夏目荘の人々

ぺっこ

文字の大きさ
10 / 29

ぽっちゃり女子×犬系男子10

しおりを挟む
「花ちゃんもプラネタリウム来てたんだ!」


そう言って満面の笑みを浮かべる陽介くん。


思わぬ偶然に私も顔がほころぶけど…


「え!花ちゃん!?久しぶりー!」


陽介くんの隣から聞こえたはつらつとした声にそれは苦笑いに変わった。


「マリちゃん、久しぶりだね!」


明るい色のピタリとしたトップスにスキニーパンツをはいたマリちゃん。


シンプルな服装は彼女の美しさとスタイルの良さをよけい引き出しているようで…


気に入って買ったけど、体型を隠すことを前提に着ているフレアスカートを私はそっと触った。


「ねえ、プラネタリウムどうだった?」


興味津々に聞いてくるマリちゃんに


「うーん、すごい綺麗だと思う!」


実は外の獅子座の写真しか見てないの!


そう言うと


「なにそれー!」


おかしそうに笑うマリちゃん。


マリちゃんはとても優しい。美しいだけじゃない。


気さくで、カベを作らない。


私はマリちゃんが大好きだ。


でも…


ずっと仲よさそうに2人の間で揺れている恋人つなぎをしている手に私の心は痛むばかりだ。


どんどんうつむいていく私の顔。


「花ちゃん、体調でも悪い?」


心配そうに、私をのぞき込んだ陽介くんの顔の近さにどきりとする。


「ううん!全然!元気だよー!」


ぱっと顔を上げて、笑顔を見せる。


「それならよかった。千紗ちゃんと一緒に来てるの?」


安心したように笑った陽介くんは千紗を探すようにきょろきょろ視線をさまよわせたあと、私の横に目を向けた。


そして


「?」


陽介くんが浮かべていた柔和な笑みが、ふっと消えた。


その視線の先をたどると、楠田くんがいた。


いつのまにか美々ちゃんを肩車している。


「どうも、昨日ぶりですね。」


陽介くんに向かってぺこりと会釈する楠田くん。


「あ、ああそうだね!」


それににっこりと笑って返した陽介くんは私の方を見た。


「今日は千紗ちゃんと一緒じゃないんだね。」


笑っているけど、感情の読めない無機質な瞳で私を見る陽介くんに、なぜだか心臓が嫌な音を立てる。


うーん…


なんて答えようか迷っていると、突然楠田くんが私の手を取った。


「高瀬さんは今日、僕達とまわる約束をしてくれていたので。」


失礼します。


楠田くんはぺこりと頭を下げると、私の手を握ったまま歩き出した。


え?なんだろうこの展開。


私は戸惑いながらも後ろを振り向くと楽しそうに笑みを浮かべて手を振っているマリちゃんと、ただ無表情でこちらを見ている陽介くんがいた。


そのまま2人からどんどん遠くなっていく距離。


じっと前を見つめたまま進み続ける楠田くんに戸惑っていると、


「花ちゃんはお兄ちゃんのかのじょ?」


相変わらずなポーカーフェイスだけど、その瞳をらんらんと輝かせている美々ちゃんに上から見つめられ、慌てて否定しようとすると、楠田くんが急に足を止めた。


「うわっ!」


結構なスピードで歩いていたので危うく彼の背中にぶつかりそうになる。


「楠田くん…?」


恐る恐る話しかけると、楠田くんは勢いよくこっちを向いた。


そして、今度は私の両手を彼の両手が優しく包み込む。


…?


「…高瀬さん。」


あまりにも真剣な瞳をして、楠田くんが私を見つめるから、私の背筋が自然と伸びる。


「僕、高瀬さんのことが好きなんだ。」


そして、爆弾を落とした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写と他もすべて架空です。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...