夏目荘の人々

ぺっこ

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ぽっちゃり女子×犬系男子11

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「…え?」


信じられなくて言葉が出てこない。


ただただ楠田くんを見つめていると、彼の白い肌が色付いていくのが分かる。


あ、照れているんだ。


そう冷静に思うと同時に、楠田くんは私の手を離した。


そしてメガネを押さえる。


「…あの、高瀬さんが、僕のことを恋愛対象として見てないのは知ってるんだけど、その…考えてみてほしいんだ。」


僕と…付き合うこと。


しぼり出すように、小さな小さな声でそう言った楠田くん。


彼の顔はもはやりんごのように真っ赤で…


なぜかその姿に、心がぎゅっとなって、息が苦しくなった。


「…うん、分かった。ありがとう。」


思考回路が停止して、なんとかその言葉をしぼり出す。


そして私たちはどちらともなくそのまま歩き出した。


上の方から、美々ちゃんの熱い視線を感じながら。
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