燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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男娼訓練 一

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「ううっ……」
 ウィリスは額ににじむ汗を感じた。
 両手は背で細縄でしばられている。あてがわれた布の上に顔を伏せ、剝きだしの臀部を上げるという、羞恥と屈辱に死にそうにになるような格好を強いられていた。
「いい、じっとしているのよ」
 タルペイアの声が聞こえたかと思うと、敏感な箇所に、ねっとりとした冷たいものを感じた。
「ああっ……」
 消え入るような悲鳴が意志に反して唇からこぼれる。
「ふっ……! ううっ……」
 女の細い指が、リィウスの繊細な、それこそ身体のなかで一番繊細なところを穿うがつ。
「あっ、ああ……!」
 すでに道具である程度慣らされているので、痛みこそないが、だがあたえられる羞恥と恥辱はたまらない。娼婦の手によってもてあそばれている自分が信じられない。
「や、やめ……」
 相手が聞いてくれるわけもなく、指の動きが激しくなる。
「くぅ……!」
 リィウスは喘ぎ、頭を少し動かした。
 いや、いや、と無意識に子どものような仕草で布に押し付けたままの頭を振る。
 無意識の行為だったが、その様はひどくなまめかしく、控えていたアスクラに唾を飲ませたことをリィウスは気づいていない。
「……きれい」
 リキィンナが、かすかに汗ばみはじめているリィウスの細い脚を見つめ、子どものように素直に自然に感想を吐く。その声がかすかに耳に届いて、リィウスはさらにたかぶる羞恥に涙ぐんだ。
 娼婦たちや奴隷の目に嬲られている今のおのれの姿のあまりの惨めさ、浅ましさに、いっそ消え行ってしまいたいが、それもできず、ただ悔しさをこらえて、彼女たちが望む、もっとも恥ずかしい醜態を晒しつづけねばならないのだ。
 身を売るときめたとき、ある程度は覚悟していが、まさかこれほどおぞましい目に合わされるとは、リィウスの生きてきた今までの人生の価値観では、想像することさえできなかった。
「うう……」
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