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新床準備 一
しおりを挟む「いい? 下準備をするわよ」
リキィンナがかすかに酒の臭いを振りまきながら、帳をかきわけリィウスの前に姿を見せた。
「これはね、貴重な香料を練ってつくった、特別なお薬よ」
リキィンナの突き出した掌には、赤い玉のようなものがある。
リィウスはふと嫌なものを感じて身をすくませた。
すでに身体を清め、身体には香油を塗りこまれている。嫌でたまらない薄化粧も強制的にほどこされ、客をむかえる準備は否応なしに終わっていたが、さらに目の前に出された奇妙な練香は、ぎりぎりの所で踏ん張っているリィウスの神経をさらに傷つけた。
「これを……入れておくのよ」
言葉の意味するところを察して頬が燃えた。
「そ、そんな……」
「これを入れておくと、気持ちよくなって、楽に客を受け入れられるわよ」
リキィンナの顔は――多少酔ってはいても――いつになく真面目で、揶揄も嘲笑もなく、それがいっそうリィウスを困惑させる。
「さ、入れるから腰を突き出して」
「……!」
当たり前のようにあっさり言われて、リィウスは涙ぐみそうになる。
つい、目は扉口へと向かってしまったが、そこには、いつからいたのかアスクラが控えており、きびしい目でリィウスを睨みつけている。
逃げようがない。リィウスは震えながら、リキィンナを前にして、言われたとおり屈辱的な姿勢を取った。
娼婦のまえに臀部を突き出している今の自分が信じられない。悪い夢を見ているようだ。
いや、この館へ来てからの日々はまさに醒めない悪夢のなかにほうりこまれたようなものだった。
「裾をまくりあげてよ。ほら、早くして、お客が待っているのよ」
「あっ……!」
乱暴な仕草で衣をたぐられ、リィウスはあわてた。いつになくリキィンナの動作は手荒い。
リィウスは瞑目した。
臀部に風を感じ、羞恥に頬が痛む。
「うっ……」
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