紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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楽園の密猟者 三

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「いつになったらあいつら出てくるんだ?」
 ヴルブナは苛立った声を相手にぶつけた。
「大声出すでない」
 ソロモンの眉がゆがむ。
「あれからずっと奥にこもりっきりじゃないか!」
「殿下にも困ったものじゃ……」
 二人は館の庭の片隅で声をひそめて話していた。庭木がほどよい木陰をつくってくれている。
 ヴルブナは苛々してしかたない。
 あの濃密な初夜の夜をのぞき見して以来、ますます欲望はたかまり、しずまる暇がない。
 どうにかしてアレクサンダーに会い、この欲をしずめなければ、いてもたってもおれず、他の事など考えられない。本当ならもう帰国して軍務にもどらねばならないし、実際上官からは何度か帰国を要請する連絡がきている。
(これ以上無断で滞在するなら、もう庇えない)
 最後通牒にも似た電信を受けとったのは今朝のことだ。だがもはやそんなことはどうでも良かった。
「そろそろ白蓮の披露をせねばならぬというのに、殿下はまったく取り合おうとせぬ」
「なんだ、それは?」
 この館で時折「白蓮」という言葉は聞くが、今ひとつわからなかった。おおかた、娼館での稼ぎ頭を指す意味かと思っていたが。
「島の繁栄と平和を願って神々に捧げられる花……、白蓮を何年かに一度天に捧げるのじゃ」
 島特有の宗教的儀式か。あまり興味はなく、ヴルブナはソロモンに詰め寄った。
「なぁ、頼むから俺をアレクサンダーに会わせてくれ。一度だけでいいから」
 ヴルブナの表情にはいつもの揶揄はなく、真剣そのものだった。
「おまえ、悪霊に憑かれてしまったのではないか? 悪霊というより、アフロディーテの呪いでも受けたか」
 恋の女神のしかける罠に嵌まってしまったのか、とソロモンは嗤った。
「そんなもんじゃない! このままだと俺も引っ込みつかないんだよ。 畜生! なにが殿下だ! 金持ってる奴や身分の高い奴らばかりがいい思いしてるのがいやなんだよ!」
 その口調や態度がまるで十代の世を拗ねた不良少年そのもので、ソロモンはますます呆れた。
「何を言うておるのじゃ?」
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