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春
七瀬くんの笑顔
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七瀬くんとは2年生で初めて同じクラスになった。
彼自身はそんなに目立つ人ではなかった。身長は高いけど。ただ、七瀬くんの隣にはいつも学年一かわいいと言われている美咲ちゃんがいたので、ある意味で有名人だった。
ただ、七瀬くんは友達が多いらしく、いつも友人と一緒に楽しそうに笑っている姿が印象的だった。
そんな七瀬くんと初めて接点を持ったのは2学期最初の席替えだった。
七瀬くんは窓際の一番端、私はその隣になった。
特に何事もなく過ぎていく毎日。七瀬くんと話すと言っても、あいさつくらいだった。
そんなある日…
「津島」
世界史の授業中、ささやき声が耳に聞こえた。
横を見ると七瀬くんが眉を下げて
「ごめん、教科書忘れちゃった……見せてもらってもいい?」
申し訳なさそうにそう言った。
「うん、もちろん。」
私は了承し、机を寄せて真ん中に教科書を置いた。
その後、そのまま授業を聞いていると、机が小さく震えだした。
え?何、地震かな?
そう思い周りを見渡すけれど、誰も何も感じていないようだった。
「ねえ、七瀬くん、地震…」
思わずそう話しかけると
肩を震わせている七瀬くんがいた。
えっ…
「七瀬くん大丈夫?体調悪い?」
寒いのかな?
心配になってそう尋ねると、
「ち、違う…津島、これ…!」
そう言って七瀬くんが指をさした方を見ると…
「っ!」
そこには私の手によってかわいく(私基準で)、時にはかっこよく(これも私基準)姿を変えられてしまった世界の偉人たちがいた。
そこにシンプルな肖像画があったからつい…!
だが人に見られるとは予想していなかった。
クラスメイト、しかも男の子に…!
きっとからかいのネタにされるんだわ…
顔から火が出る思いで俯くと、
「いいね!これすっごくいい!!」
楽しそうに弾んだ声に、思わず顔を上げた。
「…っ。」
七瀬くんは垂れ気味の瞳と、大きな唇がチャームポイントのかわいらしい顔立ちの男の子だ。
ここまで惹きつけられる笑顔は今まであっただろうか…
かすかに色づいた頬、さらに垂れ下がった瞳はキラキラとしていて今にも雫が溢れ落ちそうだ。右頬にだけできるえくぼは彼の笑顔をさらに幼く見せた。
…初めて見た至近距離の七瀬くんの笑顔に、私は一気に心を奪われた。
…
っていうか私、七瀬くんによく面白いって言われるけど、これって褒められてるのかな?
思わず眉をひそめてしまう。
あの日から私は、七瀬くんを密かに想い続けている。
誰にでも優しくて、明るい。そしてスポーツマン。
この3拍子が揃った七瀬くんは、人気がある。
ただモテるというよりは…
「明日太ー!チョコあげる!」
「おっ、ありがとう!」
「このペンギン、明日太にそっくりじゃねえ?」
「…おーう。かわいいじゃないか。」
かわいがられている、という感じに近いかもしれない。
「小田、手伝うよ。」
「…あ、ありがとう。」
でも、今も背の低い小田さんが黒板を消してると、さっと七瀬くんが変わっている。
ああいうところ、好きだなあ。
きっかけは笑顔だったが、七瀬くんは本当に素敵な人だと思う。
「あ、芽衣子ちゃん、シャーペン落としたよ!」
ぼーっと七瀬くんを見つめていると、鈴のような声が耳に届いた。
はっとして横を見ると、今私の横を通りかかったらしい美咲ちゃんが拾ってくれたシャーペンを差し出しながら微笑んでいた。
「わっ!ごめん、ありがとう。」
私も笑顔で受け取ると、
「ううんっ!」
美咲ちゃんもさらににっこりと笑う。
…なんでこんなにかわいいんだろう?
