燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 タルペイアは一呼吸おいて、吐き出すようにあとの言葉をつづけた。
「うちの店の売れっ子と、乳繰り合っていたなんて!」
 タルペイラらしくない、というか、タルペイアらしいというか、下品で直截な表現に、カニディアは目を丸め、リキィンナは苦笑した。
 さらに、怒りにもだえるようにタルペイアは言いつのる。
「あんなかぼそい身体で、あの歳で、まさか種をつけるなんて考えられないわ!」
「……つまり、その、コリンナは男になっていたんだね」
「女の部分もあるけれどね」
 ふふふ……、と意味ありげに笑ってリキィンナは口をはさむ。魔女と呼ばれるような海千山千の女が心底おどろいているのがおもしろい。 
「へぇぇ。それでいて、あんたみたいな手練れの娼婦を満足させられるんだね」
 リキィンナは苦笑した。 
「うーん、満足は……してないけれど。いえ、したかしら。正直、嫌な客とやるより、よっぽど楽しかったわね。まぁ、相手は嫌がっていたけれどね」
「その、嫌がる相手を、あんたは無理やりに?」
 おもしろそうに聞き耳たててくる様子は、町の平凡な女と変わらない。リキィンナはことこまかくおのれのみそかごとを説明してやった。今さら恥じらうようなリキィンナではない。むしろ、世界の秘密を知っているような、この目の前の妖しげな女が、若い娘のように頬を火照らせ聞き入ってくる様子がおもしろい。
 タルペイアが、いい加減にしなさい、と辟易するほどに充分説明してやった。
 思い出すと身体が熱くなり、妙なときめきすら感じる。
 初心うぶな少年を手玉にとったような熟練の娼婦らしい優越感と、損得勘定ぬきでかさねた情事を自慢してやりたいという複雑な女心も燃える。
(そうよ。人は笑うかもしれないけれど、私はけっこうコリンナが好きだったのだわ)
 年甲斐もなく少年に恋したような心持でもあれば、美しい乙女を想う女性同性愛者の気分でもある。リキィンナ自身は自覚していないが、そういった性癖も実はあったのかもしれない。
「で、そのコリンナはどうしたんだい?」
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