サファヴィア秘話 ―月下の虜囚―

文月 沙織

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黄金の秘密 五

「マーメイ様、そんな乱暴なことなさらなくても。言うのが嫌だというのなら、身体に訊いてみればよいのですわ」
 
 リリがとりなすように言うと、そっと膝をおり黒色の裾を床につけ、サイラスの股間のものに己の細い指をむける。

「あっ……、ああ!」
 男根と呼ぶにはあまりに繊細な、その鴇色ときいろめいた肉の芽を細い指でそっと扱く。

「おっ……出てきたぞ」
 呟いたのはディオリスだった。
 豆の皮が割れるようにして、サイラスの秘めていた部分が男女四人のまえに顔を出す。

「あら、可愛い」
 その言葉にサイラスはこれ以上ないほど顔を赤くした。涙目になっている。

 向かい合っているディリオスは、学者のような目で、揶揄することも侮蔑することもなく、虜囚の異形の性器を検分するように見ている。つられるようにダリクもまじまじと、きまぐれな神の作りたもうた天然の芸術品を凝視していた。

「ああ……やめろ、いやだ……」
 いや、いや、とまた首をふってうろたえているサイラスを見るダリクの目には、一抹いちまつの哀れみが浮かんですぐ消えた。次にわいてきたのは怒りである。
 
 かつて、真紅に漆黒の半人半馬ケンタウロスをあしらった国旗のもと、白馬にまたがり大地をかけた勇士のすがたが今の惨めなサイラスにかさなる。馬頭ばとうをかたどった銀の兜のしたに流れる黄金の髪、鎖帷子くさりかたびらに白絹の衣、腰にはダイヤモンドを散りばめたさやの長剣。絵のような麗姿れいしをほこったアルディオリアの若き英雄はどこへ行ってしまったのか。

 今、ここにいるのは娼婦と下級兵たちに嬲られる美しく哀れな丸裸の奴隷である。亡国の貴族、敗軍の将の悲哀と無残さにあふれている。

(こんな醜態をさらしてまで生きたいのか? なぜ、戦で死ななかった? なぜ、アルディオリア滅亡の折に自害しなかったのだ? こんな、不様な姿をさらして、なぜ生きている?)
 
 幾百幾千の戦士たちを、その一声ひとこえで死地に向かわせ血を流させた責任者でありながら、国が負けて滅んだときに戦死も自害もせず、命欲しさに生き延びて、この地にまで流れてきて、こんな痴態をさらしているのだ。奇妙な悔しさにダリクはいっそうサイラスへの憎しみを深めた。それは、ダリク自身はまったっく意識していないが、どこか信じていた神に救済を得られず、見捨てられたと嘆く信徒の想いにも似ている。
 
 ダリクがそんな物思いに沈んでいる間にも、リリの指戯しぎはすばやく巧妙になってきている。すみれ色の瞳でサイラスの秘部を吸い込むように見つめ、それはたまらない視姦の痛みをサイラスに与えるようだ。

「ああ、見るなぁ……。や、やめろぉ」
 サイラスは羞恥に頬を燃やしながら、必死に逃れようとするが、ディリオスとダリクに左右からおさえこまれた白い四肢は淫らにうごめくだけで、身体の中心をリリのいいようにされてしまっている。
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