煉獄の歌 

文月 沙織

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十三

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 何が良いのか敬にはさっぱりわからず、怒鳴りつけてやりたいが、声をあげる気力がわかない。そんな敬を見下ろす瀬津の目はひどく冷たく、瞳のなかでは青白い炎が燃えているようだ。
「若頭、あなたが欲しいのは、二流、三流の男娼ですか? この子を一流の……最高級の商品にしたくありませんか?」
「そりゃ、もちろん一流の男娼、最高級の商品が欲しいさ」
「それなら、それだけの手間や情熱をかけてください」
 自分をまったく無視して交わされる男たちの身勝手な言い草に、敬は悔し涙をながしたが、それはむなしく座布団にこぼれ、布地の色を変えるだけだった。
「そうか。それもいいな。俺の手で、男娼に堕としてやろう。これから手間暇かけて、俺自身の手と肉で、一流の男娼に仕込んでやるぞ。……それが最高の復讐だ……」
 最後の呟きを気にするいとまもなく、敬は瀬津の手によって腰を高々と上げさせられる。
「ううっ……! は、はなせ!」
「よしよし。おお、可愛い蕾だ。待ってろ、このいじらしい菊の蕾に、今俺のものをぶちこんでやるからな」
 わざとのように下卑た言葉を吐く瀬津に、敬はおぞましさのあまり全身をこわばらせた。
「は、はなせ! 嫌だ、嫌!」
 上半身は大林におさえこまれ、逃れるすべもなく、瀬津の手によって脚をぎりぎりまで開かされる。
しかも、この屈辱的な姿のすべてを鬼若に見られているのだ。
 いっそ、死にたい、と思うほどの恥辱と羞恥にさいなまれ、さらにまた指でほぐされ、あられもなく身をよじる。
 やっと指が離れたかと、一瞬かすかに安堵した敬だが、次の瞬間には、指より太く固いものが、無垢な場所にあてがわれた。

「ひぃぃぃ――!」
 刹那せつな、敬は見栄も体裁もわすれて不様に悲鳴をあげていた。
「ひっ! ひぃっ! いや、い、やだ!」
 こらえきれなかった涙が滂沱ぼうだのごとく頬を流れる。
 そんな悲惨な状態の敬にひとかけらの憐憫の情も感じることはなく、瀬津はおのれの欲望を押し込んでくる。
 大林も鬼若も止めようとはしない。それどころか、鬼若の冷ややかな目は、かすかに歓喜を秘めてきらめいた。
「ほう……。やはり、素質はあるようですね」
 敬自身、信じられないことだが、これほど心身に耐えがたい苦痛を押しつけられているというのに、若々しい芽はきざしかけているのだ。
 媚薬の力もあるが、瀬津が力まかせに押し込むかに見せて、実はたくみに敬の官能を引きずりだしていることに気づかないのは敬だけだった。大林も鬼若も、さして驚きもせず、敬の肉体の変化を見守っている。
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