翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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玻璃責め 五

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 竹弥の前方は、いつしかこの度を越えた辱しめに形を変え、熱を発しつつあった。触られていないというのに。
(ああっ……)
 辱しめられて快を感じるという異常な身体に、杉屋がのぞむように変えられてしまったのだ。いや、身体だけではなく、心までもが変性しつつあるのだと気づいた竹弥は、嫌悪と恐怖に絶叫したくなった。
「そら、まだ残っているだろう? ほら、出してみろ」
「ううっ」
 ビー玉が皿をたたくかすかな音が、そのあとも幾つもひびく。

「ふぅ……」
 恥辱に気が遠くなりかけたとき、どうにかすべて出すことができた。
 猿ぐつわを嵌めらているので、いっそう呼吸が苦しく、竹弥はいちじるしく疲弊した。 
「そろそろ、それも外してやらないか? もう舌を噛むこともないだろう」
「そうですね」
 その声を聞いてしばしして、呼吸がらくになった。少しだが身体も楽になった気がする。
 竹弥は大きく息を吸った。
「ああ、これで可愛い声が聞けるよ。さぁ、つぎはどうやって楽しませてあげようか。……ちょっと待っておいで」
「お客さんもけっこう好きですね」
「ふふふふ。竹弥を喜ばせてやりたいんだよ」
 二人の妖物の声を聞きながら、竹弥はあらがう気力もなく、布団のうえに座りこんだまま、ぼんやりと目線を宙にさまよわせていた。
 腰にはまったく力が入らず、不本意だが背後の杉屋に身をまかせるようにぐったりとしていた。
 早田が室の片隅に置いていたらしい黒鞄から、なにやらごそごそと取り出している。
 しばし宙をさまよっていた竹弥の心は、早田の声に、一気にうつつの世界にかえってきた。
「お待たせした。今度はこれで、どうだい?」
 竹弥は目を見張っていた。
「そ、それ……」
 大きくした四角形の文鎮のような銀色の土台から、巨大な茸が天に向かって生えている。そう見える異様な器物をまえにして、心臓が割れそうな音が竹弥の体内でひびく。
 目の前に置かれた珍妙なものがなんのためのものなのか、竹弥は一瞬、理解できなかった。
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