大きなアーモンドアイに桜色の小さな唇、白い肌に綺麗な栗色の髪…ふわふわの。
ほとんどとれてしまった私のパーマとは違い、美咲ちゃんのウエーブは完璧だ。
「うわー!あの子めっちゃかわいい!」
「あー、美咲ちゃんでしょ?」
入学当初から美咲ちゃんは注目の的だった。
「でも、美咲ちゃん、幼馴染のことずっと好きらしいよ~。」
「えー、一途なんだねー。」
2年生になって、初めて2人を並んで見た時、瞬時にお似合いだなと思ったことをよく覚えている。
小柄な美咲ちゃんと長身の七瀬くん。身長の差はすごいものの、彼らのまとう柔らかい雰囲気は似ていた。
相手の言うことにいつも笑っていて、楽しそうで、信頼し合っていることがよく見てとれた。
いいの、私は見てるだけで充分だから。
もやもやとした感情はすぐに蓋をする。
欲を持ってはいけない。
傷付くのは嫌だから。
「さっきから明日太のことずっと見てるけど、どうかした?」
ひっ!
私の顔を覗き込み、そんな恐ろしい質問をする美咲ちゃんにぞっとする。
「いいいいええ!いいえ!あの、さっき黒板をけしてたから、優しいなあと思っただけ!」
こんな時でも正直な感想しか言えない私にうんざりする。
だめ!だめよ!美咲ちゃんが不安に思ったらどうするの…!
「そうなんだ!確かに優しいよね!」
しかし、私の思いとは裏腹に、美咲ちゃんは嬉しそうに笑った。
あれ…?
じゃあ行くね!
と去っていく美咲ちゃんに首をかしげる。
はっ、そうか!
私みたいなのはライバルにもならないってことか!
気にする必要もないんだ!
そう理解した瞬間、ほっとしたと同時に、なんだか悲しい気持ちになった。
でもなんか複雑だなあ…
そう思い顔をうつむかせた私を、美咲ちゃんが不敵な笑みを浮かべて見ていることなどこの時の私は知る由もなかった。
彼自身はそんなに目立つ人ではなかった。身長は高いけど。ただ、七瀬くんの隣にはいつも学年一かわいいと言われている美咲ちゃんがいたので、ある意味で有名人だった。
ただ、七瀬くんは友達が多いらしく、いつも友人と一緒に楽しそうに笑っている姿が印象的だった。
そんな七瀬くんと初めて接点を持ったのは2学期最初の席替えだった。
七瀬くんは窓際の一番端、私はその隣になった。
特に何事もなく過ぎていく毎日。七瀬くんと話すと言っても、あいさつくらいだった。
そんなある日…
「津島」
世界史の授業中、ささやき声が耳に聞こえた。
横を見ると七瀬くんが眉を下げて
「ごめん、教科書忘れちゃった……見せてもらってもいい?」
申し訳なさそうにそう言った。
「うん、もちろん。」
私は了承し、机を寄せて真ん中に教科書を置いた。
その後、そのまま授業を聞いていると、机が小さく震えだした。
え?何、地震かな?
そう思い周りを見渡すけれど、誰も何も感じていないようだった。
「ねえ、七瀬くん、地震…」
思わずそう話しかけると
肩を震わせている七瀬くんがいた。
えっ…
「七瀬くん大丈夫?体調悪い?」
寒いのかな?
心配になってそう尋ねると、
「ち、違う…津島、これ…!」
そう言って七瀬くんが指をさした方を見ると…
「っ!」
そこには私の手によってかわいく(私基準で)、時にはかっこよく(これも私基準)姿を変えられてしまった世界の偉人たちがいた。
そこにシンプルな肖像画があったからつい…!
だが人に見られるとは予想していなかった。
クラスメイト、しかも男の子に…!
