねー。」
「花ちゃんは?」
「私は文化祭なので、たこ焼きを売ってきますね。」
大学の方を指差してそう言った。
「あ、今日からなの!」
うちの大学は来週だねえ。そう言った夏目さんに、梨奈さんが
「え!ちょっと!行きたいんですけど!若い子達の精気吸いたい!」
と恐ろしいことを言う。
「ねえ、夏目さん、砂本さんちょっとだけでいいから一緒に行かない?」
キラキラとした目をしながらそう言う梨奈さんに、他の2人は顔を見合わせて笑った。
「梨奈ちゃんには敵わないねえ。」
「本当ですよ。でも、楽しそうですね。」
大学なんて何年ぶりかな。
穏やかに笑う2人に私もほっこりとする。
「わー!いいですね!私たちの出店にもぜひ来てください!陽介くん達のお店も近いんです。」
そう言って思い出す。
「そういえば陽介くん達、店番いつからなんだろう…」
ただいま既に8時を回っている。
「ははは。じゃあちょっと私が覗きに行こうかな?」
笑みを深めてそう言った夏目さんに
「私行ってきますよ!ついでにご飯も持っていこうかな。」
私はそう言って、大きめのお盆にのせられるだけ料理を乗せて、陽介くんの部屋に向かう。
そしてドアをノックしたけれど、
…
返事がない。
もう一度ノックしてしばらく待つけど返事がない。
「…失礼しまーす。」
小声でそう言い、そっとドアを開ける。
「…っ」
最初に鼻につくのはお酒の匂い。
ちゃっかりベッドを取って寝ている嶺二くんに、机の周りで寝ている陽介くんと山岡くんが目に入る。
私は音を立てないようにそっと机の上にお盆を置く。
そして側で寝ている陽介くんをそっと盗み見する。
起きている時も童顔だけど、寝ている時は更に幼く見える。
まつ毛長いなあ…
カーテンの隙間から光が入って、彼の髪の毛をキラキラと照らした。
「…天使みたい。」
思わずそんな言葉が漏れた。
そしてもう一度、ふわふわの髪の毛に目を向ける。
…いつも触ってみたいと思っていた。
でも、私に触られたら陽介くんがかわいそうだから。
でも…今は寝てるから…
少し魔が差したのかもしれない。
気づくと私は陽介くんの髪の毛にそっと触れていた。
「…わ。」
想像してたよりも少し硬くて弾力のある髪の毛が私の手に心地よくなじむ。
触ってもびくともしない陽介くんに、笑みがこぼれる。
どれくらいそうしてたか分からない。
でも、
「あれ、花ちゃん?」
後ろから聞こえてきた山岡くんの声で私は我に返った。
ばっと陽介くんから手を離し、急いで山岡くんの方へ向き直る。
「おおおおはよう山岡くん!3人とも何時までに出ないといけないか分からなかったから、朝ごはん持ってきたの!ごめんね、よかったら食べてね!」
お盆を指差して急いで立ち上がり、ドアへと向かう。
「花ちゃんありがとう!」
山岡くんの声を背中に受け、私はバタンとドアを閉めた。
「はあー」
ため息をつきながらリビングに戻ると、食事を終えた3人が和やかに話している姿を見てホッとする。
「おっ、みんなまだ寝てたかい?」
私に気づいた夏目さんがそう聞く。
「はい。」
「若いとよく寝れていいね。私は最近5時に目がさめるんだ。」
寂しそうにそう言う夏目さんに笑顔を返しながら自分のお皿を片して台所へ向かう。
「…あ。」
そして炊飯器の前に用意したままのお茶碗が目に入る。
…さっきご飯持っていくの忘れたんだ。
さっきの私の痴態を思い出して気持ちが沈むけど、そんなことは言ってられない。
急いでご飯をよそって再び陽介くんの部屋に向かう。
「ごめん花ちゃん、今からとりに行こうかと思ってたんだ。ありがとう。」
ドアを開けると、ちょうど目の前に山岡くんがいて、私とご飯を見て申し訳なさそうに眉を下げた。
お盆ごとご飯を受け取ってくれた山岡くんに笑顔を返して部屋を出ようとすると…
「花ちゃん。」
いつの間にかドアの側にいた陽介くんが私の手首をきゅっと掴んだ。
びっくりして思わず身体がびくりとしてしまう。
「陽介くん、どうしたの?」
動揺を隠して落ち着いた声でそう聞くと、
「へへへ。」
陽介くんはとろけるような笑みを見せた。
初めて見たそんな笑顔に急激に顔が熱くなる。
あああ一体どうしたの?
視線で?を訴え続けると、
陽介くんはもう一度私の手首をきゅっとすると、手を離した。
「花!この卵焼きおかわり!」
その瞬間耳に飛び込んできた声にはっとする。
急いで部屋を出て、台所に向かう。
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