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第18話『シンクロする快楽』

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「キャァアアアっ! い、イヤっっ! 離してっ! お願いっ!」

 ひときわ甲高い悲鳴。
 声が聞こえてきたのは、ボクたちの隠れている場所のすぐ近くだった。

 視線を向けた先では、16歳ほどに見える金髪のエルフがひとりの人間に腕を掴まれていた。
 エルフは抵抗し、逃げ出そうともがいている。

(さすがはエルフ、かわいい)

 ボクはその悲痛な表情に目を奪われる。
 悲鳴を上げて怯える姿はむしろ愛嬌があり、涙はむしろ、興奮を増強するスパイスだった。

「オイオイ。そんな暴れちゃァ、うっかり手が出ちまうじゃねぇかァ……よッ!」

「がはっ……!? ぎっ、い、いやぁ……助けて……!」 

 逃げ出そうとしたエルフの腹に、その男は思い切り拳を叩き込んだ。
 美少女にも一切、遠慮なしの暴力。

 エルフがお腹を押さえて崩れ落ちる。
 男は彼女の頭部を地面に押さえつけた。

 その光景を目撃し、反応したのはエリィだった。

「っ! エレナおねえ――むぐぅっ!?」

 ボクは慌てて、テオにエリィの口を封じさせた。
 動けないよう、巨大樹に押しつけるようにして拘束させる。

(お姉ちゃん、だって?)

 あのエルフ……”エレナ”というらしいが、エリィの実姉なのだろうか?
 にしては似てない。

 同じ美少女でも、彼女はエリィとはその種類がちがった。
 具体的にいうと、眼鏡の似合う委員長といった印象。

 もしかして彼女こそが、エリィの父が言っていた『おしとやか』なのだろうか。
 エリィは父に、彼女と比較されていたのかもしれない。

「んんぅーっ! んんぅううう~っ!」

 エリィが金の髪を振り回してもがく、テオの腕力からは到底逃れられないだろう。
 レベルは彼女のほうが高いとはいえ、STR値は圧倒的にテオのほうが高い。

 彼女の呻き声は、幸いにも大勢のエルフたちが上げる悲鳴に紛れた。
 けど……ジャマだな。

 今、ボクはこの凌辱現場を目に収めることに集中したい。
 このときばかりはエリィの美しい声もノイズだった。

「黙ってろよ、クソガキ。今いいところ……す、ぃま、せん。なんでもないです」

 ギロリと睨まれて、慌ててテオの背に引っ込んだ。
 エリィの手にはマジック発動の予兆であるエフェクトがぼんやりと浮かんでいた。

(忘れてた。拘束しても、エリィにはマジックがあるんだった)

 そうなると、テオの拘束もいつまでもつかわからな……あれ?

「フゥーっ、フゥーっ!」

 エリィはこちらを威嚇して来ているが、なぜか拘束を逃れられずにいた。
 何度もマジックを発動させようとはするのだが、忌々しそうにそのエフェクトを散らしていた。

(もしかして……)

 現在、エリィは暴れたため、両腕もテオにより頭上で拘束されている。
 彼女は手のひらをなんとかして、こちらへ向けようとしているように見えた。

 ボクは思い出す。
 ゲーム時代のマジック発動モーションを。

 そして、この世界に来てからエリィがいつもどこを起点にマジックを発動してたのかを。
 思えばボクにマジックで作った水を飲ませようとしたときもそうだった。

(――マジックは、手のひらを起点にしないと使えない?)

 そうとわかれば、もはやエリィも恐れるに足らず。
 邪魔をされないとわかったら、ボクも視聴・・に集中ができる。

 ボクは全神経を目と耳と、ときには鼻へ集中した。
 1秒でも多く、このすばらしい光景を記憶に焼きつけるために。

「やめ、て……お願いだから」

 両目から涙を流し、エレナは懇願する。
 だがそんなものを奴隷商人が聞き入れるはずもない。

 彼女はその衣服を、引きちぎるようにして剥ぎ取られた。
 文化の差だろうか、下着はつけていなかった。

 今はまだ・・きれいな身体があらわになった。
 細身の手足は、今にも折れてしまいそうな儚さと、柔さがあった。

 すなわちそれは『壊してみたい』という甘美で淫靡な誘惑を撒き散らしている、ということでもあった。

「イヤァアアアっ!」

 エレナは自身の身体を隠すようにうずくまる。
 そのきれいな背中の肌へ、男は弄ぶようにツゥーっと指をすべらせた。

「ひっ……!」

 たったそれだけで、エレナは過剰なほどに怯えた声をあげる。
 そのとき、ボクは感じた・・・

『「オイオイ、そんな嫌がるなよ。傷ついちまって、思わず……痛ぁくしちまいそうじゃねぇかぁ!」』

 声がダブって聞こえた。
 まるで自分自身が声を発したかのように。

(なんだ、今の感覚)

 自己投影しすぎたせいか?
 まるで自分がそこにいるかのように、自分が犯そうとしている張本人かのように、感じた。

 いや、それだけじゃない。
 声だけでなく視界まで……いや、五感すべてが歪みはじめる。

 エレナの腕を掴んでいる感覚が、その柔肌の感触が手のひらにあった。
 ボクは視界の端のログウィンドウに気づく。

『パッシブスキル<シンクロ>が発動しました』

 まさか、これは職業『エンチャンター』のスキル!?
 ゲーム時代は、戦闘時に対象の状態を把握するためのものだった。

 残りのHPや状態、バフなどの効果時間などが画面に表示される、というだけのもの。
 まさか、現実となったことで性質が変化していたのか!?

(……きひひっ! きひひっ、きひひっ、きひひのひっ!)

 胸中での笑いが止まらない。
 認識したことで、シンクロはより深くなった。

 ボクはまるで自分が犯しているかのようん、陵辱へと没頭していった――。
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