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闇の国 一
しおりを挟むアレクサンダーは浅い眠りから覚めつつあった。
半覚醒の、ひどく心地よい時間をすこしでも引きのばしたいが、あいにく意識は覚醒し、眠りから覚め、否応なしに現実世界に戻ってきてしまう。
身体の節々が痛む。学生時代、軍隊時代、苛烈な訓練をした翌日の痛みを思いだすが、そこにはまだ爽快感と達成感があったはず。
今感じるのは、ひたすら絶望だけだ。
横たわっているベッドからまず見えたのは、近くにあるテーブルの脚に刻まれた海豚や波の彫刻で、なかなか見事である。
一応、薄物の寝間着のような衣を着せられていた。素材はネグリジェのようで気にいらないが、なにもないよりはましか。
おそるおそる起き上がってみると、あたりは白一色だった。時間は昼近くになっているようだ。
船内の部屋のように殺風景ではなく、棚やテーブルなど家具があり、それらはすべてアイボリーで統一してあり、まるで貴婦人の部屋のようだった。おそらくもともと高貴な女性のための室だったのだろう。
シーツも羽根布団も純白で、窓のカーテンもまた白いレースで、裾は金糸で飾り模様で縁どられている。西洋風ではあるが、棚に置かれてある壺などに、どこかこの地の文化感覚も感じられる。
アレクサンダーは身体の痛みも忘れて、ベッドから下りて窓に向かってみた。
やはり、というか、レースの向こうの縦長の大窓には、鉄格子が嵌まっていた。
優雅に見えて、ここはやはり牢獄なのだ。
「お目覚めですか?」
ノックされることなく、いきなり人が入ってきてアレクサンダーは驚いた。
扉のところに立っていたのはマヌエルだった。
昨日のことを思い出して、アレクサンダーのうちに怒りがよみがえる。
この男は、ピロテスに命じられたとはいえ、自分にあのような手酷い凌辱行為をあたえることに加担したのだ。
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