翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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狂い咲き 六

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 布越しに感じる感触は、竹弥の神経を嬲りぬく。
「はぁ……!」
 浦部は驚くほどの根気と粘着質さでもって、竹弥を追い詰めていくのだ。
 淫らに下着を濡らすのは浦部の唾液だけでない。竹弥が不覚にもこぼしてしまう悦楽のしたたりのせいでもある。
「くぅ……!」
 浦部が口腔をすぼめた。
「あ、い、いや……!」
「んぐぅ……。ふー」
 やれやれ、というふうに口をはなすと、浦部は己の仕事の成果を眺めるように、かがめていた上半身を起こした。
 あらためて竹弥の姿を見て、感嘆の息をはなつ。
「すげぇ、やらしいな……。顔はこんなに清楚なのに、俺にこんなことされて感じていやがる。けけけ。すごいな、その格好。うわ、どろどろじゃないか……。ああ! ピンクの下着に白い足袋が本当にそそるぜ。このいやらしさは、犯罪だぞ」
 嘲りと侮辱と、奇妙な賞賛を込めた言葉に竹弥は胸をえぐられる。
 いたたまれなさに、身を縮めるようにしたせいで肩が細くなり、脚はますます内股になる。気強く誇りたかかった竹弥だが、浦部の異常な愛技にさすがに疲労し、弱気な素振りを取ってしまったのだ。
「ぐっしょりだ。まったく、色っぽ過ぎるぜ。そんな顔で、こんな、こんな白い絹のような肌して……足もじもじしやがって。ああ、たまらん! ああ、もう、杉屋さん、どうしてくれるんですか!」
「本当にしょうがないな」
 呆れた笑い声をあげ、杉屋が尻ポケットから取り出したものを浦部にむかて放り投げた。 
 例の黄楊の道具である。
「おお、これを挿れるんですか? でも、小さいですね」
 物足りなさそうに、受け取った道具を見下ろす浦部の顔には不満がありありと見える。
「小さいので盛りあげるのが面白いんじゃないか。それで、せいぜい若様のご機嫌をよくしてやれ」
「こんなつまらなものじゃなくて、俺のじゃ、駄目ですか?」
 餌をねだる飢えた野良犬の目で浦部が杉屋を見た。杉屋の意見は変わらない。
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