297 / 298
扉の向こうへ 六
アレクサンダー自身も、もはや祖国に帰りたいとは露ほども思わなくなっていた。
祖国にとっては、自分は異端なのだ。
いや、この島以外のどの国においてもアレクサンダーは異質な存在として生きるしかない。それならば、この館で、ルキウスとともに生きる方が幸せかもしれない。アレクサンダー自身が、ルキウスのそばにいたいと思っていた。
次に連れてこられた女のなかには、なんとステラがいた。
「船に乗るところで私だけつかまっちゃったのよ。罰金も身代金も私には払えなくて……。それで、ここへ連れてこられちゃったの」
困ったように笑いながらも、それほど辛そうに見えないのは、諦めの気持ちが強いのだろう。
ステラもピロテスの預かりとなった。
のちに祖国のマダム・クネフーー、キティ・サロンの女将ヒルデガルドと連絡がつき、彼女が身代金を払うことになり、三カ月後にステラは祖国へ戻ることができるようになる。
祖国が大変なときにそれだけのことができるのだから、マダムは相当の女傑である。今度は新政権の要職者を相手に仕事をしているようで、新たな時代の権力者にかなりのコネもあるという。最初にマダムが旧政権に抗って逃亡しようとした経歴も有利に働いたようだ。
「今日はかなりの大物が来ますよ」
「相手をするのは誰にした?」
レキウスの問いに、パパスは誇らしげに答える。
「ロザモンドです」
ロザモンドは今や館一番の売れっ子だ。彼女の実家は戦争の混乱で破産し、婚約者だった男性は別の女性と結婚したという。その知らせがロザモンドを変えたのかもしれない。もはや祖国へ帰ることはあきらめ、館のなかで娼婦として花開くことを望んでいる。彼女はこの先おそらく館で一番の名花となるだろう。
祖国にとっては、自分は異端なのだ。
いや、この島以外のどの国においてもアレクサンダーは異質な存在として生きるしかない。それならば、この館で、ルキウスとともに生きる方が幸せかもしれない。アレクサンダー自身が、ルキウスのそばにいたいと思っていた。
次に連れてこられた女のなかには、なんとステラがいた。
「船に乗るところで私だけつかまっちゃったのよ。罰金も身代金も私には払えなくて……。それで、ここへ連れてこられちゃったの」
困ったように笑いながらも、それほど辛そうに見えないのは、諦めの気持ちが強いのだろう。
ステラもピロテスの預かりとなった。
のちに祖国のマダム・クネフーー、キティ・サロンの女将ヒルデガルドと連絡がつき、彼女が身代金を払うことになり、三カ月後にステラは祖国へ戻ることができるようになる。
祖国が大変なときにそれだけのことができるのだから、マダムは相当の女傑である。今度は新政権の要職者を相手に仕事をしているようで、新たな時代の権力者にかなりのコネもあるという。最初にマダムが旧政権に抗って逃亡しようとした経歴も有利に働いたようだ。
「今日はかなりの大物が来ますよ」
「相手をするのは誰にした?」
レキウスの問いに、パパスは誇らしげに答える。
「ロザモンドです」
ロザモンドは今や館一番の売れっ子だ。彼女の実家は戦争の混乱で破産し、婚約者だった男性は別の女性と結婚したという。その知らせがロザモンドを変えたのかもしれない。もはや祖国へ帰ることはあきらめ、館のなかで娼婦として花開くことを望んでいる。彼女はこの先おそらく館で一番の名花となるだろう。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
闇に咲く花~王を愛した少年~
めぐみ
BL
―暗闇に咲き誇る花となり、その美しき毒で若き王を
虜にするのだ-
国を揺るがす恐ろしき陰謀の幕が今、あがろうとしている。
都漢陽の色町には大見世、小見世、様々な遊廓がひしめいている。
その中で中規模どころの見世翠月楼は客筋もよく美女揃いで知られて
いるが、実は彼女たちは、どこまでも女にしか見えない男である。
しかし、翠月楼が男娼を置いているというのはあくまでも噂にすぎず、男色趣味のある貴族や豪商が衆道を隠すためには良い隠れ蓑であり恰好の遊び場所となっている。
翠月楼の女将秘蔵っ子翠玉もまた美少女にしか見えない美少年だ。
ある夜、翠月楼の二階の奥まった室で、翠玉は初めて客を迎えた。
翠月を水揚げするために訪れたとばかり思いきや、彼は翠玉に恐ろしい企みを持ちかける-。
はるかな朝鮮王朝時代の韓国を舞台にくりひげられる少年の純愛物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。