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再会 五
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「よ、よせ! いやだ!」
「綺麗にしてやろうと言うのだ。ダリク、しっかり押さえておけ」
「は、はなせ、いやだ、さわるな!」
わめき散らすサイラスを押さえつけると、ディリオスは腰に佩いでいる短刀でサイラスのまとっていた襤褸布を切り咲いていく。
「ああ……」
西方風の下衣(コット)も切り裂かれ、そこに一糸まとわぬ、生まれたままのサイラス=デルビィアスがあらわれた。
「くぅ……」
サイラスが悔し気に唇を噛んでいるのがわかる。もはやダリクが押さえていなくともサイラスは頭を下げ、腰をかがめ、どうにか身体を隠そうとする。
身のまわりのことをすべて人にまかせる貴族は、庶民とちがって羞恥の感情が薄いと言われているが、それはやはり自分の召使を前にしてのことであって、見知らぬ男、それも自分を買った男や、かつての部下であった男の目に裸体を晒されるのは、やはり屈辱のようだ。薄黒く汚れた顔が、ほんのり赤く羞恥の色に染まる様は、どんな美女よりも艶麗で、ダリクは雲の上の人間だったサイラスのこんな惨めな姿を直視していることに不思議な心持ちになってきた。
「どう? うまくいっている?」
マーメイが侍女らしき少女をともなって浴場に入ってきた。彼女の右手に樺の鞭があることが、ダリクの気をひく。
「ああ、今から洗うところだ」
「本当に臭いわねぇ。リリ、湯を」
マーメイは弓型の眉をゆがめて、少女に命令する。
「はい」
リリと呼ばれた亜麻色の髪を背に垂らしている娘は、てきぱきと隅にあった木の桶で湯をすくうと、サイラスの頭上からかけていく。
「うっ……」
身をかがめて年下の少女にされるがままに湯をかけられ、髪からしずくを垂らしているサイラスには、かつてのアルディオリアの美将軍としてもてはやされていた頃の威光はまるでない。
「今日はリリに洗わせるけれど、次からはダリク、おまえにしてもらうわよ。リリのすることをよく見ていなさい」
リリは次々と湯をサイラスにかける。全身満遍なくかける。頭から湯水をしたたらせ、サイラスがぶるぶると震えている。
(まるで、濡鼠だな)
軽蔑するように内心で毒づいたダリクだが、リリが手際よく石鹸を泡立て、その泡をサイラスの全身になすりつけるようにして彼を洗っていくのを見ているうちに、目を見張った。
「あら、やっぱり」
マーメイの声には喜びがこもっている。
さらにリリがすすぎの湯を幾度となくかけると、薄暗い浴場に光の玉が浮かびあがってきた。
「まぁ、なんて素晴らしい金髪。これは売れるわ!」
ダリクは圧倒されたように、うずくまっているサイラスを見下ろした。細身とはいえ、さすがに武官だっただけあって引き締まった背は白く瑞々しく、そのうえに金の濡れ髪がからみつく様は、なんともいえず麗しい。
「色も白いわねぇ……。まるで、白い大きな玉のうえに黄金の――東方の龍がのたうっているようじゃない」
マーメイは詩的な言葉を吐いて感嘆した。
ほのかにゆらぐ湯気も、まるで霞のようにサイラスをとりまき、奴隷であるはずの彼を神秘的にすら見せている。
ダリクは目をぱちぱちさせながら、かつての上官であり、今や虜囚の身となって恥辱にふるえつづける男の裸体をながめた。
「綺麗にしてやろうと言うのだ。ダリク、しっかり押さえておけ」
「は、はなせ、いやだ、さわるな!」
わめき散らすサイラスを押さえつけると、ディリオスは腰に佩いでいる短刀でサイラスのまとっていた襤褸布を切り咲いていく。
「ああ……」
西方風の下衣(コット)も切り裂かれ、そこに一糸まとわぬ、生まれたままのサイラス=デルビィアスがあらわれた。
「くぅ……」
サイラスが悔し気に唇を噛んでいるのがわかる。もはやダリクが押さえていなくともサイラスは頭を下げ、腰をかがめ、どうにか身体を隠そうとする。
身のまわりのことをすべて人にまかせる貴族は、庶民とちがって羞恥の感情が薄いと言われているが、それはやはり自分の召使を前にしてのことであって、見知らぬ男、それも自分を買った男や、かつての部下であった男の目に裸体を晒されるのは、やはり屈辱のようだ。薄黒く汚れた顔が、ほんのり赤く羞恥の色に染まる様は、どんな美女よりも艶麗で、ダリクは雲の上の人間だったサイラスのこんな惨めな姿を直視していることに不思議な心持ちになってきた。
「どう? うまくいっている?」
マーメイが侍女らしき少女をともなって浴場に入ってきた。彼女の右手に樺の鞭があることが、ダリクの気をひく。
「ああ、今から洗うところだ」
「本当に臭いわねぇ。リリ、湯を」
マーメイは弓型の眉をゆがめて、少女に命令する。
「はい」
リリと呼ばれた亜麻色の髪を背に垂らしている娘は、てきぱきと隅にあった木の桶で湯をすくうと、サイラスの頭上からかけていく。
「うっ……」
身をかがめて年下の少女にされるがままに湯をかけられ、髪からしずくを垂らしているサイラスには、かつてのアルディオリアの美将軍としてもてはやされていた頃の威光はまるでない。
「今日はリリに洗わせるけれど、次からはダリク、おまえにしてもらうわよ。リリのすることをよく見ていなさい」
リリは次々と湯をサイラスにかける。全身満遍なくかける。頭から湯水をしたたらせ、サイラスがぶるぶると震えている。
(まるで、濡鼠だな)
軽蔑するように内心で毒づいたダリクだが、リリが手際よく石鹸を泡立て、その泡をサイラスの全身になすりつけるようにして彼を洗っていくのを見ているうちに、目を見張った。
「あら、やっぱり」
マーメイの声には喜びがこもっている。
さらにリリがすすぎの湯を幾度となくかけると、薄暗い浴場に光の玉が浮かびあがってきた。
「まぁ、なんて素晴らしい金髪。これは売れるわ!」
ダリクは圧倒されたように、うずくまっているサイラスを見下ろした。細身とはいえ、さすがに武官だっただけあって引き締まった背は白く瑞々しく、そのうえに金の濡れ髪がからみつく様は、なんともいえず麗しい。
「色も白いわねぇ……。まるで、白い大きな玉のうえに黄金の――東方の龍がのたうっているようじゃない」
マーメイは詩的な言葉を吐いて感嘆した。
ほのかにゆらぐ湯気も、まるで霞のようにサイラスをとりまき、奴隷であるはずの彼を神秘的にすら見せている。
ダリクは目をぱちぱちさせながら、かつての上官であり、今や虜囚の身となって恥辱にふるえつづける男の裸体をながめた。
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