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散らされて 五
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「おお、そろそろじゃな。おまえは、今なにを思うておるのじゃ? 妻の顔か、誰か別の女か、男か?」
その問いにアレクサンダーが答えることなどできるわけがない。
「へへ、俺なんて女優のプロマイドを使いますけどね」
ハサピスが嵩にかかって言う。
「言うてみよ、今、誰を思って励んでおるのじゃ? ほほほほ」
「うう……」
ほっそりしていても、芯の強そうな、雪白の皮膚いちまい下には鋼を秘めているような素晴らしい肉体が、全身で切なげに喘いでいる。
圧倒されるような美しさだが、自分を無視するアレクサンダーに腹を立てたのか、ピロテスは近づき、いらだたしげに、アレクサンダーの股間を上からつかむ。
「あうっ!」
つかむというより、撫でるような強さだったが、行為を邪魔されるかたちになり、アレクサンダーの切なさは高まる。
「言え、おまえは何を考えて今、ここを大きくしておるのじゃ?」
「な、なにも……」
事実である。アレクサンダー自身でもわからないのだ。ただ強いられ、押し付けられた欲望によってみずからを昂らせているのだ。
だが、この屈辱的で惨めな状況こそが、奇妙なことにアレクサンダーを昂らせている理由なのかもしれない。むろん、アレクサンダー自身は自覚していないが。
「ふん」
「あっ……!」
ピロテスがアレクサンダーの繊細な先端をつまむ。おそらく力を入れないようにしているせいか、痛みはあるものの、すぐに微妙なもどかしさに変じ、アレクサンダーを困惑させる。
「う……」
ピロテスの指は離れてくれない。
他人の指の感触が、自分のものとは違い、さらなる刺激をおよぼすのだ。おなじ指であっても、自分のものと他人のものでは、どうしてこうも感覚がちがうのか。蟻をつぶすほどのかすかな力であるというのに、アレクサンダーはまた歯を食いしばらねばならなかった。
その問いにアレクサンダーが答えることなどできるわけがない。
「へへ、俺なんて女優のプロマイドを使いますけどね」
ハサピスが嵩にかかって言う。
「言うてみよ、今、誰を思って励んでおるのじゃ? ほほほほ」
「うう……」
ほっそりしていても、芯の強そうな、雪白の皮膚いちまい下には鋼を秘めているような素晴らしい肉体が、全身で切なげに喘いでいる。
圧倒されるような美しさだが、自分を無視するアレクサンダーに腹を立てたのか、ピロテスは近づき、いらだたしげに、アレクサンダーの股間を上からつかむ。
「あうっ!」
つかむというより、撫でるような強さだったが、行為を邪魔されるかたちになり、アレクサンダーの切なさは高まる。
「言え、おまえは何を考えて今、ここを大きくしておるのじゃ?」
「な、なにも……」
事実である。アレクサンダー自身でもわからないのだ。ただ強いられ、押し付けられた欲望によってみずからを昂らせているのだ。
だが、この屈辱的で惨めな状況こそが、奇妙なことにアレクサンダーを昂らせている理由なのかもしれない。むろん、アレクサンダー自身は自覚していないが。
「ふん」
「あっ……!」
ピロテスがアレクサンダーの繊細な先端をつまむ。おそらく力を入れないようにしているせいか、痛みはあるものの、すぐに微妙なもどかしさに変じ、アレクサンダーを困惑させる。
「う……」
ピロテスの指は離れてくれない。
他人の指の感触が、自分のものとは違い、さらなる刺激をおよぼすのだ。おなじ指であっても、自分のものと他人のものでは、どうしてこうも感覚がちがうのか。蟻をつぶすほどのかすかな力であるというのに、アレクサンダーはまた歯を食いしばらねばならなかった。
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