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第37話『ガチ恋日和』
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<ごめんなさい! ワタシ、イロハ……チャンが配信してることを知ってしまいました!>
転校生が見せてきたスマートフォンの画面。
そこには俺の『ウクライナ語講座』の配信が映っていた。
<そっかーバレちゃってたかぁ……。いやまぁ、そんな気はしてたけど>
<ご……ごめん、なさいっ。ごめっ……う、うぅっ!>
<え、ちょっと!?>
転校生がボロボロと泣き出してしまう。
うぇえええ!? 男はだれだって女の子の涙には弱い。
どう対処すりゃいいのかわからん。
<よ、よーしよーし。大丈夫だよー。怖くないよー>
<ふぇっ……!?>
とりあえず危険物でも扱うような手つきで、そっと頭を撫でてみる。
これが男女なら気持ち悪いが、幸い今は女の子同士。ギリギリセーフ、なはず。
<う、うえぇええええええん! ごめんなさぁあああい!>
<なんでぇー!?>
余計に大声で泣き出してしまった。
転校生は嗚咽混じりに、しかし怒涛のごとく言葉を吐き出しはじめる。
<最初は有名な配信者だって気づいてビックリして、けど日本とウクライナを繋ぐためにこんな活動をしてるんだってわかって、もしかするとワタシのためってのも、いくらかあるのかもとか思って。ワタシにとってイロハ……チャンはヒーローみたいな人で>
<お、おう?>
いや、まったくそんな理由ではない。
コメントで言われなければウクライナ語講座をすることもなかっただろうし。
<それでだんだんと学校でも意識しちゃうようになって、けどナイショにしてるみたいだから言っちゃダメで、迷惑かけないようにしなきゃいけないと思って。でもやっぱり気になって目で追っちゃって>
<うんうん>
<そのうちイロハ”サマ”の声を聞いたり、お姿を見るたびに心臓がドキドキするようになっちゃって。イロハサマのお言葉をひとつ残らず理解したくて必死に日本語を勉強するようになって>
<うんう……んんん!?>
<イロハサマの声が好きで、いろんな言語を話せるところもすごくて好きで、勉強できるところもかっこよくて好きで、ちょっと男勝りだったりもする性格が好きで、けど運動だけはダメダメなところもかわいくて好きで>
<え、ちょっと待って。照れるけど、その前になんか変なのが>
<あーもう”マヂムリ”ぃ……! ”トウトイ”……! ”イロハサマ、マジ、テンシ”ぃ……! ふえぇえええん!>
<!?!?!?>
<つまり、ワタシ……ワタシ、イロハサマの――>
<――ガチ恋勢なんですぅ~~~~!!!!>
<……はいぃいいい!?>
好きって、あー……えっ、そういう!?
そっかー。なんだ、そうかー。……そっかー。
<ひっぐ……ぐすっ、えっぐ……>
それからようやく転校生が落ち着いてくる。
なんというか、めっちゃ気まずい。
<ご、ごめんなさい、泣いちゃって。イロハサマにお声かけいただいたうえに、その御手で触れられあまつさえお撫でいただいたことで、感極まってしまって>
<あっ、申し訳なくて泣いてたわけじゃなかったんだ>
<いえ、もちろん申し訳なさもいっぱいです! だって一介のファンでしかないワタシが、イロハサマの生活に干渉してしまうだなんて。まるで認知を求める厄介ヲタクがごとき所業。ワタシはいったいなんということを……!>
<ダ、ダイジョウブダヨー>
俺はそろーりとすこしだけ距離を取った。
なんだろう。愛が重すぎてちょっと怖いんだが。
もしかしなくてもこの子、VTuberのそれもきわめて特殊な事例をもとに日本語を学んだせいで、おかしな方向へ認知が歪んでしまっていないか?
日本文化に変な影響受けてない?
<つまり、イロハサマはワタシの心のよりどころなんです>
<う、うん。ちょっと待ってね。まずはさっきから言ってる『イロハ”サマ”』ってのを説明して欲しいんだけど>
<ご、ごめんなさいっ! 思わずいつものクセで!>
<いつもなんだ!? そ、そっか。いや、うん。い、いいんだよ>
<ありがとうございます、イロハサマ!>
<う、うん>
なんだかすっごく頭が痛い。
考えたら負けな気がする。
<一応、確認しておきたいんだけど。わたしのガチ恋勢って言ったじゃん? それは今のこのわたしと付き合いたいって意味だったり?>
<~~~~~~!?!?!? あっ、いえっ、それはっ、あのっ……>
転校生が百面相する。
なにやらものすごい葛藤があるらしい。早口でなにかを呟いている。
<認知されるのはうれしい。付き合えたならどれほど幸せだろう。けれどなんと恐れ多い。ワタシのような民草が天上におわしますイロハサマと釣り合いなど取れるはずもなく。しかし……!>
<あっ、女の子同士だってのは気にしないんだ>
<はい。ウクライナではもうすぐ”シビルパートナーシップ法”が制定される可能性が高く、実質的に同性婚が認められます。ワタシたちが成人するころには問題にもならないでしょう>
<そ、そう>
即答だった。
そっか、調べたことあるんだ……。
<イロハサマは気にしますか!? もしかして女の子同士はダメですか!?>
<えっ。いやー、そのー、まーべつにいいんじゃないかなー? け、けどわたしはダメだからね!? わたしは……そう! VTuberにしか興味がないから!>
そうだ。仕事一筋、ということにしてしまおう。
あるいは配信を見ることで手一杯。
とっさに出たにしては、ガチ恋勢にも配慮した完璧な回答だな。
俺もVTuber業がだいぶ板についてきたじゃないか。
<VTuber……そっか。なるほど。わかりました! VTuberですね!>
<え? う、うん>
やけに力強く頷かれてしまった。
な、なぜ……?
