燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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悦楽競演 一

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(こんな、こんな……、ああ!)
 本能的にのけぞって逃れようとしたが、左右の男たちの無骨な腕におさえこまれ、いたずらに身体を揺らしただけに終わった。その動きに連動するように脚の下の逞しい身体もふるえる。そこに生じる刺激にリィウスは気を失いそうになった。
 狂わないでいられる自分が不思議だった。
「あっ……、ああっ……!」
 朦朧としつつつも、首を振った瞬間、眼下に、剣闘士の肉体が見える。
(あ……)
 無数の傷跡が目に入った。戦いで得た傷ではなく、おそらくは鞭打たれた傷跡だろう。
 その無残な傷跡は、この誇り高い戦士が、このような辱しめを受けることになるまで、どれほど抗い、戦ったかを示している。だが、トュラクスほどの男であっても、ウリュクセスのような闇の権力をにぎっている妖物相手にはかなわないのだ。
 トュラクス一人だけなら、仮に肉体は逃れられずとも、自害して魂は逃れることはできたかもしれないが、卑劣なウリュクセスは、彼の最愛の恋人の命と運命を握っており、愛するミュラを残しては死ぬこともできなかったのだろう。
 先ほどの女剣闘士アキリアにしても、自分だけではなく、かけがえのない人を人質に取られ、身動きできず、ウリュクセスたちの思いどおりにならざるを得ないのだ。そうやって、狙った獲物の、大切な相手をも毒牙にかけて、物事を思いどおりに動かすのがウリュクセスのやり方なのだろう。リィウスは吐き気がしてきた。
 だが、今はウリュクセスへの恨みや憎しみよりも、下肢から伝わってくるトュラクスの熱がたまらない。
(熱い……)
 生命なき木馬とちがって、まぎれもない血と熱をもった男の身体が、リィウスの悶えに引きずられるように、かすかに動く。その動きに合わせて、今度はリィウスが動かざるをえない。
「はぁ……!」
 思わずもらした声に、熱と、かすかな甘さがふくまれていることを、周囲の拷問者たちは悟ったようだ。
「おお、息が合ってきたようだね。その調子、その調子」
 嫌な笑い声をたてながら、ウリュクセスが、リィウスの繊細な分身に手を伸ばしてきた。
「ひっ……!」
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