紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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影花満開 八

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 言ってから、ヴルブナはテーブルの燭台の下に、蝋がこぼれ落ちないようにと置かれていた小皿をとってきた。
「しゃがんで出せ。ここへだ」
 粗末な皿を一瞥し、アレクサンダーは唇を噛む。
 恨み骨髄に徹する想いが、薄い室内できらめくエメラルドの瞳にしのばれる。
「何している? ほら、皿の上にしゃがんで出すといい」
 憎悪にエメラルドの瞳が数秒きらめき、つぎには凍りついた。
 瞑目し、すべての感情を押し殺すように、いや抹殺するようにして、アレクサンダーは言われたことをしようとした。
「ん……うう……」
 ぶるぶると脚をふるわせながらしゃがむようにして、体内に埋め込まれた異物を吐きだすよう努力した。
「出すところが見えるようにしろよ。ほら」
 ヴルブナが背後から腕を添えて、まえかがみにならないようにする。身体がくずれないように、ハサピスと二人でアレクサンダーを支えるようにした。
 鏡に映し出されたのは、あり得ぬほどに凄まじい光景だった。
「すげぇ。アレクサンダー=フォン=モール少佐が……誇りたかき貴族様が、太腿おっぴろげて、あそこまる出しにして、しかも、可愛いガーターベルトつけて」
 堪えきれぬようにヴルブナは声高く笑った。つられるようにしてハサピスも声をあげて笑う。室に、狂ったような男たちの嘲笑の声が響きわたる。
 アレクサンダーの目は閉じられたままである。だが、心を抹殺しようとしても、殺しきれない心が軋み、悲鳴をあげるのか、白い頬に、新たな滴が流れていく。
「ああ……、信じられねぇ」
 ヴルブナの口調はいっそうくだけたものになる。
「覚えているか? あんたが少佐になったばかりのころ、高級将校がおおく出席した舞踏会があったろう? 俺は当時の上官のお供で陪席したことがあったが、あの舞踏会であんた、ひどく目立っていたんだぜ」
 そのとき、あんたはまだ俺のことを知らなかったろう……。
 ヴルブナは鏡のなかのもうひとりのアレクサンダーに向かって囁きを告げた。
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