転校生が見せてきたスマートフォンの画面。
そこには俺の『ウクライナ語講座』の配信が映っていた。
<そっかーバレちゃってたかぁ……。いやまぁ、そんな気はしてたけど>
<ご……ごめん、なさいっ。ごめっ……う、うぅっ!>
<え、ちょっと!?>
転校生がボロボロと泣き出してしまう。
うぇえええ!? 男はだれだって女の子の涙には弱い。
どう対処すりゃいいのかわからん。
<よ、よーしよーし。大丈夫だよー。怖くないよー>
<ふぇっ……!?>
とりあえず危険物でも扱うような手つきで、そっと頭を撫でてみる。
これが男女なら気持ち悪いが、幸い今は女の子同士。ギリギリセーフ、なはず。
<う、うえぇええええええん! ごめんなさぁあああい!>
<なんでぇー!?>
余計に大声で泣き出してしまった。
転校生は嗚咽混じりに、しかし怒涛のごとく言葉を吐き出しはじめる。
<最初は有名な配信者だって気づいてビックリして、けど日本とウクライナを繋ぐためにこんな活動をしてるんだってわかって、もしかするとワタシのためってのも、いくらかあるのかもとか思って。ワタシにとってイロハ……チャンはヒーローみたいな人で>
<お、おう?>
いや、まったくそんな理由ではない。
コメントで言われなければウクライナ語講座をすることもなかっただろうし。
<それでだんだんと学校でも意識しちゃうようになって、けどナイショにしてるみたいだから言っちゃダメで、迷惑かけないようにしなきゃいけないと思って。でもやっぱり気になって目で追っちゃって>
<うんうん>
<そのうちイロハ”サマ”の声を聞いたり、お姿を見るたびに心臓がドキドキするようになっちゃって。イロハサマのお言葉をひとつ残らず理解したくて必死に日本語を勉強するようになって>
<うんう……んんん!?>
<イロハサマの声が好きで、いろんな言語を話せるところもすごくて好きで、勉強できるところもかっこよくて好きで、ちょっと男勝りだったりもする性格が好きで、けど運動だけはダメダメなところもかわいくて好きで>
<え、ちょっと待って。照れるけど、その前になんか変なのが>
<あーもう”マヂムリ”ぃ……! ”トウトイ”……! ”イロハサマ、マジ、テンシ”ぃ……! ふえぇえええん!>
<!?!?!?>
<つまり、ワタシ……ワタシ、イロハサマの――>
<――ガチ恋勢なんですぅ~~~~!!!!>
<……はいぃいいい!?>
好きって、あー……えっ、そういう!?
そっかー。なんだ、そうかー。……そっかー。
<ひっぐ……ぐすっ、えっぐ……>
それからようやく転校生が落ち着いてくる。
なんというか、めっちゃ気まずい。
<ご、ごめんなさい、泣いちゃって。イロハサマにお声かけいただいたうえに、その御手で触れられあまつさえお撫でいただいたことで、感極まってしまって>
<あっ、申し訳なくて泣いてたわけじゃなかったんだ>
<いえ、もちろん申し訳なさもいっぱいです! だって一介のファンでしかないワタシが、イロハサマの生活に干渉してしまうだなんて。まるで認知を求める厄介ヲタクがごとき所業。ワタシはいったいなんということを……!>
<ダ、ダイジョウブダヨー>
俺はそろーりとすこしだけ距離を取った。
なんだろう。愛が重すぎてちょっと怖いんだが。
もしかしなくてもこの子、VTuberのそれもきわめて特殊な事例をもとに日本語を学んだせいで、おかしな方向へ認知が歪んでしまっていないか?
日本文化に変な影響受けてない?
<つまり、イロハサマはワタシの心のよりどころなんです>
<う、うん。ちょっと待ってね。まずはさっきから言ってる『イロハ”サマ”』ってのを説明して欲しいんだけど>
<ご、ごめんなさいっ! 思わずいつものクセで!>
<いつもなんだ!? そ、そっか。いや、うん。い、いいんだよ>
<ありがとうございます、イロハサマ!>
<う、うん>
なんだかすっごく頭が痛い。
考えたら負けな気がする。
<一応、確認しておきたいんだけど。わたしのガチ恋勢って言ったじゃん? それは今のこのわたしと付き合いたいって意味だったり?>
<~~~~~~!?!?!? あっ、いえっ、それはっ、あのっ……>
転校生が百面相する。
なにやらものすごい葛藤があるらしい。早口でなにかを呟いている。
<認知されるのはうれしい。付き合えたならどれほど幸せだろう。けれどなんと恐れ多い。ワタシのような民草が天上におわしますイロハサマと釣り合いなど取れるはずもなく。しかし……!>
<あっ、女の子同士だってのは気にしないんだ>
<はい。ウクライナではもうすぐ”シビルパートナーシップ法”が制定される可能性が高く、実質的に同性婚が認められます。ワタシたちが成人するころには問題にもならないでしょう>
<そ、そう>
即答だった。
そっか、調べたことあるんだ……。
<イロハサマは気にしますか!? もしかして女の子同士はダメですか!?>
<えっ。いやー、そのー、まーべつにいいんじゃないかなー? け、けどわたしはダメだからね!? わたしは……そう! VTuberにしか興味がないから!>
そうだ。仕事一筋、ということにしてしまおう。
あるいは配信を見ることで手一杯。
とっさに出たにしては、ガチ恋勢にも配慮した完璧な回答だな。
俺もVTuber業がだいぶ板についてきたじゃないか。
<VTuber……そっか。なるほど。わかりました! VTuberですね!>
<え? う、うん>
やけに力強く頷かれてしまった。
な、なぜ……?
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