サファヴィア秘話 ―月下の虜囚―

文月 沙織

文字の大きさ
14 / 84

花園鑑賞 一

 昼でもあまり光をとおさない薄暗い室内。サイラスは一糸まとわぬ姿で黒檀の長方形の机のうえに横たわっていた。
 マーメイはディリオスとダリクに命じて、サイラスの手足を、大開きにして長卓の脚に縛りつけさせるが、使われた紐は「一応、お貴族様だから」ということで、黒絹だ。

「さ、ではあらためて商品を検分してみましょう」

 我知らず、ダリクは胸がはずんできた。

 蝋燭の灯に妖しく照らされた白い肌。男して軍人として鍛錬をつんできただけあって、その胸も腹も引き締まっており、細身ではなってもサイラスは軟弱には見えない。男性的な美を持ちながらも、その肉体の中心には蘭の花が咲くにも似た神秘的な秘部が、観察者たちの目を熱くさせる。視線を感じてかサイラスが開脚させられている脚を震わせる。

「どう、ダリク、以前の上官のお身体を、おまえの目にとっぷりと焼きつけておくといいわ」
 
 煽られてダリクは身を乗りだし、サイラスのまだ開かぬ花弁を凝視する。

「く、来るな!」

 ダリクが近づくと、諦めていたはずのサイラスが身をふるわせ、手足を戒める絹紐を引きちぎらんばかりに身体を揺らした。

「あら、どうしたのよ? 言うことを聞くのではなかったの?」

 マーメイの言葉に、一瞬、サイラスは泣きそうになった。

「き、聞く。ちゃんとおまえの言うとおりにする。だから、そ、そこのダリクを室から出してくれ」

「以前の部下にこんな姿を見られるのが嫌だというのだな?」
 ディリオスの推測にサイラスは無言で同意をしめした。なんとなくダリクは面白くない。

「あら、駄目よ。身を売るからには、どんな相手の目にも慣れてもらわないと。それこそ、客には、かつての知り合いがいるかもしれないのよ」
 
 サイラスの羞恥に上気していた頬から、血の気が引いたのがはっきりとダリクには判った。

「これも練習よ。ダリク、ここへ来て、よーくサイラス様の秘密の花園を鑑賞するといいわ」

「ああ……」
 サイラスが絶望に溜息を吐いた。

(よっぽど俺に見られるのが嫌なようだな)
 無理もないとは思え、ダリクはたまらなく悔しい。自分を室から追い出そうとしたサイラスに言いようのない憎悪がわいてきた。憎しみはダリクを酷薄にさせる。

「下級兵の俺に見られるのが嫌なんですね、サイラス様は?」
 ダリクは露悪的に笑ってみせた。

「や、やめろ、来るな!」

 マーメイと代わるようにしてサイラスの開けられている脚のあいだに立つと、あらためて中心の、マーメイ言うとろこの〝花園〟を凝視した。男の芽と女の花弁が微妙にいりまじった身体だが、そこに双果はない。

「今日はサイラス様の秘密をしっかりと見せてもらいましょう」

「よせ!」

 ダリクは親指と人指し指で、桃色めいた肉の芽を摘まんでみる。

「あっ!」 

 怯えて縮こまっているそれは、どこか見た目にいじらしく見える。男根というにはあまりにも未熟で、むしろ女性のさねが肥大化したようだ。

「ああ……」

 指の柔らかい刺激で、すでに動揺してしまっているサイラスに追い打ちをかけるように、さらに薔薇色の両襞にダリクは指で触れてみる。

「はあっ……」

 サイラスが首を、いや、いや、と振る。その仕草はがんぜない子どものようで、故郷にいたときは想像すらしたことのない上官の可愛い姿に、ダリクは失笑した。
 
 もらした笑いは、サイラスの頬をさらに赤らめさせ、つぎには潤んだ碧の瞳の攻撃となってかえってくるが、今のダリクにはサイラスに憎悪の目で睨まれようが、なんの痛痒もない。 

「貴様ぁ……!」
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

少年達は吊るされた姿で甘く残酷に躾けられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。