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八
相手は唇を噛む。
一瞬、その双眼に、先ほどの大林のように翳が走ったが、夜の世界に生きる男らしく、すぐに血の通いを見せないような冷酷な顔を見せた。よく見ると、けっこう整った顔立ちだが、無表情になると厳しさがまさり、さすがに敬は口出しできなくなる。
菅井の手が伸びてくる。
ますます怯える小虎に、敬の口は勝手に叫びだした。
「あ、あの、俺では駄目ですか? 俺がお相手します」
思いもよらぬことを言われたように菅井が敬を凝視してくる。
何を言っているのだ、この小僧は、と目が云っている。
「敬……」
小虎が、顔をあげ、敬を見つめる。何か言おうとしてか、唇が開いた。
だが、菅井の方が先だった。
「おまえは、坊のなんなんだ? まさか、坊、こいつと妙な関係になっているんじゃないだろうな」
小虎を見る菅井の目は険しい。
「まったく、油断できねぇな。俺が迎えに来るのがちょっと遅かったら、もう、こんな念兄を持っているのか?」
怒気を込めて菅井の吐いた〝念兄〟と言う古い、あまりに意外な言葉に敬は目をぱちくりさせた。
菅井の目には、自分たちがそういう関係に見えるのだろうか。
「おい、綺麗な兄ちゃん、言っておくが、この坊は大磯組のゆいいつの跡取りだ。あんたに渡すわけにはいかねぇからな」
「ち、ちがいます……」
敬は戸惑い、内心驚愕した。
あきらかに菅井は自分に嫉妬しているのだ。
「ほら、坊、おいで」
「うわっ!」
敬が戸惑っていた隙に、あっさりと菅井は小虎を抱きあげると、横抱きにかかえあげた。
「は、はなせよ! はなせったら!」
「ほら、行くぞ! 俺は客だぞ」
その後……二人が消えた室からは、やがて小虎の啜り泣きの声が、悲しい歌のように屋敷の廊下に響いてきた。
いてもたってもいられない敬が、廊下をうろうろしていると、先ほどの男が声をかけてきた。
「心配するな、兄ちゃん、そんな乱暴なことはしないやろ。なんせ、若頭は、坊にぞっこんやさかいな」
斉藤と呼ばれていた男は、のんきそうに煙草をふかす。ヤクザというよりも、どこかの商店の親父、という風情だ。
一瞬、その双眼に、先ほどの大林のように翳が走ったが、夜の世界に生きる男らしく、すぐに血の通いを見せないような冷酷な顔を見せた。よく見ると、けっこう整った顔立ちだが、無表情になると厳しさがまさり、さすがに敬は口出しできなくなる。
菅井の手が伸びてくる。
ますます怯える小虎に、敬の口は勝手に叫びだした。
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何を言っているのだ、この小僧は、と目が云っている。
「敬……」
小虎が、顔をあげ、敬を見つめる。何か言おうとしてか、唇が開いた。
だが、菅井の方が先だった。
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小虎を見る菅井の目は険しい。
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怒気を込めて菅井の吐いた〝念兄〟と言う古い、あまりに意外な言葉に敬は目をぱちくりさせた。
菅井の目には、自分たちがそういう関係に見えるのだろうか。
「おい、綺麗な兄ちゃん、言っておくが、この坊は大磯組のゆいいつの跡取りだ。あんたに渡すわけにはいかねぇからな」
「ち、ちがいます……」
敬は戸惑い、内心驚愕した。
あきらかに菅井は自分に嫉妬しているのだ。
「ほら、坊、おいで」
「うわっ!」
敬が戸惑っていた隙に、あっさりと菅井は小虎を抱きあげると、横抱きにかかえあげた。
「は、はなせよ! はなせったら!」
「ほら、行くぞ! 俺は客だぞ」
その後……二人が消えた室からは、やがて小虎の啜り泣きの声が、悲しい歌のように屋敷の廊下に響いてきた。
いてもたってもいられない敬が、廊下をうろうろしていると、先ほどの男が声をかけてきた。
「心配するな、兄ちゃん、そんな乱暴なことはしないやろ。なんせ、若頭は、坊にぞっこんやさかいな」
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