紅蓮の島にて、永久の夢

終わらぬ夜に 五

　腰や臀部に触れてくるクルーゲの手つきは強く激しくなる。体内に埋めこまれたものの存在を否応なしに思い出させられ、アレクサンダーの額に汗が増える。
「まさか、とは思うんだが、そっくりなんだ、アレクサンダーと。あり得ないとは思うんだがね。誇りたかき帝国軍人で伯爵の彼が、まさかあんな淫らな……。でも、本当によく似ていてね。僕の友人たちにも見てもらったが、皆一様に驚いていた」
　恥辱と恐怖にアレクサンダーは石のように固まってしまった。
「おなじモデルを使ったポルノ映画も極秘の試写会で見たけれど、これが本当によく似ているんだ。一緒に見た悪友たちも驚いていてね。最初はみな、よく似ていると言っていたのだが、どうもあれは本人じゃないかという噂が出てきてね。それというのも、」
　しゃべりながらも、クルーゲの湿り気を帯びてきた手は、アレクサンダーの身体を執拗に撫でまわす。
「おや、君、悪戯されているのかい？」
　アレクサンダーの下肢に嵌めこまれたものの存在に気付いたらしいクルーゲは、腰まわりを圧迫するように両側から抑える。
「ん……、んん」
　声を出せないアレクサンダーは、強く抵抗することもできず、クルーゲの淫靡な愛撫に耐えた。
　さらにつづいたクルーゲの言葉は、アレクサンダーをいっそう萎縮させた。
「アレクサンダーには以前からそういう噂があったんだ」
「噂、ですか？」
　わざとらしいヴルブナの問い。
「そうだ。彼は美しすぎる。そして男にしてはたおやかなところがあり、どこか艶めかしい。清純そうなのに、なぜか奇妙な色気があってね。じつはあっちの趣味があるんじゃないか、と。まぁ、そんな噂は学生時代にはよくあることだが」
　言っている間もクルーゲの手は止まらない。
　アレクサンダーは、自分の胸の鼓動の響きが聞こえそうだった。
「そのうち、ある奴が言いだしたんだ。もしかしたら、アレクサンダー＝フォン＝モールは……ふたなりなんじゃないか、と」
　鼓動の響きが破裂音になった。