きっとからかいのネタにされるんだわ…
顔から火が出る思いで俯くと、
「いいね!これすっごくいい!!」
楽しそうに弾んだ声に、思わず顔を上げた。
「…っ。」
七瀬くんは垂れ気味の瞳と、大きな唇がチャームポイントのかわいらしい顔立ちの男の子だ。
ここまで惹きつけられる笑顔は今まであっただろうか…
かすかに色づいた頬、さらに垂れ下がった瞳はキラキラとしていて今にも雫が溢れ落ちそうだ。右頬にだけできるえくぼは彼の笑顔をさらに幼く見せた。
…初めて見た至近距離の七瀬くんの笑顔に、私は一気に心を奪われた。
…
っていうか私、七瀬くんによく面白いって言われるけど、これって褒められてるのかな?
思わず眉をひそめてしまう。
あの日から私は、七瀬くんを密かに想い続けている。
誰にでも優しくて、明るい。そしてスポーツマン。
この3拍子が揃った七瀬くんは、人気がある。
ただモテるというよりは…
「明日太ー!チョコあげる!」
「おっ、ありがとう!」
「このペンギン、明日太にそっくりじゃねえ?」
「…おーう。かわいいじゃないか。」
かわいがられている、という感じに近いかもしれない。
「小田、手伝うよ。」
「…あ、ありがとう。」
でも、今も背の低い小田さんが黒板を消してると、さっと七瀬くんが変わっている。
ああいうところ、好きだなあ。
きっかけは笑顔だったが、七瀬くんは本当に素敵な人だと思う。
「あ、芽衣子ちゃん、シャーペン落としたよ!」
ぼーっと七瀬くんを見つめていると、鈴のような声が耳に届いた。
はっとして横を見ると、今私の横を通りかかったらしい美咲ちゃんが拾ってくれたシャーペンを差し出しながら微笑んでいた。
「わっ!ごめん、ありがとう。」
私も笑顔で受け取ると、
「ううんっ!」
美咲ちゃんもさらににっこりと笑う。
…なんでこんなにかわいいんだろう?
大きなアーモンドアイに桜色の小さな唇、白い肌に綺麗な栗色の髪…ふわふわの。
ほとんどとれてしまった私のパーマとは違い、美咲ちゃんのウエーブは完璧だ。
「うわー!あの子めっちゃかわいい!」
「あー、美咲ちゃんでしょ?」
入学当初から美咲ちゃんは注目の的だった。
「でも、美咲ちゃん、幼馴染のことずっと好きらしいよ~。」
「えー、一途なんだねー。」
2年生になって、初めて2人を並んで見た時、瞬時にお似合いだなと思ったことをよく覚えている。
小柄な美咲ちゃんと長身の七瀬くん。身長の差はすごいものの、彼らのまとう柔らかい雰囲気は似ていた。
相手の言うことにいつも笑っていて、楽しそうで、信頼し合っていることがよく見てとれた。
いいの、私は見てるだけで充分だから。
もやもやとした感情はすぐに蓋をする。
欲を持ってはいけない。
傷付くのは嫌だから。
「さっきから明日太のことずっと見てるけど、どうかした?」
ひっ!
私の顔を覗き込み、そんな恐ろしい質問をする美咲ちゃんにぞっとする。
「いいいいええ!いいえ!あの、さっき黒板をけしてたから、優しいなあと思っただけ!」
こんな時でも正直な感想しか言えない私にうんざりする。
だめ!だめよ!美咲ちゃんが不安に思ったらどうするの…!
「そうなんだ!確かに優しいよね!」
しかし、私の思いとは裏腹に、美咲ちゃんは嬉しそうに笑った。
あれ…?
じゃあ行くね!
と去っていく美咲ちゃんに首をかしげる。
はっ、そうか!
私みたいなのはライバルにもならないってことか!
気にする必要もないんだ!
そう理解した瞬間、ほっとしたと同時に、なんだか悲しい気持ちになった。
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