紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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名花二輪 六

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 あらかじめ命じられていたらしく、兵士たちはシャルロットの身体を引きずるようにして、ちょうどアレクサンダーの向かいに立たせ、両腕を縛りあげて、天井から釣り下がっている錨のような吊り具に紐先をかけた。
「ああ……」
 いったんは解放されたと信じていただけに、シャルロットにとっては辛い仕打ちだ。
 やはり同じように右足を引き上げるようにして、紐先は首の縄につながれる。縄が犬の首輪のように見え、無残なことこの上ない。
 じきにシャルロットはアレクサンダーと向かいあう形でおなじように浅ましい格好で縛りあげられていた。せめてもの情けなのか、腰には純白のレース編みの布がかけられ、シャルロットの秘部をかろうじてかくしてくれたが、乙女にとっては死ぬほど辛い状況であることは変わらない。
「ほほ、とんだ顔合わせじゃな。これ、そう俯いてばかりおらずに顔をあげぬか」
 ピロテスは愉快そうに言った。
 歩をすすめてアレクサンダーに近づくと、無理やり顎をあげさせる。おなじようにアレシアもシャルロットの顔をあげさせた。
 二人はかすかに身じろぎし、同じように互いに一瞬目を向け、相手のすがたを見て、どちらも頬を染めて目を逸らしあう。
 おなじようにほぼ全裸に近いすがたで片足を吊りあげられるという惨めなすがたを見、互いの瞳に今の自分を映しあい、いたたまれぬほどの激しい羞恥に身を震わせているのだ。その様子は、官能的な絵のようで、見る者の魂をとろかせずにいられない。
 若き青年将校と富豪の令嬢。どちらも玉のような美貌である。欧州の社交界で出会っていてもふしぎでない二人である。
 本当なら美衣美装で身をかざり、勲章や宝石を見せびらかしながら、うやうやしく挨拶し、手を取りあって舞踏会でダンスを踊っていたかもしれない。そんな二人が、今は異国の地下牢という、彼らにとってこの世の最果てのような場所で、たがいに正視に耐えられない姿をさらしあっているのだ。これが笑わずにいられようか。
 ピロテスは常の誇りも気位もなくして、羞恥に身をすくめあっている美しい二人を見比べ、のけぞって笑った。
「さぁ、どうしたのじゃ、二人とも。せっかくこうして紹介してやっておるのじゃから、名を堂々と名乗って挨拶せぬか。おまえたち、顔は見たことがあるが、正式な挨拶はしておらぬのじゃろう? 上流階級の人間は初対面のときの挨拶を大切にするものではないか?」
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